神童・那須川天心にググっと肉迫②【水道橋博士の体言壮語】

健康、トレーニング、格闘技観戦と多ジャンルのマニアである水道橋博士がVITUP!に降臨。カラダを使うヒト、モノ、コトバ、ハウツー等、自信を持ってオススメ! 連載の幕開けは格闘技界の神童・那須川天心選手に迫る! その第2回。天心選手がイメージトレーニングからメンタルと、目に見えない強さの秘密を語ります。

プレッシャーは一切感じない

博士:このジム(TEPPEN GYM。所在地は千葉県松戸市)は本当に広いしキレイだし、環境もいいね。

天心:環境はいいですね。

博士:この周りに住んだとしてもそんなに家賃も高くないし。都心はそれが大変だからね。たけし軍団のラッシャー板前以来の松戸が生んだ大スターだ!

天心:(笑)

――キックボクサーのトレーニングとして必ずこれが必要だ、というのはありますか。

天心:格闘技は何かが強ければ勝てるってわけじゃないんですよ。例えばパンチがめちゃめちゃ強い、蹴りもめちゃめちゃ強い、だからといって勝てるというわけではなくて、全体的な強さ+運も必要なんですよ。いくら負けるだろうと言われていても勝っちゃうこととかも結構あるんで、すべての面で強くないとダメかなとは思います。自分が練習で一番大事にしているのはシャドーボクシングなんですけど。

博士:AbemaTVで見ましたけど、たしかに練習の核にしてるんだね。しかも、丁寧だし、型がキレイ。

天心:はい。相手をイメージするというか。サウンドバックっていう、物に頼っちゃうキックボクサーもいますけど、イメージでどう動くか。普通の対戦相手よりもっと強い選手を想像できるので、イメージトレーニングが大事です。

博士:名人は心眼の境地ってよく言うけど、動体視力で、筋肉の反応を見ているのかなって。

天心:それはもう染み付いてる感じですね。動きを読もう、読もうとしているわけじゃなくて、パンチがきたときに、何パターンも反応を持ってるっていう。頭の回転は早いと思います。

博士:格闘ゲームがうまい人って、何パターンも脳が先を予測変換していて、相手が次に出すものが見えてるじゃない。

天心:それの実写版みたいな感じです。

博士:この動きはこの動きに連動するっていうことを頭で即座に何パターンも連想していくわけだからね。それが本当に実写というか立体の中で、次の動きがこうなるっていうことが必然だと思ってるんだろうね。試合見ていると、予想が外れたものってほぼないんじゃない?

天心:ほぼないと思いますね。顔にもらわないんで。イメージ力は大きいと思います。

博士:プロなってから「無敗」っていうのは、圧倒的に強さの指標にも、アピールにもなるけど、逆にプレッシャーにもなるんじゃないですか?

天心:まあいずれは負けるかな?っていうのはあるんですけど、自分、プレッシャー自体は一切感じたことないです。

博士:そこはすごいね!

天心:負けたことはアマチュアのときに何回もあるんですけど、プロとアマチュアの負けは違いますけど、負けというものはちゃんと経験しているので、もう負けたくないって気持ちがあります。

――アマチュアで負けを経験した時、復活するエネルギーは何でしたか?

天心:基本は深く受け止めないです。物事に対して。すごい楽観的というか、すぐ立ち直れる。めちゃめちゃポジティブなんですよ。心配事とか悩み事とかも一切ないですし。ストレスとかも感じないです。だから良かったのかなと思います。昔、一緒に父親とやっていた頃のほうがストレスでした。

博士:(笑)。

天心:ミットとかで殴られることもあったんで。

博士:でもそれが父親だったから良かったよね。厳しさが愛情だって分かるしね。ボクが弟子入りした、たけし軍団だって並じゃなかったから、本当に。俺ももう32年、たけし軍団にいるけど、若手の頃は、毎日“かわいがり”の連続だったから。『リアクションの練習だ!』って言ってさ。ま、たけし軍団のお笑いは、パワハラとセクハラを中心とした芸能だから(笑)当時は必要だったけど、そんなことは意味がないって気がついたんですよ。天心さんは、性格的にコーチとしてジムの練習生には厳しくはいかないでしょ?

天心:強くなりたい子が集まるんで、プロになる覚悟があって来ている奴には本当に厳しくやりますけど、ただ趣味でやっている人には優しく。

博士:天心選手が、強さばかりを追いかけているだけでなく、キックボクシングというジャンル(の恩)に報いているところも本当に立派だと思ってる。UFCとかボクシングとか他ジャンルのオファーもあるだろうし、それは当然、目標があるとして、ある程度キックボクシングでちゃんと自分の中の恩返しができたらやってみたい?

天心:そうですね。まだキックでやることがいっぱいあるので。自分はキックに憧れてプロになったので、そこでしっかりとお返しをしてからかなと思いますね。

博士:そういうところも応援する気持ちになるね。それから、強さの表現として、家族の強さまで表現しているというのは新しい。子供の頃に、愛を与えられないからハングリーになっている選手っていっぱいいるじゃん。そういう意味で言えば、猪木さんも力道山もそうだろうし。みんなそういう、逆境のところからプロスポーツへのハングリーさが生まれてるけど、これだけ親から愛情豊かに育てられても強くなるものは強くなるというのは、素晴らしいと思う。子供にしても、自分の意志で、俺は俺の人生を生きたいから自分で自分の道を決めたいから、それに親が協力してくれて最高の体制なんだっていう。

第3回につづく)

水道橋博士(すいどうばしはかせ)
1986年にビートたけしに弟子入り、翌年、玉袋筋太郎と「浅草キッド」を結成。芸人としてはもちろん、文筆家としても精力的に活動。『藝人春秋2』(文藝春秋)『博士の異常な健康―文庫増毛版』 (幻冬舎文庫)など著書多数。日本最大級のメールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』の編集長、またユーチューバーとしても絶賛活動中。
那須川天心(なすかわてんしん)
1998年生まれ。「神童」と呼ばれる天才ファイター。RIZEを主戦場に、KNOCKOUT、RIZINで、キックボクシングルールと総合格闘技ルールの二刀流をこなして現在30連勝中無敗。世界中から注目され、格闘技の枠を超えたスーパースターへの成長が期待されている。TEPPEN GYM

構成/押切伸一 撮影/山中順子