【マインドフルネス瞑想で整える③】「体を温めてリラックス」をルーティンにする




自分を静かに落ち着け、心身をスッキリさせる習慣、それがマインドフルネス瞑想だ。今やあらゆるジャンルで取り入れられ、健康やパフォーマンス向上に大きな効果を上げている。偉大なるアジアの知恵を試してみよう。

前回は「呼吸を感じる」簡単なやり方を紹介した。

1 背中を伸ばして両肩を結ぶ線がまっすぐになるように座る
2 呼吸を感じる
3 雑念が出てきたら呼吸の感覚に戻る

まずは3分間やってみることをお勧めしたが、次のステップとして、一回10~15分間行うことを試してみよう。

自然に呼吸をして、胸や腹が膨らんだり縮んだりするのを「ふくらみ、ふくらみ、ふくらみ」「ちぢみ、ちぢみ、ちぢみ」と感じ、その感覚に集中するのだが、時間が長くなると、どうしても湧いてくる雑念が増えてくる。
それは悪いことではなく、むしろ雑念がたくさん出てこないのはあまりうまくいっていない証拠、という意見もある。

そもそも人間の集中できる時間はとても短い。

マイクロソフトのカナダの研究チームが2015年5月に発表したところによれば、約2000人の参加者の脳波などを測定した結果、2000年は12秒だったヒトの集中力の持続時間が、13年には8秒まで短くなってしまったという。これはIT技術の発展による情報量の増大、またSNSの普及などが大きな原因だといわれている。

この傾向はしばらく続くと予想される。

ちなみに金魚は9秒間というデータがあり、ヒトは金魚以下の持続時間だ……。

雑念は繰り返し瞑想を行っていると最初は驚くほど湧いてきても少しずつ減ってくるのが一般的だが、まずは雑念を遠くから眺めるような気持ちを持ってみよう。

「雑念」と名付けて、「戻ります」と心で言って(これは慣れてきたら省略可)呼吸に戻るが、ただ雑念と名付けるだけでなく、体のどこかが緊張してこわばっていたら、「緊張、緊張」「こわばり、こわばり」と名付けて息を吐きながら呼吸に戻っても良い。

どこかがむず痒かったら「かゆみ、かゆみ」と名付けて戻る。
「あれを食べたい」「あんな感じのものを買いたい」との念が湧いてきたら「欲、欲、欲」。

こうした雑念への名付けは「ラベリング」と呼ばれ、感覚に戻る手助けをしてくれる。
ただし、あまり細かくラベリングしなくてもよく、大切なのは呼吸の感覚に戻ることだ。

瞑想の時間が長くなってくると、眠くなってくる人も多い。その時は「眠気、眠気」とラベリング。また、親指と人差し指を軽くつけたままにしておくと、そこに少し注意が向けられて軽い緊張を保つことができる。

また、雑念をラベリングしたら「ストップ!」と心で言って戻る方法もある。

瞑想とともに、体の感覚を使ってリラックスすることを定着させると、より心と体が落ち着いてくる。
リラックスしていると体は温かくなり、逆に体を温めるとリラックスする。
この関係を使えば、緊張がほぐれやすくなる。

その簡単なやり方は次の通り。

1 太ももの上に両手のひらを置いて温かさを感じる

イスに座って目を閉じて太ももの温かさを手のひらに感じ、その温かさが腕肩と伝わって全身に行き渡るようにイメージする。

2 耳にコットンを詰める

コットンを大きめにちぎり、両方の耳の穴に入れてしばらくそのままにする。穴にきつく入れないように。
10分ほどたつと体が温まってくる。

またイヤーマフをするのもおすすめだ。

(『はじめてのマインドフルネス』 NHK出版より)

体全体が温かさを感じるのが理想だが、特にお腹が温かいとリラックス感がよりはっきりしてくる。

体の温かさを感じる「ウォーミング」を習慣化してみよう。
「ウォーミング」は繰り返すほどに、はやく温かさが感じられるようになるはずだ・

決まった時間、あるいは決まった作業をするときに短く数分行って、時間のある時にじっくり行うというスタイルがやりやすい。

「呼吸を感じること」と「ウォーミング」をルーティンにすることで、ストレスを感じた時でも、それを冷静に観ることができるようになる。

文・押切伸一