子どもたちの運動能力を伸ばすために【宮田和幸インタビュー(2)】




小学生の頃、少年隊や光GENJIがバク転をする姿に憧れた40代のおじさんです。華麗にバク転ができるとモテる。あの時代の少年たちは誰もがそう思っていたはず。頭からマットや砂場に突き刺さりながら練習をした日々が思い出される……。

元シドニー五輪レスリング63㎏級日本代表で、格闘家の宮田和幸氏が主宰するBRAVEでは、子どもたちを対象とした体育塾があり、そこでは3カ月程度でみんながバク転をできるようになるという。練習の様子をのぞいてみると、子ども達は怖がることなくバク転にチャレンジしていた。小学生年代の子どもの運動の力を高める上で、大事にしているのはカカト重心にならないことだ。


運動をする時はカカトをつけずつま先重心で動くように指導している

「運動神経がいいと言われる子は、動く時に自然とカカトが上がっているんです。逆に運動が苦手という子はカカト重心であることが多い。馬とか動きが早い動物はだいたいカカトが上がってるんです。だからジャンプをやる時もドーンドーンと足をべったりつくのではなくて、つま先でピョンピョン跳べるように、カカトを上げることを意識させています」

実際、どんなスポーツでも基本はつま先重心で動くことが多い。走るにしてもジャンプするにしても、カカト重心では体をうまくコントロールすることはできない。カカトを上げて動くことを意識することで、スムーズな身のこなしができるようになり、バク転の動きにもつながっているのだ。


数カ月の練習でバク転ができるようになる。初心者は完全に補助をつけて安全に練習ができる

この体育塾はレスリングを始める前段階として行っているもの。補強やマット運動はすべてレスリングに通じるものだ。レスリングといえば首のトレーニングも不可欠。小さな子どもでも当たり前のようにブリッジで首を鍛える。首はどうしても危険なイメージもあるが、宮田氏はそれを否定する。

「確かに首は危険だと心配する人は多いです。でもやり方さえしっかりしていれば全然危なくないんです。人間の体はよくできていて、危ない場所だからこそ丈夫にできている。首は腕よりも太いので丈夫にできているので危なくないんです。また、ウチの兄が鍼灸師なんですが、前ブリッジは肩こりにすごくいいと聞きました。一般的に首のストレッチってそれほどやらないんですけど、前ブリッジで深部まで効かせることが肩こりの予防にもなるみたいです」

子どもたちは前ブリッジで首をグルグル回してトレーニング。これなら肩こりの心配もなさそうだ……というか肩こりを気にする年齢でもないか。それはさておき、筋トレに関しては自身の経験に基づき、子どもたちが行っているのは腕立て伏せのみ。ワキを締めて普通に20回。この年代では過度な筋トレよりも身のこなしを覚えることに重点を置くというのが宮田氏の考えだ。

「バク宙はある程度身体能力がないとできないけど、バク転は普通の体力でできます。スポーツは優劣がつくので子どもに劣等感が生まれてしまうことがあるけど、こういう体操、バク転は簡単だけどできれば達成感がある。スポーツから何か喜びを得てほしいなと思っています」
運動能力が身につく体育塾では随時生徒を募集中だ。

前ブリッジで首を鍛える子どもたち
子どもの筋力トレーニングには自重でできる腕立て伏せが効果的

取材・文/佐久間一彦


宮田和幸(みやた・かずゆき)/1976年1月29日、茨城県出身。小学生時代にレスリングを始め、全日本選手権で3度優勝。2000年のシドニー五輪・フリースタイル63㎏級日本代表。2004年に総合格闘家としてデビュー。2009年に自らが主宰するジム「BRAVE」を北千住にオープンする。現在は北千住に加え、三郷、草加と3つのジムを運営。6月には広尾にも新ジムを開設した。
BRAVE
広尾ジム