「この業界を成長させるには新しい刺激が必要」(野村昇平⑥)【髙田一也のマッスルラウンジ 第29回】




パーソナルトレーナーとして大活躍中の野村昇平さんをお招きしたカリスマ対談も今回で最終回。髙田さんと野村さんが目指すトレーナー像は、もうおわかりいただけたかと思います。今回は「責任」と「自分の律し方」ということについてお二人の考えを語ってもらいました。

――フリーとして活動していると責任や自分の律し方などは変わってきますか?

野村:自分は心が折れやすいんですけど、最近思う方法は、悪いことがあっても全部自分のせいだと思うようにしています。もし他の誰かが何か失敗をやってしまっても、そうなったのも自分のせいにしたら気が楽になった。言い訳を考えるよりも自分が悪いから仕方がないなと。そうしたら逆に気持ちの切り替えが楽になりました。

髙田:何か失敗があって、もし誰かのせいにしても、結局、損をするのは自分なんです。例えば足に大ケガを負った状態でコンテストに出て、ケガのせいで結果が悪かったとする。でも、そこで審査員の先生に「ケガをしていたから」と説明しても、それは通用しないです。

これは仕事にも当てはまります。もし交通事故に遭い被害者だったとしても、そのときの仕事を失うのは自分です。例えばオーディションや面接を受けに行くときに電車が何らかの理由で止まったとして、受けられなかったとしてもそうです。そこにあるのは受けられなかったという事実だけ。ですからそうならないよう、あらゆるリスクを予想してスケジュールを立てることも大切だと思っています。

野村:行動に責任を持たなければいけないということは、フリーで活動してよく身に染みています。全部自分の責任なので、指導するときにもより真剣に考えるようになりました。安全面についてもそうで、「もしお客様にケガをさせてしまったら」ということも考えるようにもなりました。

髙田:お客様が多いジムでは、混んでいるときは指導で使いたいマシンが使えないこともあります。次に予定していたトレーニングメニューも、他のお客様がそのマシンを使い始めると、違うメニューを瞬時に考え出す必要があります。指導しながら、頭の中では常に次のメニュー及びそれとは別に代替えのトレーニングを考えていました。その経験は指導者としてとてもためになりました。

トレーナーは仕事でジムにきていますが、ジムの会員さんはプライベートの大切な時間を使ってトレーニングされています。パーソナルトレーナーとして、自分のクライアント様の指導だけではなく、他の会員様のトレーニングの邪魔をしないよう、ジムでの立ち位置など調和を保ちながら指導をすることを心がけていました。もちろん自分のクライアント様も含め、すべてのお客様に少しでも嫌な思いをさせてはいけないという気持ちが強かったです。

野村:気を使いながらも、その素振りを見せないように。でもゴールドジムで指導をしたことで、多分、どこにいっても指導できるんじゃないかという自信がつきました。おもてなしというか、お客様が求めているものを先回りして提供をするコンシェルジュ的な気持ちですね。

髙田:人間的な部分だけではなく、機材に対する洞察力も養われました。例えば機材の汚れであったり、ちょっとした不具合などは瞬時に把握できるようになりました。それによって機材トラブルによる危険を回避する事もできます。

ただ、仕事上の注意力というのは、注意してしすぎるということはありません。フリーのトレーナーだった当時から考えれば、独立して7年ジムを経営しているとさらに注意力を高めなければならないことの連続でした。そこを評価していただくこともありますが、とても嬉しいと同時に、現状よりさらに進歩しなければならないとも感じています。

野村:髙田さんとは、大体いつもこのような話をしていますよね。僕も現状にはまったく満足していなくて、上がっていくのはどうすればいいかを常に考えていました。でも、何をすればいいかわからない時期がありました。TREGISがオープンしたときと、今の自分を比べたら明らかに違いますよね。それに少し前に髙田さんと僕とでセミナーやりましたね。

髙田:トレーニングテクニックや理論のセミナーではなく、まったく違うアプローチでトレーニングの良さを伝えるセミナーを一緒に開いたんです。僕たちの情報発信は、自然とフィットネス業界寄りになりがちですから、一般の方々に対してトレーニングやパーソナル指導をどうしたら、良いものだと理解していただけるかを二人で思案しました。

野村: あのセミナーはトレーナーが行う一般的なセミナーではなかったですよね(笑)。

髙田:予定通りトレーニングの知識は一つも話さなかったよね。でも、参加者の皆様が「じゃ明日から運動しよう!」と思ってくれれば成功だと感じていましたので、僕たちが初心に戻って話ができるような場をつくっていきたいという思いは伝わった手応えがありました。フィットネス業界を変えたいという気持ちを持って仕事をしています、まだまだ力不足ではありますが、さらに向上してトレーニングを広めることに尽力したいと思います。

野村:他の業界とも交流を持っていかないとダメですよね。なんか、凝り固まってしまっているような印象を受けます。この業界を成長させるには新しい刺激が必要なので、またセミナーみたいなものをやっていきたいですね。

僕自身は、当初の目標だったゴールドジムでパーソナルの予約を埋めるというのも、最近スタッフさんに「野村さん、朝から晩までジムにいますよね」って言われるくらいになって、なんとかクリアできるようになりました。髙田さんは趣味も多くて、トレーニング以外でもいろいろと相談をさせてもらっています。でも、髙田さんとはまだまだ引き出しの多さが違う。これからもがんばります!

髙田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP
野村昇平(のむら・しょうへい)
元関脇の大相撲力士の父を持ち、3兄弟の長男として生まれる。なで肩で細身に悩む幼少期をすごすも、学生横綱を多数輩出している日本体育大学相撲部に入部。食の細さをカバーする食べ方や、栄養の吸収力を上げるノウハウを学び筋トレを併用。体重を70kgから110kgまで増量。全国学生相撲選手権大会に出場を果たす。
卒業後、加圧トレーニングスタジオに就職。その後、トレーニングの効果を証明するために自らボディビルを実践。細身で筋肉がつきにくい体質でも、短期間で筋量を増やし体を大きくする独自のメソッドを考案。東京オープンボディビル選手権(75Kg超級)にて優勝する。現在まで延べ1万3千人の指導を行い、自身の能力を最大限に引き出すことを求めるエグゼクティブクラスのビジネスマンに定評。

インタビュアー
立華徳之真(たちばな・のりのしん)
パフォーマー兼パフォーマー専門の美容家・治療家・スポーツ指導者。陸上競技・体操・バスケットボール・フィットネス・トレーニング・ジュニアスポーツ・体育施設運営管理・サプリメント・スポーツボランティアなどの専門資格を所持。また柔道整復師・美容師・登録販売者・診療情報管理士として美容・健康・医学領域および出版・映像・イベント・教育・ITなどの実務をこなす。ほか殺陣やアクション、神経系コーディネーションや能力開発などの分野で活動しているハイブリッド。
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