マッチョ29 inマイナビBLITZ赤坂/ライブレポート<後編>

11月21日、東京・赤坂BLITZで開催された『マッチョ29ワンマンライブ in 赤坂BLITZ ~お前ら全員ムッキムキにしてやんよ!~』は、持ち歌による歌とダンスのパフォーマンス、その歌をモチーフにしたコント、合い間のMCという3本立てで構成されている。

アイドル系グループのライブといえば、やはり華やかな衣装やその早着替えの妙も大きな見せ場のひとつだろう。だが、筋肉で勝負しているマッチョ29は1曲目からすでにタンクトップを脱ぎ捨て、ショートスパッツ一丁になってしまった。「ライブのバリエーション的に、このまま2時間もつのだろうか」ふと、不安というか心配が頭をもたげてきたところへ、最初のコントが始まる。登場した3マッチョはオシャレなサーフパンツを履きこなしていた。「そうか、サーフパンツがあったか!」さらに、和太鼓と共にねじり鉢巻き、白ふんどしで登場というシーンもあった。「なるほど、ふんどしもあったか!」“上半身裸の文化”というのは、じつに多様なのだということを、マッチョ29のライブで改めて学ばせてもらった。

ライブの後半ではマッチョたちが裸にジャケット、ジーンズ姿でバラード調の曲を歌うシーンもあった。すると、後ろの席の女性がため息まじりにつぶやいた。「わー、EXILEみたい……」普通なら「EXILEみたいにカッコイイ!」という意味だろう。でも、女性のため息や言い方からは「EXILEみたいに服を着ている……」とう、ちょっと残念そうなニュアンスが感じ取れた。あるときは衣服を極限までそぎ落とし、不断の努力の賜物である筋肉を見せつける、またあるときはむしろ衣服をまとうことで、「早く筋肉が見たい!」とジラす。この“見せる・見せない”の絶妙なバランスも、2時間のライブを飽きさせない工夫のひとつだろう。

初の大バコ進出とあって、“筋肉アイドル”で女子プロレスラーの才木玲佳選手や、ふなっしーがゲスト参戦、さらにライブの翌日に初の全国流通盤としてリリースされるカバーシングル『男の勲章』の初披露、歌の途中には原曲を歌う嶋大輔さんの“ご本人登場”と盛りだくさん、かつ贅沢なワンマンライブに。

だが、私がこの日のライブで一番胸を打たれたのは、じつはラスト30分近くを費やした最後のMCだった。必死に予定どおりこなそうとするあまり、10分巻きという異例の速さで進んでしまったステージも、ついに終わりを迎えようとしている。ようやく緊張の糸がほどけたのか、14マッチョたちは一人ずつ、今この瞬間の感慨と本音を打ち明け始めた。
「僕はちっちゃい頃から人を笑顔にしたい、どうやったらできるだろうといろんな進路を進んできて、大学にも行って。結局、いま筋トレしかしていないんですけど、筋トレを真剣にやってきたからこそこうやって大勢の人を元気にできて、本当に幸せだなと思います」

「最初のイベントはお客さんが14人。こんなに来てくれるなんて……。みなさんに知ってもらえるグループになったんだなと……」

「もともと自分は上がり症で、自分を変えたいと思ってオーディションを受けて……いつの間にかここにいます。今まで筋トレしかしていなかったけど、少しずつ自分が変わってきたのかなって……」

グループ最年少の河西伴法は、マッチョ29の活動を続けるべきか、やめるべきかで悩み、本番1週間前までの1ヵ月間、失踪状態だったのだという。川西は泣きながら語った。
「僕は小学生の頃から人を救うことが夢だったんですよ。でも、僕のなかでもいろいろあって……。でも、でも、人を救うより前に、僕がみんなに救われたんです」

リーダーのコアラ小嵐は「お帰り!」と川西の肩を叩き、マイクを握った。
「俺ら、最初はその辺にいるマッチョを適当にかき集めてきた、訳わからん団体やったんですよ。気もつかえないし優しさもないような無茶苦茶な集まりやったんです。そんな集まりって絶対に途中ですぐ駄目になるはずなんですけど、なぜ我々がここまで続けられたかというと『筋トレ』という共通の趣味があったから、ただそれだけなんですよ。筋トレしてきただけでこんなに仲良くなって、こんなところに立って、こんだけ長いことやれて……。これからも我々はまだまだやっていきます。至らないところもいっぱいあります。でも、どうか、どうか筋肉に免じて許してください!」

正直、「筋肉」というキーワードひとつで、これだけ話がふくらむとも、また人生が垣間見られるとも思っていなかった。

マッチョ29の大きな魅力は、もちろん筋肉美。だが、ファンが何度も足を運びたくなるのは、筋肉という「絶対に嘘をつかない」存在の前で、ついサボりたくなったり、誤魔化したくなったりする自分の弱さと葛藤しながら、励まし合い、立ち向かっていくさまを見守りたい、見届けたいという思いからではないか。

そんな小難しいことを考えなくても、上腕二頭筋や大腿四頭筋が発達しすぎて、ちょっと動きづらそうな感じで踊る姿は筋肉の着ぐるみのようで愛らしいし、「すみません、ゴールドジムはどこですか」とか「プ、プロテインが切れた!」など筋トレネタを豊富に盛り込んだコントやMCも楽しい。

筋肉にこれでもかと人間臭さを詰め込み、新たな筋肉エンターテインメントを生み出したマッチョ29。筋トレ愛好者もそうでない人も一度足を運び、ワクワク、ヒクヒクを体感してみてほしい。

文/藤村幸代
撮影/神田勲、株式会社ハイ