フルマラソンを完走するためには!?【金哲彦の教える“正しい走り方”⑨】

フィットネスに親しんでいる人や、過去に部活などで運動をしていたことのある人のほとんどが“自分は走れる”と考えているのではないでしょうか? でも、プロのコーチから見ると、多くの市民ランナーは“正しく走れていない”ようです。そこで、市民ランナーからオリンピックを走るアスリートまで、幅広いランナーを指導するプロランニングコーチの金哲彦さんに“正しい走り方”についてレクチャーしてもらいます。

これまでは主にハーフマラソンまでのレースの走り方や練習のしかたなどを中心に述べてきましたが、多くの人が目指すのはやはりフルマラソンの完走でしょう。ただ、フルマラソンを完走しようというのであれば、ハーフまでとは異なりある程度計画的に練習をする必要があります

ランニングをする習慣のない人がフルマラソン完走を目指すのであれば、半年程度の準備期間を想定したほうがいいでしょう。始めの3ヶ月は、それこそ歩くことから始めて「ランニングを習慣にすること」を目指します。なかには、過去にスポーツをしていたのでもっと短縮できると考える人もいるかもしれませんが、そういう人ほど気を付けたほうがいい。ランニングを始めたはいいが、ペースを上げすぎてヒザなどを痛めて断念してしまう人の多くは過去にスポーツを経験していた人です。若い頃に比べたら、どうしても体力は落ちていますので、無理をせず歩くことから始めるのが大切なのです。

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歩くことから始めたら、意識してほしいのが正しいフォームです。この連載の第5回で解説した体幹で走るフォームを身に付けることが、フルマラソンの完走には必要なのです。今まで何度もフルマラソンに挑戦しても完走できなかった人が、この走り方を身に付けたら完走できたという話はたくさんあります。

特にポイントになるのは胸を張って背筋を伸ばした姿勢で、しっかり肩甲骨から腕を振って走ること。そうすると、肩甲骨の動きが骨盤を動かし、体幹の力を使って体を前に進めることができます。このフォームを歩く時から心がけておくことが大切。普段の生活から背筋を伸ばして胸を張った姿勢を維持することを心がけ、その姿勢で歩くようにしましょう。レース後半に疲れてくると、この姿勢を保つことができなくなってしまうことが多いですが、正しい姿勢を保てていれば、自然に足は前に出ていきます。正しい姿勢を保ち続ける筋肉を鍛えることが大切です。

始めの3ヶ月で走ることの基礎と習慣を身に付けたら、残りの2ヶ月で実戦的なペースで走る練習をしましょう。フルマラソンの距離を練習で走ることはなかなか難しいですから、完走できるペースを想定して、そのペースを維持して走ることを練習しましょう。普段は10kmぐらいの距離を走り、週末や休日は15〜20kmに距離を伸ばして長距離に慣れる。同じペースを維持して走れるようになったら、少しずつペースを速めていきます。

最後の1ヶ月は本番に向けた調整に当てます。逆に言えば、そこまでにフルマラソンを完走できるだけの体力は付けておくということです。最後の1ヶ月で走り込んで体力を付けようとしても間に合いませんし、疲れがとれないまま42.195kmを走ることはケガにもつながります。フルマラソンに挑むのであれば半年、ランニングが習慣になっている人でも最低3ヶ月はかけて準備をするようにしましょう。フルマラソンは、それだけの準備が必要なチャレンジだということです。


金哲彦(きん・てつひこ)
プロランニングコーチ、駅伝・マラソン、陸上競技解説者、ランナー。福岡県北九州市門司区出身。早稲田大学教育学部卒業。在学中競走部に属し、中村清監督の下、箱根駅伝で活躍。卒業後はリクルートに入社し、陸上競技部を創設。1987年には別府大分毎日マラソンで3位に入る。1995年より同部監督に就任。同部の消滅後は、陸上のクラブチーム・ニッポンランナーズを創設する。現在は、テレビのマラソン・駅伝中継の解説も務める。最新の著作は『体幹ウォーキング』
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