「おしゃべりは後にしてくれ。パンプが冷めちまう」A・シュワルツェネッガー【名言ニュートリション】

さらなるパンプを導く魔法の言葉

20世紀屈指のボディビルダー、アーノルド・シュワルツェネッガーの、珠玉の名言の数々「アーノルド語録」。その中でも、日本の筋肉界で密かな知名度を誇るのが、今回紹介する言葉だ。たとえば、ゴールドジム成田店のダンベルのコーナーには、現役当時のアーノルドの写真と共に、この言葉が張り出されている。

「おしゃべりは後にしてくれ。パンプが冷めちまう」(アーノルド・シュワルツェネッガー)

ただし、この言葉、出典は不明だ。日本語訳は、SNSなどで見かけることがあるが、出典を記した紹介は皆無。英語では、そもそも知られておらず、調べてみても、それらしき言葉に辿り着くことができない。こうした事情であるため、アーノルド本人の言葉なのかどうか、疑念が沸いてくる。どなたか、出典をご存知であれば、是非VITUP!編集部までご連絡を賜りたい。

それでも本コーナーで紹介するのは、この言葉がトレーニングにおける重大な要素を指摘しているからだ。

パンプとは、極マッチョ系諸氏には説明不要だが、トレーニングで鍛える部位に血液が流れ込み、その筋肉が膨れ上がる現象を指す。とりわけ、筋肥大を目的とする場合、パンプを繰り返すことは重要である。また、アーノルドは、1977年公開のドキュメンタリーフィルム『鋼鉄の男』(原題“Pumping Iron”)の中でパンプについて語り、その喜びをセックスの快感になぞらえている。ジムで、ベッドで、自分は昼と夜となく天国にいるのだと。

だが、パンプを得るには、苦しみも伴う。アーノルドは、分量を重視する「ハイボリュームトレーニング」の信奉者である。血が流れ込み、1度パンプしても、そこでトレーニングは終わらない。アーノルドは、筋肉がNo!と叫ぶ時にYes!と答え(2017年6月5日【名言ニュートリション】参照)、筋肉と壮絶な闘いを繰り広げた鋼鉄の男でもある。時にはジムで失神するほど、ハードなトレーニングを行っていたことで知られている。No!と叫ぶ筋肉が、灼けつような感覚に襲われても、次のセットに立ち向かうのだ

「おしゃべりは後にしてくれ」と訴えるのは、快感に恍惚として言葉を失っているからではない。「パンプが冷めちまう」と述べるのは、余韻を楽しんでいるのではなく、更なるパンプを引き起こしたいからである。つまり、アーノルド、もしくは成りすましのアーノルドは、「トレーニング中は集中させろ!」、「話しかけてくれるな!」と訴えているのだ。

仲間とトレーニングするのは良いだろう。互いを刺激し合うことができる。だが、無駄に話すことは、無駄にインターバルを引き延ばすことである。パンプが冷めちまう! ジムを神聖なる修行の場としている人にとって、長話は神殿破壊に等しい冒涜行為なのだ!

忘れてはならない。隣で必死に重力に逆らっている人は、きっとこう思っているはずなのだ。「おしゃべりは後にしてくれ。パンプが冷めちまう!」と。逆に、仲間の話が長いと感じた時には、勇気を持って、こう言おう。「おしゃべりは後にしてくれ。パンプが冷めちまう!」と。

文/木村卓二