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トップトレーナー対談「クライアントに育てられる」(有馬康泰③)【髙田一也のマッスルラウンジ 第15回】




かつて原宿ゴールドジムのオフィシャルパーソナルトレーナーとして活躍していた髙田一也さんと有馬康泰さん。2人はよい意味のライバルでもあり、ともに『先駆者』として今日に続くパーソナルトレーニング業界の礎をつくってきたと言っても過言ではない存在だ。今回のシリーズでは、そんな2人のカリスマによるに「夢の対談」をお伝えする。第3回目は、パーソナルトレーナーとしてどうやってクライアントに接するか。

パーソナルトレーナーの条件とは

有馬トレーナーとして絶対やっちゃいけないのは「教えてあげている」という姿勢で指導することです。お客様は忙しい中で時間をつくってきて私たちのトレーニング指導を求め受けてきてくださっている。それに、例えば指導料が60分1万円だとしたら、その高額な1万円分のサービスを提供しなければいけない。なのに、「なんでコレができないんですか?」とか「それはダメですよ!」といった姿勢で、指導にあたるのはどうかと思います。もちろん2人の間にしっかりとした関係性が築けていれば問題は起きないかもしれませんが、できないのは「ただ単に動かし方や体の使い方を知らないから」であって、それをお客様のレベルを見極めて個々に見合った伝え方をしなければいけないと思うのです。だから仕事帰りで疲れていないか、睡眠はとれているかなど、心身ともに体調チェックをし、相手の立場を理解したうえで1時間を応用力のある指導をしなきゃいけない。

髙田:僕もそう思う。そういったことが考えられるようになったのは、僕たちは自分たちで仕事をつくってきたという意識があるからかもしれません。職場に行けば当たり前に仕事があって、指導できる体制があってといった環境だけで指導していると実感を得らえないこともあると思いますが、当時は「パーソナルトレーナー」という言葉自体があまり知られていない時代。でも、それを職業として確立していくには、どのようにしたら仕事として成り立つかを考えなければいけなかった。

僕はパーソナルトレーナーという職業はとてもいい仕事だと感じていたので、社会にもっと広がっていくといいなと思っていました。そこで仕事に対する感謝の気持ちが大きくなったんだと思うんです。1人のクライアント様が僕のところにいらっしゃることだって奇跡みたないなものですから。

有馬:その1人が大きく感謝の気持ちをもって指導にあたらなければいけない。

髙田:そう。だから「自分を選んでくれて、ありがとうございます!」という気持ちが強くて。例えば、クライアント様が僕のところにきてくださるというは、その人の人生の中で、料金のことを含めてさまざまな決断があったと思うんです。そしてパーソナルトレーニングを受けると決断してからも実際にトレーニングに行くには、準備だって必要だし時間だってかかる。僕にとってはいつもの1時間かもしれないですが、クライアント様は、時間をかけてその1時間をつくって、僕のところまでトレーニングにきてくれているわけです。

そんなことを考えると、1時間という時間がとても貴重なものに思えて。その人が求めているトレーナー像を自分の中でつくり出して、その人に合った自分のトレーナー像で接しようと。だから絶対に上からの指導ということはしてこなかったし、たとえ表面上、上からの指導みたないことをしていても、その人がそれを求めていたときに、僕はあえてそのように演じて接してきたつもりです。とくにかくクライアント様が主体。見ていると、有馬くんは常にそのような指導をしていることがよくわかったんです。それに有馬くんにはすごく個性的なクライアントさんがいたんですよ。常に怒っている人がいたよね。

有馬:あー! いましたね~。そうそう、指導中ずっと怒っているんです(笑)。そのお客様は筋トレをすること自体が不愉快だったんです。1人だと絶対にやらない。だけどカッコいい体は手に入れたい。だから「1人では絶対にやらないから、嫌々だけどあなたについてやります。なのでちゃんと教えてください」って私の指導を受けてくださってました。で、レッスン中、つらいのとか痛いのとかが極端に嫌なんです。だから「あと2回」って声をかけ声を出しながらなんとかやるのですが、終わったらすごく怒っている。カッコよくなりたいけど「なんでこんなことをやらなきゃいけないんだ!」って葛藤があって。

髙田:どこかに行っちゃったりしてた(笑)。

有馬:水を飲みに行って、そのまま帰ってこなかったり(笑)。

髙田:そしてその人がトレーニングにくるのは忙しい時間帯で、周りにもお客さんが多かった。その中で有馬くんがその人を教えていた。僕はそばで見ていて、有馬くんがかわいそうになって(笑)、そこには有馬くんとクライアントさんの2人にしかわからない関係性があったとは思うんです。

有馬:でも、そういうお客様を指導するのもかなり勉強になるのです。怒り散らして周囲の方々にも迷惑をかけ酷い場合は、こちらからお断りすることもできなくもないのですが、そういう個性的なお客様をクリアすると自分の中で引き出しが増える。今にして思えば、あのときのお客様以上に怒る人は今のところいないので、大きなミッションをクリアし自信をつけた僕としては「どんな個性的なお客様がきても大丈夫」ってキャパも広がってくる。それにその怒っているお客様もメチャクチャ忙しい方で、それでも時間をつくってトレーニングにきてくれていました。トレーニングに対してはめちゃくちゃ真面目でサボらず続けてくれて。そして体も変わり効果を実感してくださり、喜んだ姿を見て嬉しい気持ちになりました。私も指導させていただき、よかったなって。だからどんなお客様であっても感謝の気持ちを忘れず熱意を持って指導しなきゃって思うのです。

髙田:真面目だったよね。

有馬:お金を払わないとかドタキャンするとか、なかったですし。「自分1人じゃ絶対怠けるからお願いします」って。

髙田:仕事にしてもトレーニングにしても、その人からはすごく学ぶことがありました。トレーニングをやり抜くな、この人って。そして有馬くんからも。

有馬:パーソナルトレーニングはマンツーマンで行うものです。人対人なので、初対面のときに「この人ちょっとクセあるな」とか「大丈夫かな?」と不安に思うお客様は確かにいました。だけど、それもやっぱり勉強なんです。この人は自分に合いそうだからとか、人を選んでやる仕事ではないので、そんなお客様がきたらきたでちゃんと受け入れる。この仕事って普段接することのない色々な方々と出会うじゃないですか。なので知り得なかった情報をいただいたりと勉強になり、トレーナー自身も成長できるのです。だから感謝の尽きない仕事なのです。

髙田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP

 

有馬康泰(ありま・みちひろ)
日本体育大学で運動処方を主に学び 教員免許を取得。卒業後、大手フィットネスクラブへ入社し パーソナルトレーニングの存在を知る。1999年に国際ライセンスを取得し、フリーランスパーソナルトレーナーに。GOLD’S GYMを中心に活動し 2009年よりアンダーウェア&フィットネスモデルとしても活動。2014年にはReebokONEアンバサダーに就任。2012年ベストボディジャパン ミドルクラス優勝を機に、フィジークコンテスト優勝・入賞多数。2014年にパーソナルトレーニングスタジオ「Body Work Space EVOLVE.」を設立し、『運』を『動かす』"運動"の魅力を発信し続けている。
有馬康泰公式ブログ
EVOLVE.公式HP

 

インタビュアー
立華徳之真(たちばな・のりのしん)
パフォーマー兼パフォーマー専門の美容家・治療家・スポーツ指導者。陸上競技・体操・バスケットボール・フィットネス・トレーニング・ジュニアスポーツ・体育施設運営管理・サプリメント・スポーツボランティアなどの専門資格を所持。また柔道整復師・美容師・登録販売者・診療情報管理士として美容・健康・医学領域および出版・映像・イベント・教育・ITなどの実務をこなす。ほか殺陣やアクション、神経系コーディネーションや能力開発などの分野で活動しているハイブリッド。
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