トップトレーナー対談「今のパーソナルトレーニング業界に思うこと」(有馬康泰④)【髙田一也のマッスルラウンジ 第16回】




かつて原宿ゴールドジムのオフィシャルパーソナルトレーナーとして活躍していた髙田一也さんと有馬康泰さん。2人はよい意味のライバルでもあり、ともに『先駆者』として今日に続くパーソナルトレーニング業界の礎をつくってきたと言っても過言ではない存在だ。今回のシリーズでは、そんな2人のカリスマによるに「夢の対談」をお伝えする。第4回目は、パーソナルトレーナー業界の現状についてです。

一人一人の自覚がパーソナルトレーナーの価値を上げる

髙田:僕は今、自分のジムの経営をしていますけど、実は経営の勉強は一切やったことがないんです。しかし、経営者のクライアント様がたくさん来てくださっていて、みなさんから生きた意見を聞くことができているんです。そこで聞いたことを自分の中で照らし合わせて、自分で思ったことや考えたことを、経営者のクライアント様にさらに話すことで、自分の考えが正しかったとか、違っていたんだとか、感じることができているんですね。とりあえず自分の中でも手応えもあるし、いい形で考え方もまとまっています。クライアント様から教えてもらうことって本当にたくさんあるんです。

有馬: ありますよね。この仕事をしてなければ関われなかった職種の方々がたくさんいます。お医者様や弁護士、他にも各業界で優秀な方々。我々は、ただその方達よりも運動、トレーニング、体づくりに対しての知識・技術が長けているだけで、一歩外へ出たらそのお客様のほうが凄いと思うのです。

髙田:逆に尊敬だよね。

有馬:ホントそうですよね。

髙田:若いころは本当に色々と考えさせられました。自分の親のような世代の人がトレーニングを受けに来てくださって、彼らから「先生、先生」と言われる。そういう方々から先生と呼ばれる仕事なんだなと。そんなことを思うと、やり甲斐の大きい仕事。でも今の広がり方よりも、もうちょっと違うカタチでパーソナルトレーナーというものが、認識されて広がっていったらいいのにな、と思いますけど。

有馬: 昔からジムにはトレーナーがいました。でも、マンツーマン指導をするパーソナルトレーナーって、“スペシャルなトレーナー”というイメージがあったんです。それが今はあまりにもパーソナルトレーナーという方々が多くなって、スペシャルに感じにくくなっているような気がします。有名なスポーツクラブでも、次々とパーソナル指導を導入し始めていますし。でも「ゴールドジムのパーソナルトレーナーは、他とは違う信頼できるトレーナー」「スペシャル感を出したい」って当時からものすごく思っていたのです。

ゴールドジムのパーソナルトレーナーになるのは、特別なことなんです。ジム内にはパーソナルトレーナーの紹介ポップが貼られているのですが、そこに貼られている人たちは、トレーナーの中でもごくわずかな人たちなんです。さらに、その約十数人のパーソナルトレーナーのポップの中から、興味のあるわずかなお客様に選ばれなければいけない。実際に仕事につながる確率はすごく低いのです。だから、ポップ1つに対しても、どうやってお客様に自分を知ってもらうか。ポップのプロフィールにも興味を持っていただけるようすごく考えて作成しました。

ですが今はパーソナルジムのトレーナーにさえなれば、すでにそのジムにはお客様がいる。そこでは「誰が担当する?」「では私が担当します」と、パーソナルトレーナー側が希望を出せるシステムのジムもあると聞きます。私のジムにも「このお客さん苦手なんで」と断るトレーナーがいました。でも僕は「常に勉強だよ。収穫ある経験の一つなのだからやりなさい」と伝えるのですが……。昔と違ってお客様が忙しい時間をつくって来てくださっているという感謝の気持ちを持てないのかなと思うときが多々あって……。

髙田:僕もトレーナーさんを雇う側になって、びっくりすることも結構ありました。あからさまに嫌な態度を取ったり、クライアント様に上からものを言ったり……。

僕はとにかくこの仕事をしていきたいと思っていたんですね。だから辞めるという選択肢もなく、失敗した場合はどうやって乗り越えるかまで考えていたんですけど、トレーナーの中には、僕や有馬くんとは仕事に対する意識が違う人も多く、僕がジムを始めてから「そんな考え方もあるの!?」って驚くことばかりありました。

僕たちがトレーナーになったころは、黒のものでも先輩が白と言ったら白ですって言わなきゃいけないような時代でしたし、自分自身もその考えを吸収したいと思いました。先輩の言っていることは絶対という時代。しかし、今はそういう考えでもなくなっている印象です。僕自身はあまり人に対して意見を口に出すことは控えてきたのですが、最近はそれも違うかなと感じるようになりました。

僕はパーソナルトレーニングというものを長くやってきました。自分を押し付けるわけではありませんが、絶対にこうだと自信を持って言えることも多くなりました。だから最近はスタッフにも「こういう業界にしていこうよ」「トレーナーってこういう仕事なんだよ」って、恐れずに言うようにしているんです。そして、認識の違いから、方向性を見誤っているトレーナーがいたら、軌道修正してもらいたいと思うようになりました。

クライアント様にもいらっしゃるんですが、過去にあまり慣れてないトレーナーに習って大ケガを負ったり、パーソナルトレーナーとはこんなものかと思ったり、ガッカリされることがあるみたいなんですよ。でも、もう1回だけ違うところで習ってみようと思って、僕のところにきてくださるクライアント様がいる。僕たちが自信をもって真剣にやってきたパーソンルトレーニングという仕事が、誤解などで失望されてしまうことがあったら本当に残念。一人一人がしっかりと自覚を持ってパーソナルトレーナーという仕事に取り組んで、その価値を上げていってもらいたいと思っています。

髙田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP
有馬康泰(ありま・みちひろ)
日本体育大学で運動処方を主に学び 教員免許を取得。卒業後、大手フィットネスクラブへ入社し パーソナルトレーニングの存在を知る。1999年に国際ライセンスを取得し、フリーランスパーソナルトレーナーに。GOLD’S GYMを中心に活動し 2009年よりアンダーウェア&フィットネスモデルとしても活動。2014年にはReebokONEアンバサダーに就任。2012年ベストボディジャパン ミドルクラス優勝を機に、フィジークコンテスト優勝・入賞多数。2014年にパーソナルトレーニングスタジオ「Body Work Space EVOLVE.」を設立し、『運』を『動かす』"運動"の魅力を発信し続けている。
有馬康泰公式ブログ
EVOLVE.公式HP

インタビュアー
立華徳之真(たちばな・のりのしん)
パフォーマー兼パフォーマー専門の美容家・治療家・スポーツ指導者。陸上競技・体操・バスケットボール・フィットネス・トレーニング・ジュニアスポーツ・体育施設運営管理・サプリメント・スポーツボランティアなどの専門資格を所持。また柔道整復師・美容師・登録販売者・診療情報管理士として美容・健康・医学領域および出版・映像・イベント・教育・ITなどの実務をこなす。ほか殺陣やアクション、神経系コーディネーションや能力開発などの分野で活動しているハイブリッド。
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