【新企画・青の筋肉】名古屋産業大ウエイトリフティング部

一部昇格は射程内、そして目指す東京五輪!

ウエイトリフティングやボディビルディングに汗を流す大学生を紹介する『青の筋肉』が始動。記念すべき第1回は愛知県尾張市にある名古屋産業大学ウエイトリフティング部を訪ねた。部を率いるのは自らも名古屋産業大学の卒業生である鈴木大智監督。そしてモントリオール五輪銅メダリストで鈴木監督の恩師でもある平井一正コーチだ。

全面にプラットフォームが敷かれ、冷暖房完備という全国屈指の環境に、各地からたくさんの選手が揃う。毎年夏にはさまざまな学校とともに合同合宿を開催する。取材した7月末は、ちょうど7月に西日本大会が終わって課題や改善点が明確になったタイミングでもあり、気合い溢れる全体練習だった。そんな中、ひときわ大きな声を出して盛り上げていたのが大城皓介主将だ。
「個人スポーツではあると思うんですけど、全員で声を出し合って元気に練習することを意識しています。今、なにか足りない部分があるから自分たちは全日本インカレ二部にいると思うんです。一部に昇格するためにも、試合で力を出し切れるように練習のときから盛り上げていこうと思っています」

キャプテン・大城皓介

選手層が厚く、1年生から大学院生、そして卒業生も一緒に汗を流すのが名古屋産業大学の魅力の一つだ。「環境がピカイチですから、卒業生もかなり足を運んでくれていて。お互いにいい刺激になっていると思います」と平井コーチは誇らしげだ。

ここで汗を流すのは大学生だけではない。山門正宣は名古屋産業大学大学院生だ。院に進んだのには、訳がある。やはり3年後の東京オリンピックを見据えてのことだ。「この環境で練習することが、金メダルに最短だと思ったので」と大学院進学を選んだ理由を話す。部員たちにとって、メダルに近いOBが身近にいるだけでも、練習に身が入るというものだ。その山門が、「実は……」とウエイトリフティングを始めたきっかけを語り始めた。

大学院に進み競技を続けている山門正宣。東京五輪での金メダルを目指す

「私は四日市工業高校野球部出身で、平井先生には高校のときからお世話になっています。『ウエイトリフティングしないか』というお誘いはずっと受けていたのですが、『いやいや~、野球あるんで』と断っていたんです。でも、高校2年生の冬、半分冗談で『甲子園に出れなかったらウエイトリフティングをやる』と約束したら、夏の大会でまさかの1回戦逆転負けを喫してしまいました(笑)。大学ではキャプテンを務め、インカレや国体に出場しました。今の夢は2020年東京五輪出場、そして金メダル獲得です。恩師である平井先生にメダルを届けたいなと思っています」

学校の校舎には大きな横断幕が掲げられていた
学校の校舎には大きな横断幕が掲げられていた

2017年、日韓中フレンドシップ大会で2位という好成績を収めた山本真鼓選手。大学からウエイトリフティングを始め、トップレベルまで駆け上がっている注目の選手だ。
「高校まで陸上短距離選手でしたが、兄の恩師でもある平井先生に『ウエイトしないか』とお誘いいただいて入学を決めました。高校のときもトレーニングはしていて、『楽しい』というイメージがあったのでやってみようと思って。試合や大会で周りに流されたり、雰囲気にのまれないように、どんなときでもちゃんと『自分』というものを持つことを意識しています。自分は自分、他人は他人、というか。芯を持った強い選手になりたいです」

国際大会で入賞し、注目を集める山本真鼓

1年生ながら第63回全日本日本学生ウエイトリフティング個人選手権大会77㎏級トータル5位入賞という期待の新星・柳川友章選手がウエイトリフティングを始めたのは小学5年生だそうだ。
「兄貴が2人とも、平井先生の教え子なんです。私が兄の試合を見に行ったときに、先生から声をかけて頂いたのが始めるきっかけになりました。普段の練習は当然きついですが、自分が努力した分だけはっきりと重量という数字になってあらわれてくる面白い競技だと思います」

2人の兄が平井コーチに師事していた柳川友章

ここまで、選手の口からは「平井先生に」という言葉が多く聞かれた。平井コーチのスカウトの基準を訪ねてみた。
「なんでしょうねえ(笑)。だいたい、一瞬その子を見たらわかるんですよ。『あ、この子は世界に行けるな』と。普通の子ではない、何か違うものを感じるんです。試合会場や練習場ならその場で声をかけますし、電車に乗っていたり、街中を歩いたりしているときにもいいなと感じることはあります。これはわからないですね、言葉にはできないです(笑)」とご本人もつかみ切れていない様子。

選手を指導する平井コーチ
選手とともに汗を流す鈴木大智監督

もう一つこの競技を始めたきっかけを紹介しよう。女子キャプテンを務める古川奈央巳選手とウエイトリフティングの出会いだ。
「もともと、ウエイトリフティングをするつもりはなかったんです。中学のときもおとなしかったですし、イラストを描くのが好きだったので高校では文化部に入ろうと思ってて。本当に偶然でした。たまたま帰宅する道の途中にウエイトリフティング部の練習場があって、『ねえ、そこの1年生、ちょっと見ていかない?』と声をかけてもらって。体験したら『うまいじゃーん!!』と褒めてもらい。なんやかんやで続けていたらここまで来ちゃいました(笑)」

ウエイトリフティングという競技を知ってはいても、実際にしている人は少ないだろう。それでも、この競技を経験すると、離れられない魅力がある。そして、いろんな縁が重なり、この名古屋産業大のウエイトリフティング部に集まり、選手たちは日々汗を流している。そんな彼ら、彼女らが目指すのは「一部昇格、そして残留」。鈴木大智監督はチームをどう見ているのだろうか。

華々しい成績を収め、多くの賞状やメダルを獲得している

「ウエイトリフティングは、『これを挙げたら優勝です』と目の前にバーベルがあるんです。運とか偶然とか、仲間のせいとか、そういったことがない。数字で勝敗が決まるシビアな競技なので、毎日つらいことばっかりですよ(笑)。でも、私も含めて選手一同、目標達成に向けてできる限りの全力を尽くすことが大切だと思います。『一部昇格、そして残留』というのは全員が思っていることですし、必ず達成して全員で喜びを分かち合いたいですね」

1㎏でも重く、1ポイントでも多く。名古屋産業大学の挑戦は続く。
 
 
取材・文/松川亜樹子