“聖域”? フリーウエイトスペースに踏み出す勇気を【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第4回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? さて、今回の「週刊VITUP!」はジムのお話。先日、「マッスルラウンジ」の取材で髙田一也さんと岡村和義さんの対談を行いました(近日公開)。その時にも話題になったのが、ジムのフリーウエイトスペースのこと。それほどトレーニングに縁のない人から見れば、ムッキムキの男たちがフガフガ言いながら鍛えている、決して近づくことのできない空間に見えていることでしょう。この聖域を突破するのは容易ではないのかもしれませんが、ここではフリーウエイトスペースに棲む住人たちのことを紹介しましょう。

私は仕事の関係でジムに行く時間は平日の朝9時と決めています。仕事終わりでトレーニングを予定していると、急な取材や食事会が入ったりして行けなくなる恐れがあるため、午前中のアポがない時にジムに行くことにしています。いつも同じ時間に行くと、だいたいフリーウエイトスペースに現れる人物の顔ぶれは決まっています。朝9時に来る人たちは仕事前の限られた時間を使っているため、黙々とトレーニングに励む人ばかり。そのため顔なじみではあるけど、特に会話をするわけでもないので名前は知りません。毎朝駅で一緒になるけど名前は知らない人っていませんか? そんな感覚です。

そこで私の中ではレギュラーメンバーに勝手にニックネームをつけています。有効にスペースを使い、効率よくトレーニングするためにも、レギュラーメンバーのトレーニングの特徴をつかむことも大事なのです。

©Viacheslav Iakobchuk

登場人物その一=武井壮(本名ではない)。彼は真っ先にパワーラックに向かってスクワットからトレーニングを始めます。パワーラックが埋まっている時はレッグプレスからスタートする足トレ派。ちなみにニックネームの由来はそのまま。武井壮さんに似ているから。でも、白いタンクトップではなく白いTシャツです。そこは武井さんに合わせてほしい。
登場人物その二=岡本さん(本名ではない)。ベンチプレスしかやらない。途中からはインストラクターの補助をつけて限界まで追い込む。朝9時からはなかなか力も出ないと思うのですが、何時に起きているのかいつか聞いてみたい。ちなみにニックネームの由来は『週刊ベースボール』の岡本記者に似ているから……と言っても誰にも通じませんね。
登場人物その三=リトル稔(本名ではない)。身長は160ちょっとと小柄だけど、かなりのムキムキボディで高重量を軽々上げる本格派。トレーニング中に2リットルの水を必ず飲みほす。ちなみにニックネームの由来はプロレスラーの田中稔選手を小さくした感じだから。田中選手も入場時にペットボトルの水を飲みほすパフォーマンスを見せるのですが、その部分もかぶっています。
登場人物その四=ターミネーター(本名ではない)。おそらく還暦を過ぎているベテランで、好きなトレーニングは背中。ベントオーバーローイング、ラットプルダウン、チンニングなど、いつも背中を鍛えている印象。けっこうなお年のはずだけど、ターミネーター感がハンパない。シュワルツェネッガーではなく、ターミネーター。
登場人物その五=青マリオ(本名ではない)。見た目の印象が強くどんなトレーニングをしているかは記憶にない。ニックネームの由来はもちろん、スーパーマリオに似ているから。マリオが青いTシャツを着ているため青マリオ。いつか本人に言いたい。「Tシャツは赤でしょ」と。

レギュラーメンバーに準レギュラーが加わる形でフリーウエイトスペースは形成されています。みんな場所を譲り合ったり、時にはバーベルの付け替えを協力しあったりしながらトレーニングに励んでいます。トレーニングをしている人はみんないい人ばかりです。フリーウエイトスペースは聖域なんかではありません。勇気を出して一歩踏み出してみましょう。素敵なニックネームをおつけします。

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。