「筋肉がNoと叫んだら、私はYes!と答える」アーノルド・シュワルツェネッガー【名言ニュートリション】

単なる根性論ではなく、体との対話に基づく技術論

政治家、俳優である前に、20世紀を代表するボディビルダーの一人であるアーノルド・シュワルツェネッガーは、珠玉の名言の数々、「アーノルド語録」を遺している。ここに紹介するのは、その中でも特によく知られた言葉である。

When my muscles say “No”, I say “Yes!”
(“Muscle: Builder & Power”誌、1977年1月号)

一部の筋肉家たちには一般常識と化している言葉だが、改めてその意味を掘り下げてみよう。なお、アーノルド語録の中には、出典不明のものが多々ある。今回紹介するこの言葉も、出典なき引用が繰り返されてきた一つである。

また、引用されるのは主に日本でのことであり、浸透度はアメリカよりも日本の方が高く、海外においては、半ば忘れられた名言と化している。嗚呼、アーノルドの言葉を噛み締め、ジムでYes!と叫ぶ日本の筋肉家たちの、なんと幸せなことか!

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この言葉でアーノルドが説くのは、単なる非科学的根性論ではない。アーノルドがこの言葉を発したインタビュー全体に目を通すことで、そのことが見えてくる。

インタビューで、アーノルドはジムに行く際に、体の状態がよくないとき、メンタルの準備ができていないとき、どうすればよりよいワークアウトを行うことができるのか、その方法について述べている。精神と肉体との葛藤と駆け引きにおける、心による体の操作法である。疲れていて、体が動こうとしないときに、どうすればよいのか?アーノルドは、「そんなとき、重要なのはメンタルパワーであり、それがその状況での結果を決める」と説く。強い志と高い目標を持つことで、体は屈服して働くようになる、と。

これだけでは精神論だが、アーノルドが語るのは、体との対話を通じた、トレーニングの技術論でもある。アーノルドは知っていた。筋肉が訴える痛みの表出の仕方が、体のパーツ毎に異なること、「痛みを伴わない最初の何回かの動作は、準備の役にしか立たない」こと、「疲労(fatigue)」と「疲労困憊(exhaustion)」は異なることを。アーノルドは見抜いていた。「疲労の段階では、まだいくらか残っている蓄えを、筋肉が隠している」ことを。だから、アーノルドは言ったのだ。「筋肉がNoと叫んだら、私はYes!と答える」と。

この言葉、“超訳”してしまえば、要するに「まだできる! やり切れ!」ということである。追い込んだつもりでも、実際には筋肉に妥協しているというのは、よくあることだ。もちろん、関節や神経が叫ぶ「No」の声は、偽りなき悲鳴であり、素直に聞くべきであろう。だが、筋肉には断固たる態度を示そう。「お前がNoと言っても、私はYes!と答える」と。

文/木村卓二