【鉄人アスリート】ラグビー・大野均②

スポーツ界の鉄人を紹介していくこのコーナー。ラグビー日本代表最多キャップ保持者の大野均選手インタビューの2回目。今回はラグビーのトレーニングについて、そして疲労回復のラグビーならでは食事法も語ってくれた。

夏場の練習は体重が6~7㎏減る
回復はとにかく食べること

――スポーツは競技によっても求められる筋力、体力が違います。ラグビーではとくにどういった筋力が必要になるのでしょうか?

大野:全身の力が必要ですけど、やっぱり背筋力とかですね。タックルするときの強さ、当たるときの強さ。

――ラグビーというと一般の人がイメージしやすいのは、タックルとスクラムだと思います。大野選手はフォワードなのでスクラムにも入りますが、スクラムではどこの筋肉に一番負荷がかかりますか?

大野:これは足ですね。あとは背筋。背筋が弱いと背中が丸まってしまって押せませんから。ケガ防止という部分では首も強くないとダメですね。

――スクラムは一列目のプロップとフッカー、2列目のロックでは負荷はだいぶ違うものなのでしょうか?

大野:やっぱりプロップ(スクラムの前列中央に入る選手)が一番全身の力を使うと思います。プロップは首と背筋が強くないと無理ですよね。

――首や背筋を鍛えるためにはどういうトレーニングをするのでしょうか?

大野:ウエイトトレーニングとしては、ベンチプレスだったりスクワットだったり懸垂だったりもやりますけど、スクラムをやること自体が一番のトレーニングになっていると思います。

――実戦の中で鍛えていく。

大野:そうですね。スクワットで重いものを持ち上げられるからとか、ベンチプレスで重量上げられるからといってスクラムが強いわけではないんですよね。そこにプラスしてテクニックも必要ですし、感覚みたいなものもありますから。ラグビーの場合は、タックルだったらタックルをやり込むとか、スクラムだったらスクラムを組み込むとか、実戦の中で鍛えられる部分が大きいと思います。

――試合の中で使える力にしていかなといけないのですね。

大野:はい。ウチのチームにオールブラックスから選手が来ますけど、そういう選手がウエイトで特別重いものをガンガンやっているかといったらそうではなくて、そのポジションに必要な平均よりも少し上ぐらいの重量を正しいフォームでやっています。実際の試合で使えるフィジカルというのは、実戦の中で鍛えていく部分が大きいと思います。

――スクラムに限らず、タックルの強度を上げていくのも、やはりタックルでぶつかる練習しかないという感じですか?

大野:ラグビーのタックルはただぶつかればいいというわけではないんです。テクニックとして、首を相手のどっちの方向に入れるとか、腕の回し方であったりとか、どのタイミングで体を低くするかとか、いろいろなテクニックが必要になります。

――ただぶつかるだけではなく、倒し方のテクニックが必要なのですね。

大野:状況、状況によっていろいろな種類がありますね。

――単純な疑問として、100㎏あるような選手が走ってくるところにぶつかっていく恐怖はないのですか?

大野:試合中はないですね。それよりもまずそこでタックルミスをして、チームに迷惑かかることのほうが怖いです。試合のときはそういう気持ちでやっているのですが、観客席から試合を見ているときは、よくこんなデカイ奴にタックルできるなって思いますね。よくやってるなって思います(笑)。

――見ていると怖いのですね(笑)。ラグビーの試合時間は40分ハーフの80分です。普段の練習時間はどれくらいですか?

大野:昔は2時間とか3時間とか平気でやっていましたけど、今は長くてもグラウンドでの練習は1時間半とかですね。段々とトレーニングもプログラミング化されて、しっかりとした理論が浸透してきているので、この練習は10分、この練習は5分としっかり区切られています。選手もそれをわかっているので、移動時間は走って次のところに行ってというように効率よくトレーニングをするようにしています。

――1回の練習でどれくらいエネルギーを消費して、どれくらい体重が減りますか?

大野:自分の場合は夏場の練習を80分やったら6~7㎏減りますね。

――1回の練習で6~7㎏!?

大野:はい。確かにそれだけ減ると脱水症状みたいになって、吐き気と全身痙攣が襲ってきます。エネルギーの消費はポジションにもよると思いますし、体質によっても違うと思いますけど、自分はすぐに汗をかくので体重はだいぶ減りますね。

――その練習後のリカバリーはどのように?

大野:チームでしっかりリカバリーフードというものが用意されています。サンドウィッチ、おにぎり、オレンジジュースなど、一人ひとりに1セット用意されていて、練習が終わったらまずはこれを食べます。

――おにぎりやサンドウィッチなど炭水化物を多めに摂るのですね。

大野:炭水化物を意識してというのもありますが、ラグビーの場合はとにかく消耗しているので、何でもいいからまずは口に入れようという部分もあります。

――とにかくエネルギー補給。

大野:最近はカツサンドを用意してくれています

――ハードな練習の後にカツサンドを食べられるんですか?

大野:みんなカツサンドが好きなんですよ。栄養学に沿って、これを食べたほうがいいという食事を用意されたとしても、それが苦手な選手もいる場合があるじゃないですか。とにかく消耗が大きいので、まずはみんなが食べられるもの、食べたいものという視点で用意されている感じですね。

――なるほど。とにかく回復のために栄養素云々よりもまずエネルギーを摂るという狙いなのですね。

大野:そういうことですね。それこそ試合前は炭水化物だったり、エネルギーになりやすいものを摂るように言われていますが、練習の後は何でもいいからまず口に入れて回復しようというところですね。

――それはラグビーならではの発想かもしれませんね。

大野:人によってはリカバリーフードにプラスして、プロテインやサプリメントを摂取している選手もいますね。

★最終回の次回は長くトップで活躍する秘訣と日本開催のW杯への思いを!

取材/佐久間一彦 撮影/中田有香

大野均(おおの・ひとし)
1978年5月6日、福島県出身。東芝ブレイブルーパス所属。清陵情報高校時代は野球部。日大工学部進学後にラグビーを始める。2001年に東芝ブレイブルーパス入り。07年フランス、11年ニュージーランド、15年イングランドと3度ワールドカップに出場を果たした。代表キャップ98は歴代1位。ポジションはロック。192㎝、105㎏。