マッチョ29 inマイナビBLITZ赤坂/ライブレポート<前編>

私の仲間内では、たまたまメガネをかけた人が多く集まったときなどに「今日は4メガネ・8レンズだね」と確認しあったりする。その体でいえば、この日のステージにズラリと並んだ男たちは「14マッチョ・28乳首」。壮大にして爽快だった。また、爽快にして愉快だった。その爽快にして愉快な気分は2日経った今も、私のまったく発達していない筋肉の隅々にウキウキ、ヒクヒクと宿っている。

「この日のステージ」とは11月21日、東京・赤坂BLITZで開催された『マッチョ29ワンマンライブ in 赤坂BLITZ ~お前ら全員ムッキムキにしてやんよ!~』のことだ(赤坂BLITZ=現在は「マイナビBLITZ赤坂」に改称)。

このライブの取材オファーをマッチョ編集長から受けたとき、「なぜ私なのか」と不思議に思った。トレーニング系の取材はしているけれど、自分では鍛えていないし、筋肉フェチではないし、「マッチョ29」の存在も「あの、マッチョカフェの……?」という程度。

でも、マッチョ編集長いわく「素直な感想をください」とのことだったので、「マッチョに深いゆかりがあるわけでもなく、プロテ員(マッチョ29ファンクラブ会員)でもない人間が、いきなりマッチョ集団のステージを見て何を思うかを、マッチョ編集長はきっと知りたいのだろう」と勝手に解釈して、ステージを観賞させていただくことにした。

初観賞に先立ち、私にはさまざまな不安があった。だが、ライブが進むうちにその不安は一つひとつ、いい意味で裏切られていった。ここからは、不安と裏切られっぷりを字数の許す限り並べていきたい。

まずもって最初の不安は、「会場の雰囲気に溶け込めるかどうか」だった。
「お前ら全員ムッキムキにしてやんよ!」というライブのサブタイトルからすると、観客も巻き込んでの一大筋トレセミナー風ステージになるかもしれない。となると、集まるファンもそれ相当のバルクを誇る人々なのかもしれない――。


あるいは、マッチョ29が新時代のアイドル集団と解釈するなら、客席は女子で埋め尽くされ、熱狂的な黄色い声援と独特の振り付けやコールが続き、ノリきれない私は独り取り残されてしまうかもしれない――。

だが、実際に足を踏み入れてみると、2階席の立ち見までぎっしり超満員の会場は、ほどよくアットホームだった。制服の女子高生もいれば、プロレスのTシャツを着たお兄さんもいれば、マッチョ29パーカーをペアルックでお洒落に着こなすカップルもいる。たしかに女性は多めだけれど(7、8割?)世代はまちまちで、初めて行ったどんな人でも居心地の悪さを感じることはまずないはずだ。

ステージ中央に設置されたスクリーンで10分強の映像が流れたあと、ついにライブがスタート! タンクトップ姿の14マッチョが登場すると、前3列を占める“粉かぶり席”のプロテ員女子たちは早くも立ち上がり、サイリウムを振り、つられて1階は波立つようにオールスタンディング! え、ついていけない……と思おうとしたのだが、2階席にいた私も予想外、いや予想以上にノレる! いきなりウキウキする!


その理由は3つある。ひとつは、いくらマッチョフェチではないといっても、やはり筋骨隆々の男性陣が歌い、踊るという、かつて見たことのない光景に遭遇すると、どうしたって脳の回路が活性化されるし、心拍数も上がらざるをえない。

それにもちろん、マッチョ29のデビュー曲『ビバ!マッチョ』そのもののキャッチーさ、ノリのよさもある。

でも、一番大きな理由は、じつはメンバー登場前に流れた長めの映像にある。
 
映像では、マッチョ29が「筋肉で日本を笑顔にする」をモットーに活動する、世界でもっとも“キレて”いる筋肉エンタテインメントグループであること、2015年6月に『ビバ!マッチョ』を発売し、小劇場で「劇団マッチョ」という名のライブを重ねてきたことなどグループの成り立ちが、まず分かりやすく紹介された。

そして、劇団マッチョ1周年ライブの場で、「来年なんと1000人規模の赤坂BLITZでライブ決定!」とサプライズ発表。初めて知ったメンバーたちは驚き、慌てふためく。そして、ビビりながらも“その日”に向かって体を鍛えつつ特訓を積み重ねていく。その刻々と近づく本番までの日々が、自撮りのリレー日記風に映像でつづられていくのだ。

マッチョ29に関する基礎知識も、メンバーの赤坂BLITZに懸ける思いも映像でしっかり見届けた上で本人たちが登場するのだから、マッチョ29をほとんど知らなかった私のような者でさえ、「この赤坂BLITZで思う存分、羽ばたいてくれ!」と応援したくなってしまったわけなのだ。

そういうわけで、しょっぱなから「溶け込めないのではないか」という不安は払しょくできたのだが、1曲目を楽しみながら、急に第2の不安が押し寄せてきた。それは、
「ライブは2時間と聞いているが、果たして裸一貫でどれほどのバラエティに富んだステージが展開できるのだろうか」
というものだった。(つづく)

文/藤村幸代
撮影/神田勲、株式会社ハイ