キャパシティーを広げるのが私たちの仕事【髙田一也のマッスルラウンジ 第11回】




タレントや会社経営者など多くのクライアントを指導してきたパーソナルトレーナー、髙田一也が「仕事」と「トレーニング」、「社会」と「トレーニング」の適切な関係性を探るこの連載。今回のテーマは、トレーナーがどうすればクライアントに寄り添ったアドバイスができるか、です。

トレーナーに求められるバリエーション

なんらかの困難な局面と対峙したときに、できない理由を探して言い訳をする人は少なくないと思います。「大変そう」「無理だろう」という思いが最初にきて、そこで無意識のうちに実行することを諦めてしまう。そしてついつい、できない理由を口にしてしまうこともあるでしょう。

そういった弱い部分があるのも人間です。すべてにおいてパーフェクトなまでの強さを有している人はないと思います。人間は、弱い部分を必ず持っています

トレーニング指導の現場にいてよく耳にするのは「お酒は絶対にやめられない」という声です。「お酒だけは……」というクライアントさんは本当に多いです。

でも、ほとんどの人は、トレーニングを続けていくうちに、自然と飲まなくなっていきます。やめられないものを無理にやめる必要はありません。「これは無理」と思ったことに対して、どうやれば無理ではなくなるか、それを自然とクライアントさんに伝えていくのもトレーナーの役割です。

「無理だ」という人を「意志が弱い」と一刀両断するのではなく、そういった人の気持ちに寄り添ってあげることも大切です。考え方のキャパシティーは広く持ったほうがいいと思います。そうすることで、いろんな人の考え方に自分を合わせられるようになるからです。

トレーニング指導においても同じです。簡単にたとえると、ベンチプレス150kgを上げるトレーナーは、100kgを上げるトレーナーより、プラス50kg分の経験があります。それを指導に反映させることで、指導のキャパシティーが広がり、より高重量を扱う指導ができます。

トレーナーは、その人のレベルに合ったものを提供できなければいけません。そして、「トレーニングをやりたい」という動機を引き起こしその気持ちを大きくしていってあげられるか。年齢や経験を重ねるにつれて自分のキャパシティーを広げていったほうが自分にとってもプラスだし、関わってくれた人たちに対してもプラスのことを伝えられるような気がします。

高田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP