トップトレーナー対談「パーソナルトレーナーとしての心構え」(有馬康泰⑥)【髙田一也のマッスルラウンジ 第18回】

かつて原宿ゴールドジムのオフィシャルパーソナルトレーナーとして活躍していた髙田一也さんと有馬康泰さん。2人はよい意味のライバルでもあり、ともに『先駆者』として今日に続くパーソナルトレーニング業界の礎をつくってきたと言っても過言ではない存在だ。そんな2人の「夢の対談」、最終回となる今回は、パーソナルトレーナーとしての心構えについて。

重要なのは相手を思いやる気持ち


有馬:お客様から初めて10回などの一括契約をしていただけたときはビックリしました。僕は基本1回1回指導料をいただいていましたが、まとめていただいたときは「評価していただいた感」が半端なく、心底うれしかったです。現金を直接いただくので、そのありがたみがリアルなんですよ。反面、リアルな高額な現金を手にしたときに、責任感と言いますか、トレーナーとしての使命感のようなものが凄まじく湧いてきました。

髙田使命感や責任感により、さらに視野を広げた勉強が必要だと実感しています。例えばクライアント様の中には過去に大きなケガを負われた方もいらっしゃいます。そのような方々を指導させていただく場合、トレーナーとしての知識外の書籍をいくつか購入し、そのケガについて調べ尽くしました。もともと僕は体が弱かったので、痛みの種類、病気や薬の知識はあったほうだと思います。結果的に病気やケガの経験もトレーナーとしては役立ちました。また、僕はスポーツの経験が一切ありませんでしたので、スポーツをされている方を指導させていただくにあたり、そのスポーツをゼロから学びました。

有馬:私より知識や技術の優れたトレーナーさんはたくさんいます。例えば専門学校の講師をやられていたり、セミナーを開催されていたり。でも、そういう方が「なんで有馬君はそんなにお客がつくの? 僕にはなかなかつかないんだよ」って相談されたことがあります。でもその講師の方は僕よりも全然凄い方なんですよ。トレーナーを育てるセミナーをしているくらいなんですから。

でも前回でもお話しました通り、専門的な知識・技術も大切ですが、重要なのはそれらをクライアントのレベルや人格に合わせた伝え方ができているかどうかだと思うのです。そして相手を思いやる気持ちです。髙田さん、自分でジムを開いてから、そういう思いが、より強くなりませんでしたか? お客様は「自分の想いの詰まったお店にきてくれた方」というか、「自分の理想の形に興味を持ち訪ねてきてくれた方」という捉え方になったり。

髙田:そうだよね。自分のところにきてくださった方々です。感謝しかないです。自分たちは選んでいただき、その期待に応えるだけだよね。今は体づくりそのものは以前ほどは難しいことではなくなってきている。情報もあるし、数年でいい体になれる環境も整っている。

有馬:でも、そこでパーソナルトレーナーをわざわざつける。パーソナルトレーニングは人と人とが密に接するヒトトキです。だから、「人を深く知る」ということが重要だと思うのです。その人にあった処方箋を出してくれるというか、まっすぐ向き合って習慣を聞いて、じゃあこういうプログラムでいきましょうとか、こういう食事にしてみましょうなど親身になって計画を立てる。それってジムに行ってみないとわからないことだと思うのですが、仮に「とりあえずコレとコレをやりましょう」と事務的に処理されちゃうところには自分だったら行かないと思います。

それに僕はブログを書いているのですが、始めた理由は 知識などを伝えることよりも、第一に自分という人間を知ってもらいたいから。いい施設があっても、値段が安くても、伝える人が親身になってやってくれないとお客様は続かない。だから私という人間がどんな人なのかを知ってもらうために体づくりのことのみならず、家族のことや趣味などもおっぴろげに自分らしく書いています。お客様に運動の魅力や重要性を伝えるのは私という人間なのですから。究極は「ヒューマン」だと思うのです。

髙田:人の人生に関わる仕事だし、その人の将来の健康にも大きく影響する。この部分を忘れないでほしい。あとは有馬くんも話していましたが、クライアント様に対して尊敬がないとダメだと思うんです。まだパーソナルトレーニングって値段も高いし、少し特別感があると思うんですけど、パーソナルトレーナー自身がクライアント様と同じ目線にならないように気をつけたいものですね。

有馬:じつは私も正直な話、お客様がつき、ある程度収入が安定し勉強をしなくなったときがあります。でもそういうときって不思議とお客様が減っていくのです。これは本当の話なのですが、おそらく、トレーナーとして人としての魅力がなくなってきていたのでしょうね。人って安心しすぎたり満足しすぎたりすると、維持するどころか落ちていく。少しずつ落ちていって、あるときマズいって気づく。そしてまた努力する。でもそれも貴重な経験です。気づけたことは今後に活かせる財産ですが、できることならなるべく早く気づきたいですよね。

アスリートで言えば成績を出さなければいけないことと同じように、健康であったり、体力的なことであったり、その人の体をより快適にするという部分では私たちが結果を出しやすい状態にしなければいけないと思うのです。

究極を言えば、お金よりも健康のほうが絶対的に大事だったりするわけで。いくらお金があっても親愛なる家族や仲のいい仲間がいたり、素敵な環境で暮らしていたとしても、自分の体が不健康だったのなら、何一つ幸せを最大限に感じられないと思うのです。だから快適な生活を送るためには絶対的に自分の体が快適じゃないといけない。快適な体なくして、快適な生活はありえない。だから私たちトレーナーが意味ある快適なヒトトキをつくり出し、そこでお客様に快適な体を築いていっていただきたいと強く思うのです。

髙田:有馬くんと話すと似た境遇で活動してきた者同士、大切なことを再認識できて嬉しいです。僕たちはウエイトトレーニングを辞めないだろうし、パーソナルトレーナーや健康に携わる仕事を一生続けていきたいといつも話しています。そんな気持ちで仕事に取り組んでいる者同士なんだなと、今回の対談で改めて感じることができました。

『先駆者』として今日に続くパーソナルトレーニング業界の礎を創ってきたといえる2人のカリスマ、高田一也氏と有馬康泰氏による「夢の対談」は、予定をはるかにオーバーしての熱い語らいの時間であった。トレーナーをしている人には今後のトレーナー活動に、そしてトレーナー選びを迷っている人にはトレーナー探しに、ぜひ参考にしていただきたい。

髙田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP
有馬康泰(ありま・みちひろ)
日本体育大学で運動処方を主に学び 教員免許を取得。卒業後、大手フィットネスクラブへ入社し パーソナルトレーニングの存在を知る。1999年に国際ライセンスを取得し、フリーランスパーソナルトレーナーに。GOLD’S GYMを中心に活動し 2009年よりアンダーウェア&フィットネスモデルとしても活動。2014年にはReebokONEアンバサダーに就任。2012年ベストボディジャパン ミドルクラス優勝を機に、フィジークコンテスト優勝・入賞多数。2014年にパーソナルトレーニングスタジオ「Body Work Space EVOLVE.」を設立し、『運』を『動かす』"運動"の魅力を発信し続けている。
有馬康泰公式ブログ
EVOLVE.公式HP

インタビュアー
立華徳之真(たちばな・のりのしん)
パフォーマー兼パフォーマー専門の美容家・治療家・スポーツ指導者。陸上競技・体操・バスケットボール・フィットネス・トレーニング・ジュニアスポーツ・体育施設運営管理・サプリメント・スポーツボランティアなどの専門資格を所持。また柔道整復師・美容師・登録販売者・診療情報管理士として美容・健康・医学領域および出版・映像・イベント・教育・ITなどの実務をこなす。ほか殺陣やアクション、神経系コーディネーションや能力開発などの分野で活動しているハイブリッド。
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