コンテストに出るのは仕事ですか?【髙田一也のマッスルラウンジ 第7回】




タレントや会社経営者など多くのクライアントを指導してきたパーソナルトレーナー、髙田一也が「仕事」と「トレーニング」、「社会」と「トレーニング」の適切な関係性を探るこの連載。今回はトレーナーがコンテストに出場する際に考えるべきことについて。

コンテストは趣味であり、仕事ではない

今年もフィットネス業界にはコンテストシーズンと呼ばれる季節が到来しました。ボディビルは減量や疲労対策など、大会までの準備段階でさまざまなことを強いられます。仕事とコンテストの両立に頭を悩ませている人も少なくはないと思います。僕もかつてはコンテストに出場していました。当時の僕はフリーランスのトレーナーで、朝から夜まで忙しい日々を過ごしていました。コンテストは日曜日に開催されることが多く、前日の土曜日はなるべく仕事を入れずに水抜きやカーボアップなどの最終調整に充てたくなるものです。

僕はあえて大会前日も夜遅くまで仕事を詰め込んでいました。どんなに忙しくても仕事とコンテストを両立できなかったら意味がないと考えたからです。トレーニングをする、コンテストに出場する。これらはとても有意義な趣味だと思います。ですが、体づくりに気持ちが入りすぎてしまい、仕事を疎かにするのはどうなのか。趣味としてのコンテストがあり、その趣味を支えるための仕事がある。仕事でミスをして損をするのは自分です。そう考えると、優先順位は絶対に仕事のほうが上です。

コンテストに気持ちが入りすぎてしまったがために仕事を疎かにしてしまい、周囲からの信頼を失ってしまった。そのときはわからなくても、数年後には「あのころの俺は何をやっていたんだろう?」と感じるはずです。

トレーナーは、コンテストに出場していい成績を収めれば、それは実績となって仕事上ではプラスには働きます。でも、いい成績を収めたいがために大会前日をオフにして最終調整に充てると、クライアントさんからは「そんなことで仕事を休むの?」と思われてしまいます。トレーナーはそうやって時間を自由に調整できるからコンテストで勝てる体をつくれる。クライアントさんにそう思われたら終わりです。仕事をないがしろにして、トレーニングのみに時間と情熱を注いだら、だれでもいい体になられると思います。

大会前日まで忙しくしても、それでも大会に出て結果を残せる体はつくれるということを示せないといけません。そのためにも、仕事中でも自由にトレーニングができるという環境に頼らず、自ら多忙な状況をつくっていくようにしました。仕事をしっかりとこなしながら、トレーニングを続けて完璧なコンディションを保っていく。そうしてつくった体にこそ意味があり、またトレーニングのすばらしさを伝えていけると思っています。

高田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP