プロレス界を魅了するハートの上腕二頭筋・才木玲佳




レギュラー参戦している東京女子プロレスでTOKYOプリンセス・オブ・プリンセス選手権王座を獲得し、チャンピオンとして活動している才木玲佳選手。2018年1・4(イッテンヨン)後楽園ホール大会ではメインイベントで同王座の防衛戦を闘う。大きく隆起したハート型の上腕二頭筋でプロレスファンを魅了。愛が詰まった筋肉を武器にアイドルの枠を超えた活動を展開している才木選手に、レスラーとしての履歴と今後の目標について聞いた。


――プロレスはどちらで練習されたのでしょうか。

才木 プロレス団体のWRESTLE-1が設立した「プロレス総合学院」というプロレスラー養成スクールがあるんです。そこで半年間、月曜日から金曜日まで毎日通って練習しました。

――試合を拝見すると、才木選手のファイトスタイルはとても男性的です。日本独自の“女子プロレス”とは異なる、世界標準のスタンダードな“男子のプロレス”を学ばれたという印象を受けました。

才木 私が初めて見たプロレスは女子プロレスではなく、WRESTLE-1だったんです。私はCheer♡1というユニットに所属していて、WRESTLE-1の公式サポーターを務めているんです。だから、最初は応援する立場でプロレスと接していました。でも、トレーニングを始めて筋肉がついてきた、ちょうどそんな時期にプロレス総合学院ができた。2015年10月のことです。そこで、私も「やる側」でプロレスにかかわりたいと思うようになった。だから、自然と男子のプロレスを学ぶようになったんです。

――ただ、プロレスも見ているのと実際にやってみるのとでは大きな違いがあったと思います。

才木 そうなんです。選手のみなさんはこんなに大変なことをやっていたんだということがわかりました。最初、私はプロレスのルールも技の名前も知らないような状態だったんですが、プロレス総合学院に通うになって、プロレスをより楽しめるようになりました。だから、「やる側」に回ることに挑戦して、よかったと思います。
――デビューに至るまで一番大変だったことはなんでしょう。

才木 学校では生徒たちみんなでプッシュアップ100回、ヒンズースクワット300回、腹筋100回といった基礎体力運動をやるんです。私は体力にも筋力にも自信があったのでそういったトレーニングには苦痛は感じませんでした。でも、ケガをしたときはつらかったです。脇腹をケガして、呼吸をするだけで痛くなったことがあって。そのときは練習も思うようにできませんでした。周りは男の人が多かったんですが、唯一の女子の同期が木村花ちゃんなんです。

――元女子プロレスラーの木村響子さんの娘で、現在はPro-Wrestling ACEに所属している木村花選手ですね。

才木 いい仲間でもあり、いいライバルと呼べる存在と出会うことができました。だから、すごく恵まれた練習環境にあったと思います。「彼女には負けたくない」と思っていましたから。今は違う団体に上がっていますが、お互いに心のどこかで意識しているところはあると思います。


――師匠と呼べるプロレスラーは誰になるのでしょう。もっとも影響を受けたプロレスラーは?

才木 やはりプロレス総合学院の校長先生の武藤(敬司)さんです。また、WRESTLE-1の選手のみなさんに直々に教えていただいたので、私のルーツはそこにあると思います。プロレスを闘っていく上で大事なものを授けてもらったような気がします。試合ではシャイニングウィザードを使わせていただいたりと、武藤さんのDNAは受け継いでいると思います。

――半年間の練習期間を経て、2016年3月にプロデビューされました。

才木 今ではアイド活動をしているときはアイドルの「れいたん」の顔になりますし、リングに上がっているときはプロレスラーの「才木玲佳」の顔になります。

――そこは自分自身でスイッチを切り換えていくのでしょうか。

才木 髪型の変化が大きいかもしれないです。ツインテールをしているときはアイドル。今のこの髪型は戦闘モード。髪型を変えるだけで、自分でも驚くくらい人格が変わります。また、私は負けず嫌いで勝気な性格なんです。生まれつきファイティングスピリッツは持っていると思います。

――また、才木選手の試合には、いい意味で“外様”感がありません。その存在がしっかりとリングに馴染んでいるといいますか。

才木 そう言っていただけるのはうれしいです。最近は、アイドルの子たちがプロレスのリングに上がることも多くなりました。プロレスファンの人たちから色眼鏡で見られることは承知の上ですが、「ただのアイドルの試合ではない」と思ってもらえたのなら、誇らしいです。

――今は筋肉アイドルとして、さまざまなメディアから引っ張りだこの状態にあります。

才木 とてもありがたいことです。ライブ、リハ、テレビ、ラジオ、トレーニング、プロレスの練習、試合と、いろんなことをやらせてもらっています。

――テレビの企画で東京大学を受験することにもなりました。

才木 そうなんです(笑)。でも、私はお仕事が大好きで、もともとお休みをあまり必要としない性格なんですよ。少しでも空き時間ができたら「トレーニングしたい」「勉強したい」と思います。毎日、すごく充実しています。

――レギュラー参戦している東京女子プロレスでは、TOKYOプリンセス・オブ・プリンセス選手権王者となりました。まだキャリア1年半ながら、チャンピオンとしてメインイベントのリングに立つようになりました。

才木 そこにプレッシャーを感じることは、あまりありません。私自身が試合を楽しみ、目の前にいる選手に全力でぶつかっていけば、みなさんの心に響く試合がおのずとできると思っています。

――プロレスラーとしての今後の目標を教えてください。

才木 やはり、このベルトを守り続けて、防衛を重ねていきたいです。私はコスチュームに星のマークを入れているのですが、勝つたびにその数を増やしているんです。コスチュームが星で埋め尽くされるくらい、防衛していきたいです。また筋肉アイドルとしていろんなメディアに取り上げていただいているので、私だけではなく東京女子プロレスの認知度も上げていきたいです。東京女子プロレスは、初めてプロレスを見る人でも楽しめる団体だと思うんです。この団体の楽しさを、より多くの人たちの知ってもらいたいです。また個人的な目標の一つとしては、「女子プロレスラーといえば才木玲佳」と言われるようになりたいです。

聞き手/藤本かずまさ
撮影/やまなか順子‵