「努力はカッコ悪くなんてない。努力する人はリスペクトされる」吉田沙保里【名言ニュートリション】

努力はするもの、見せるもの。霊長類最強女子の言葉

オリンピック3大会連続金メダルを含む、前人未踏の世界大会16連覇を成し遂げた女子レスリング選手、吉田沙保里。吉田が努力の尊さを教えてくれる。

努力はカッコ悪くなんてない。努力する人はリスペクトされる。
(著書「迷わない力―霊長類最強女子の考え方」より)

2016年リオジャネイロオリンピック、女子レスリング53kg級決勝。そこには信じがたい光景が広がった。絶対女王であった吉田沙保里がマットに泣き崩れ、子どもの頃から憧れていたという吉田を倒したヘレン・マルーリスもまたマットに泣き崩れて喜びを噛みしめていた。吉田はこの大舞台で世界一の座から陥落したが、それまでに継続してきた個人戦の連勝は206。世界記録の金字塔を打ち立てていた。世界大会では、オリンピック3大会連続の金メダル獲得を含む、16大会連続優勝。15年もの間、個人戦で敗北を喫せず、世界女王の座を守り抜いてきたのだった。

試合後のインタビューでは、号泣しながら「日本選手の主将として金メダルを獲らなければならないと思っていたのに、ごめんなさい。とりかえしのつかないことになってしまって……」と詫びた。アナウンサーは思わず「そんなことは誰も思ってないと思います。日本中で拍手を送ってくれていると思います。素晴らしい銀メダルでした」と吉田をリスペクトするフォローの言葉をかけた。このやり取りも含め吉田の戦いは感動的だったと賞賛の声が上がった。15年もの間たゆまぬ努力で世界一を死守し、オリンピック4連覇を賭けたとてつもないプレッシャーと吉田が戦ってきたことを誰もが理解していたからではないだろうか。

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「努力はカッコ悪くなんてない。努力する人はリスペクトされる。私は結果だけじゃなく、努力しているところも一緒に見てほしい」とは吉田の著書『迷わない力』の中のメッセージだ。連勝記録を伸ばし続け、結果にこだわり続けた吉田の言葉だけに重みがある。同著書の中でこうも語っている。

「努力をしたから必ず勝てるというもじゃないのもまた事実です。もっとはっきり言ってしまえば、がんばってもどうしても試合に勝てない選手もいます。(中略)でも、その努力は無駄にはなりません」
。吉田は若い選手に指導するときに、努力が試合の結果に表れなくても、努力したことが必ず自分に返ってくると言い、社会に出てから困難に遭遇しても乗り越えられると説いている。

「普段から努力している姿を見せていたら『必死でやってこれだけかよ』と周りから思われる。人目につくのは結果だけにしておけば、『今回は大して努力していなかったからこの程度だけど、本気を出せばこんなもんじゃない』と言えるわけです。あるいは徹夜で勉強したのにぜんぜん準備していないような顔でいい成績をとって『努力しなくても何でもできちゃう俺ってすごくない?』っていうのが超イケてると思っているとか……」と例を出し、努力を見せないことを言い訳の材料にしていると語っている。また努力している人を見ると士気が高まるので、なりふりかまわず努力をできる人はチームにとっても必要だという。

「こんなに苦しい練習をやっているから試合に勝てるんだ」とわかってもらえたら嬉しい。「吉田沙保里はいま、こんなにがんばってるんだよ、ねぇ見て」という思いで毎日練習していることを著書で語っている。

テレビ番組の中で、リオジャネイロオリンピックは「負けた人の気持ちがよくわかった大会。戦う仲間がいるから競い合えて順位がつくんだなとか、負けた人にしかわからない、そういうことを味わえたので逆によかった」と屈辱の敗北からも大きなものを得て、また一からやり直している。

結果に表れなくても努力が無駄にはならないことを、吉田は練習、試合での姿、自分の言葉で教えてくれている。トレーニングをするとき、必死になっている姿を見せるのが恥ずかしいと思うことはないのだ。努力をしない、見せないことがよっぽど恥ずかしいことなのだ。努力する姿は美しい、そしてリスペクトされることを霊長類最強女子が証明してくれた。努力している私を見て! そのくらいの気持ちでトレーニングに臨みたいものだ。

文/山口愛愛