トップトレーナー対談「人の人生にも関わる責任感」(有馬康泰⑤)【髙田一也のマッスルラウンジ 第17回】

かつて原宿ゴールドジムのオフィシャルパーソナルトレーナーとして活躍していた髙田一也さんと有馬康泰さん。2人はよい意味のライバルでもあり、ともに『先駆者』として今日に続くパーソナルトレーニング業界の礎をつくってきたと言っても過言ではない存在だ。今回のシリーズでは、そんな2人のカリスマによるに「夢の対談」をお伝えする。第5回目は、クライアントとの関わりについて。

悩み、考え、経験で学んだもの

有馬:2000年に僕が指導を始めたころのパーソナルトレーニングの指導料は、60分で5000円でした。そのときは「5000円も取って大丈夫かな!?」と不安に思っていました。その60分の中で5000円のサービスを提供できているのか……と。だからお客様から質問されればすぐ答えられるように何でも対応できるようにしたかった。結構、素朴な疑問が難しかったりするので、日々勉強していました。勉強しないと不安だったんですね。

でも今は、インターネットで調べればすぐに答えがわかる。お客様に聞かれて「あとで調べておきます」と答えるのは私の理想ではなく、それはお客様がインターネットで調べればすぐにわかることですし。トレーナーであれば、すぐに答えられる家庭教師のような存在でいたいと。さらに「僕も試したけどこうでした」って実体験で伝えられるとさらに伝わると思います。自分が知らないこと、未経験のことを伝えるのは非常に困難です。まず自分で実践し、答えが見えていることが大切です。

髙田:パーソナルトレーナーが増えたり、簡単に得られる情報量が増えたりしたことにより、価値が薄まったかもしれないですね。以前ならトレーニングを習うことにそれだけ高額な料金を支払うことは一般的ではありませんでしたから、受け取る我々トレーナーも今より高い基準で責任感を感じていました。そんな意味で食生活においても普段から手本になれるよう、常に100%管理しています。もちろん自分のためでもありますが。

有馬:お客様に「添加物を摂らないほうが体にいいですよ」って伝えておきながら「あなたは摂ってないのですか?」と聞かれて「僕は普通に摂っちゃってるのですけど……」なんて答えるようでは、説得力がない。いいと勧めていることを自分ができないということは人には絶対伝わりません。トレーニングだってそう。デモンストレーションができていなければ説得力もないし伝わらない。まずはトレーナー自身が食生活、生活習慣、そしてトレーニングがしっかりできているということを示し、見本にならなければいけないと強く思います。髙田さんもずっとこの肉体を維持・成長させていらっしゃる。添加物もかなり意識されていますし。

髙田:考えてみればクライアント様の人生に関わることで、もし自分が失敗をしたり、手本を見せられなかったりしたら、それは指導者である自分の責任です。せっかくウエイトトレーニングに興味を持って、体にいい栄養の知識を得る目的で指導を受けていただいたのに、それを台無しにしてしまったら……という気持ちになります。ですから僕たちの仕事の責任は大きいと思っています。

有馬:毎週1回2回とパーソナルトレーニングにきていただいているということは、毎週その時間、その人の人生に関わっていることになります。それはお客様にとって、進化する貴重なヒトトキであって、私たちトレーナーにとってはとても責任の大きい時間なのだと思います。

髙田:この歳まで生きていれば、おいしいものを食べる楽しみや、遊びに使う時間を優先したい気持ちも経験してきました。ですから、クライアント様の視点で優先事項を考えることもできます。でも自分はトレーニングすることで体に自信を持てるし、健康になれるし、年齢のこともまったく感じない。トレーニングをすることが、人生においてすばらしい、プラスになるということを体現しています。僕のそんな姿を見ていただくと意識が変わっていくクライアント様もいらっしゃいます。最初から押し付けるわけではないですが、僕たちの努力に、どれだけ価値があるのかを知っていただきたいと考えています。そうすることで、トレーナーだから努力して当たり前、という意識がクライアント様の中でも徐々に変化して、自然にライフスタイルとして受け入れていただきやすくなります。

またクライアント様の中にはケガのことを人生で重く考えているような人もいました。僕も以前は体が弱くて、病気やケガを多く経験しました。でも「こんな僕でもトレーニングでケガの後遺症を克服できました」と説明すると、信じてくれるんですよね。ケガや病気をしたことはつらい経験でしたが、自分にとってはいい勉強でした。

有馬:同じことを伝えても、できるお客様とできないお客様がいます。私もトレーナーになりたての頃、どうしてこの人はできないのだろうって。指導しても、その通りに動いていただけないというもどかしさがあって、いろいろと考えていました。でも結局、辿り着くところは一つで、自分の伝える能力がまだまだ未熟なのだと気付くのです。伝えることはとても大事で、言葉遣いやニュアンス一つでお客様の捉え方も変わるのです。それを個々に見合った伝えるべき内容をどのように理解していただけるように伝えるか。それはテキストで学んだわけではなく、悩み考え経験で学びました。

トレーナーの中には「指導しても、あのお客さんは何度言ってもできないのですよね」と、お客様のせいにする方もいました。でも、それはその種目がその人のレベルに合っていなかったり適正な重さでなかったりしている場合も正直あります。だからプログラム自体を見直したり、一歩手前の難易度の低いエクササイズを先にしたりするなど、何度も見直すのです。そして、違うアプリケーションを試した結果、トレーナーの指示した通りにお客様が動けるようになったら、それは伝える能力がアップしたという目安になります。ですから、お客様をどれだけ知り、どれだけ思いやることができるかは指導者にとって必要不可欠なことなのです。そしてこれらは教材ではなくほとんど経験から。今でも新しい発見があり学び続けています。
学び続ける以上、トレーナーとして人としてお客様とともに成長できるのです。

髙田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP
有馬康泰(ありま・みちひろ)
日本体育大学で運動処方を主に学び 教員免許を取得。卒業後、大手フィットネスクラブへ入社し パーソナルトレーニングの存在を知る。1999年に国際ライセンスを取得し、フリーランスパーソナルトレーナーに。GOLD’S GYMを中心に活動し 2009年よりアンダーウェア&フィットネスモデルとしても活動。2014年にはReebokONEアンバサダーに就任。2012年ベストボディジャパン ミドルクラス優勝を機に、フィジークコンテスト優勝・入賞多数。2014年にパーソナルトレーニングスタジオ「Body Work Space EVOLVE.」を設立し、『運』を『動かす』"運動"の魅力を発信し続けている。
有馬康泰公式ブログ
EVOLVE.公式HP

インタビュアー
立華徳之真(たちばな・のりのしん)
パフォーマー兼パフォーマー専門の美容家・治療家・スポーツ指導者。陸上競技・体操・バスケットボール・フィットネス・トレーニング・ジュニアスポーツ・体育施設運営管理・サプリメント・スポーツボランティアなどの専門資格を所持。また柔道整復師・美容師・登録販売者・診療情報管理士として美容・健康・医学領域および出版・映像・イベント・教育・ITなどの実務をこなす。ほか殺陣やアクション、神経系コーディネーションや能力開発などの分野で活動しているハイブリッド。
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