1年で体重が17kg減!“自転車ツーキニスト”疋田智さんにきく自転車通勤の楽しみ方①




今年5月に「自転車活用推進法」という法律が施行され、追い風が吹いている自転車通勤。“健康”という点でも注目を集めていますが、どんなメリットがあり、何に注意すべきなのか? 自転車通勤する人を意味する“自転車ツーキニスト”という言葉を広めた当人であり、NPO法人自転車活用推進研究会の理事も務める疋田智さんにお話しを伺いました。第1回は自転車通勤を始めたきっかけと、その効果について。

自転車通勤で健康が劇的に改善

本職はテレビ局のプロデューサーである疋田さんが自転車通勤を始めたのは1996年のこと。きっかけは当時住んでいたマンションの住民総会でした。
「そこで『駐輪場にある汚い自転車は、どうせ乗らないのだから捨てましょう』と決められたんです。で、駐輪場に置いてある自転車の中で一番汚いのが私のだった(笑)。元は自転車少年で、大学生の頃までは結構乗っていたんですが、就職したら乗る時間が全くなくなってしまって放置されていたんです。ブリヂストンの『ユーラシア』というツーリング自転車で、思い出もあるから捨てられてなるものかと整備し直したのですが、だからといって乗る時間ができるわけでもない。それなら通勤に使おうと思ったのが始まりです」

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当時、自宅から職場までの距離は約12kmでしたが、この距離が「始めてみたら自転車通勤にはちょうどいい距離だった」と疋田さんは言います。
「自転車の前は電車で通勤していたのですが、だいたい50分くらいかかっていました。自転車で行くと1時間半~2時間くらいかかるのかなと思って家を出たら、なんと40分くらいで着いてしまった。電車より全然速いんですね。しかも、満員電車に乗るストレスはないし、適度な運動で体も頭も目覚めているからスパッと仕事に入れる。これはいいと思いました」

自転車通勤に慣れるに従い、通勤時間はさらに短縮され「信号のタイミングが良ければ35分、帰りは深夜になっていたので30分で着く」ようになったのだとか。それ以外にも多くのメリットがあったそうです。
「その頃は人生で一番体重が重かった頃で84kgありました。それが1年で67kgになったんです。17kgのマイナス。もちろん、食事制限はしていません。その後(引越などで)少しずつ走る距離は短くなっていくのですが、太りにくい体になっているようで68kg前後で推移していました。今はちょっと増えて71kg。ま、もう50歳ですから、その程度の中年太りは仕方ないです(笑)。とりあえず以前みたいに80kgを超えてしまうようなことはありません」

ほかにも健康診断でいずれも「C」判定だった中性脂肪や血中コレステロール値、尿酸値などの数値は全て「A」判定に。また、「夜はなかなか寝付けないほうだった」という疋田さんですが、自転車通勤をするようになってからはスムーズに眠れるようになったとのこと。健康面ではメリットばかりだったようですが、デメリットはなかったのでしょうか?
「電車の中で本が読めなくなったことでしょうか。本に限らず移動時間に情報を得ている人も多いと思いますが、それができなくなるかもしれませんね。あとは、雨の日が大変です。私は雨が降ったら電車通勤に切り替えるのですが、自転車より時間がかかるので早く起きないといけない。それがあるので、翌日の天気予報には敏感になりました。自転車で行くつもりで玄関開けたら雨、なてときはアウトですから(笑)」

取材・文/増谷茂樹


疋田智(ひきた・さとし)
テレビプロデューサーという本業に加えて“自転車ツーキニスト”としても活動。NPO法人自転車活用推進研究会理事、学習院大学生涯学習センター非常勤講師も務める。自転車に関する著書に『自転車ツーキニスト』(光文社)、『自転車生活の愉しみ』(朝日文庫)、『自転車の安全鉄則』(朝日新書)、『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)『電動アシスト自転車を使いつくす本』(東京書籍)など多数。メールマガジン「週刊 自転車ツーキニスト」でも自転車通勤にまつわる情報を発信している。