たった4つの股関節体操~真向法④




骨盤内の筋肉を鍛え、女性を安産に導く

続いて第三体操を説明しよう。

◆第三体操
股関節体操の真向法第三体操は相撲の股割りと同じだが、相撲のように180度開脚はしない。開脚して前傾することで内転筋群が伸ばそうとする体操だ。内転筋群とは骨盤下の恥骨、座骨、そして大腿骨の裏についている内ももの筋肉で、大内転筋、長内転筋、短内転筋、恥骨筋、薄筋からなっていて、股関節を内転させる時に使う。たとえばランニングなどをする時にまっすぐに足を前に出す筋肉をいう。

やり方は第二体操の姿勢から脚を開脚させて(画像1)、つま先を立てて、膝を曲げずに背筋を伸ばしながらゆっくりと息を吐きながら前傾していく。

画像1

理想は前傾した時に両肘が床にくっついて、背中が床と並行になっている状態(画像2)。開脚の角度は150度が限度で、それ以上に広げると真向法ではなくなってくる。前傾した時もつま先は立ったままで天井を向いているようにしたい。

画像2

還暦を過ぎた筆者の子供時代は学校の床掃除は板敷であったため、必ず廊下の雑巾がけをさせられたものだが、いまはそのようなことはしなくなった。体育館の床はいまでも板だがモップで掃除をするらしい。和式トイレから洋式トイレに移行し、机に向う時も正座をするのではなく椅子の暮らしにもなっている。つまり、股関節周りの筋肉を鍛えていくような日常ではなくなってきた

こういう暮らしがどんどん股関節を衰えさせ、老化の原因となっているのだが、特に女性にはとても深刻な問題となっている。つまり、座ったり立ったりすることが頻繁に行われなくなったことで「骨盤底筋群」の力が低下してきているのだ。

この第三体操は骨盤を広げる効果がある。是非とも出産前の安産体操として女性に勧めたい体操と言われている。骨盤の中には「骨盤底筋群」という筋肉があるが、この筋肉はハンモックのように骨盤の中に広がっていて、子宮や膀胱、直腸などの受け皿になっている。妊娠した女性の場合、赤ちゃんがお腹の中で成長していくと、それとともに子宮も大きくなっていく。大きくなっていくと子宮を支える「骨盤底筋群」が伸びていくが、出産後も伸びきった状態になって、子宮や膀胱を支えられなくなって尿失禁をしてしまうのを聞いたことがあるだろう。

いわゆるゴムがずっと伸びきったままになっている状態。弾力のある強いゴムであれば、もとに戻るので問題はない。第三体操によって「骨盤底筋群」を鍛え、弾力のあるゴムに戻すことを目標にして欲しい。弾力のある「骨盤底筋群」になれば、咳やくしゃみをした時にも尿が漏れることはないはずだ。

さて中高年になると腰骨の仙腸関節がさびついてきて、開脚がスムーズにできなくなってくる。内転筋を伸ばして、ちゃんと手入れしたい。内転筋が柔らかくなってくると腰も強くなり、それとともに腰内部の神経や血液の流れもリフレッシュされて老化を防ぐ

開脚がむつかしい人は画像3のように片方の足だけ伸ばして、腹から胸へと順番に前傾させていき、内転筋を徐々に柔らかくしていく。また画像4のように横に体を傾けて内転筋を柔らかくするのもいいだろう。

画像3
画像4

次回は第四体操を説明する。
(この項続く)

取材・文/安田拡了

参考資料…『股関節のチカラ 真向法でからだ革命』(ベースボール・マガジン社・現在品切れ中)

『股関節のチカラ 真向法でからだ革命』