垣原賢人インタビュー カッキーライドへの道(前編)




ガン治療と筋トレの両立

復帰戦への抱負を語る垣原

「筋トレを再開してから、精神面にもいい方向に向かっているように思えます」

UWF、UWFインターナショナル、新日本プロレスなどで活躍した元プロレスラー、「カッキー」こと垣原賢人がドクターから悪性リンパ腫であることを告げられたのは2014年12月のことだった。新日本プロレスで引退試合を闘ったのは2006年。リングを離れてからも、日常生活の一部としてウエイトトレーニングは続けていた。

「でも、病気であることが分かって以降は、厳しい食事制限に身を置くことになりました。10代のころから『人は裏切るけど、筋肉だけは裏切らない』という気持ちでトレーニングをやってきた人間としては、筋トレができなくなるというのは……。でも、ぼくには家族もいるし、命を守らないといけない。つんく♂さんも、命を守るために歌手の命である声帯を切除した。それと比べると、筋トレができないというのは小さなこと。そう言い聞かせて自分を納得させました」

命を守るためにも、病気を進行させないためにも、垣原は「筋肉」を捨てた。

「筋肉を大きくするためには、たくさんのタンパク質をとらなければいけません。悪性リンパ腫を患う以前は、そういった食事を続けていました。でも、病気を克服するには、そういった食生活も変えなければいけないんじゃないかと。『もう筋トレなんかやらない!』と思いました。そのころのぼくは筋肉も削げ落ちてしまって、鏡に映った姿は老人のようでした。筋肉がごっそりとそぎ落とされて、まず以前の体には戻れないだろうと思いました」

懸命に病気と闘い続ける垣原に、プロレス界の仲間たちがエールを送った。15年8月、東京・後楽園ホールで開催されたチャリティー興行「カッキーエイド」。垣原を勇気づけるために行なわれたこの大会。メインイベント終了後、リングに招かれた垣原を、ファンは大きな「カッキー」コールで出迎えた。

「あのとき『カッキー』コールからは力をもらいました。あそこから本当に体調がよくなっていったんです。声援の波動を感じることができて、ぼくの体の一つ一つの細胞が、それに反応するかのような感覚を覚えました。ぼくの体のなかに滞留していた悪いものを『カッキー』コールが洗い流してくれました。プロレスラーでよかったと思いました」

さらには、あるドクターとの出会いが、垣原をよりポジティブな方向へと導いた。

「ガンの治療で有名な先生がいらっしゃるんですが、その先生から筋トレを勧められたんです。ぼくは以前の生活をしてはいけないと思ってたのですが、その先生のところに治療のことで相談にいったら、いきなり『相撲をやろう』と(苦笑)。先生は70歳近いのに、ぼくを持ち上げるんですよ。『今もベンチプレスで120kgは上げられるんだよ』って。人間にとって筋肉はすごく大事なものであるということを教わりました。そこでガンを乗り越えるために筋トレをしようという考えに行き着きました」

ただし、そこには「歯を食いしばるようなハードな運動はしない」という条件が加えられた。

「先生がいおっしゃるには、ガンは熱に弱いそうなんです。筋肉は体内で熱を生み出します。しかし、ハードなトレーニングをやらないと、筋肉は付かない。そう考えると、疲労が溜まって免疫力が下がってしまうんじゃないかという不安がありました。だから、やりすぎない程度にやっていこうと。効率的にトレーニングを行なえば、病気を悪化させることなく、筋肉を付けられるじゃないかって

リハビリを重ね、リングへ復帰を果たした垣原

トレーニングを再開した当初はベンチプレス60kgに苦戦した。考えられないことだった。しかし、継続していくうちにバーの軌道も安定し、ついには100kgを上げられるまで回復する。ペシャンコになっていた筋肉が、しだいに張りを帯びてきたのである。

「それまでのぼくは、いつも不安と闘っていました。咳き込むと『大丈夫かな?』とか。でも、筋トレをやるようになってから、不安に襲われる回数は減りました。筋トレは、上げられなかった重さが上げられるようになるなど、成果が数字に表れる。また、周囲の人たちに『体が変わってきた』と言われると、自信にもなる。筋トレをやってよかったと思います」

(この項続く)

取材・文/藤本かずまさ

垣原賢人復帰戦
カッキーライド
第1試合UWF道場スパーリングマッチ
垣原賢人VS藤原喜明
8月14日(月)
場所:後楽園ホール
開場:17時30分
開始:18時30分

◆席種
 特設リングサイド:7000円
 リングサイド:6000円
 指定席A:5000円
 指定席B:4000円
 立見席:2500円