【鉄人アスリート】ラグビー・大野均③

スポーツ界の鉄人を紹介していくこのコーナー。ラグビー日本代表最多キャップ保持者の大野均選手インタビューもいよいよ最終回。大ベテランでありながらトッププレーヤーであり続けられる秘密はどこにあるのか? そし代表100キャップへの思い、来年に迫った日本開催のワールドカップへの思いとは!?

40代でもトレーニングは若手と同じメニュー
うまくなりたい気持ちは今も持ち続けている

――40歳を迎えて、ケアの部分やトレーニングの部分に変化、意識的に変えていることはありますか?

大野:ケアの部分は変わりましたね。昔はどこか違和感があるときにトレーナーに診てもらっていたのですが、今は違和感がなくてもチェックの意味で定期的にトレーナーに体を触ってもらうようにしています。そうすると自分の感覚だけでなく、第三者の意見として「ここが張っている」と言われたら、そこを重点的にストレッチをするなどしてケアしています。

――それはケガ予防につながりますね。トレーニング面はいかがですか?

大野:トレーニングに関しては特に変わっていません。若い選手と一緒のメニューをしています。

――そうなんですか。競技によっては年齢とともにトレーニングのやり方を変える場合もありますが、ラグビーは若手と同じ練習をしているのですね。逆にそれができないと試合に出られないということなんですね。

大野:そうですね。ベテランだからといってそこで優遇してもらったところで、選手としての成長はなくなってしまうし、せいぜい現状維持ぐらいしかないので。現役である以上、成長するために若手と一緒にメニューを今もやり続けています。自分も去年までずっと日本代表に選んでもらって、春先は遠征だったり、合宿も行ったりでなかなか重点的にトレーニングできなかった部分があって、逆に今年は春からトレーニングをやらせてもらっていて調子はいいです。スクワットを40歳になって本格的に始めたので。

――代表と掛け持ちだと、常にコンディションを整えることが大事になるので、なかなかフィジカルをいじめるような練習時間を取るのが難しいかもしれませんね。

大野:春から試合がありますし、それこそ日本代表の試合も入ってきますから。その試合に向けて日本代表選手との仕込みとか入ってくるので、なかなか重点的にウエイトトレーニングをする時間は取れなかったですね。

――今年はがっちりトレーニングをやる時間もあったということですね。

大野:東芝の若い選手たちと一緒にやりました。

――これもラグビーというチームスポーツだからこそですね。個人競技の場合、ベテランになると自分で練習量を調整しますが、チームスポーツの場合はそういうわけにもいきませんからね。

大野:やっぱりチームスポーツと個人スポーツでそこは違ってきますよね。少し前にテニスの伊達公子さんと食事をご一緒する機会があったんです。そのときに練習の話になって、「明日の練習は何時からなんですか?」と聞いたら、「私が行った時間が練習開始だから」って。個人スポーツならではだなって思いましたね。チームスポーツは何時に集合と決まっていますし、遅刻は絶対にタブーですからね。その点、個人スポーツは自分の感覚で時間をつくれるという部分で全然違うんだなと思いましたね。

――大野選手はワールドカップに三度も出場して、長くプレーを続けていますが、今もモチベーションを保ち続ける秘訣は?

大野:自分自身、ラグビーがうまいとは思っていないので、少しでもうまくなりたいという気持ちは常に持ち続けています。この年でこうしてチームでプレーさせてもらっている以上は、少しでもチームに貢献したいという気持ちもありますし、何かしらチームにいい影響を与えたいと思っていますし、試合に出たいという思いは常にあります。

――試合に出たいという気持ちは大きなモチベーションになりますね。

大野:試合に出てお客さんが声援を送ってくれるなかでプレーするというのは、今しかできない、現役だからこそできることなので、その時間をもっと長く感じていたいなと思います。

――最初にラグビーに触れた大学生に感じた「ラグビーが楽しい」という感覚は、今でも変わらないものなんですか?

大野:自分が感じているラグビーの本質の楽しさというのは変わりないです。

――来年はいよいよ日本開催のワールドカップです。そのワールドカップ、そして代表100キャップへの思いは?

大野:もちろん100キャップへの思いはあります。いろいろな人に100キャップをぜひ達成してほしいと言われますし、自分の中でもチャンスがあればと常に思っています。でもそれはあくまでも個人的な目標であって、一番は来年日本開催のワールドカップで日本代表が良い結果を残してくれること。そしてもう一回ラグビーが盛り上がってくれることが自分にとっては一番うれしいことです。イチ選手としては、その手助けになるようなことを何かしらできたらなという思いも大きいです。

――2015年ワールドカップの後の盛り上がりはすごかったですからね。

大野:それを維持できなかったのはちょっと残念でしたね。たぶん、競技が盛り上がるのは国の代表が大きな舞台で勝つことだと思います。2015年のときも初戦で南アフリカに勝ってバーッといきましたし、勝つのはこんなに大事なんだなということを実感しました。今年のサッカーワールドカップでも、始まる前は「今年ワールドカップがあるの?」という雰囲気だったのが、日本代表が初戦のコロンビア戦で勝ってから一気に盛り上がりましたからね。

――大野選手の座右の銘である「灰になっても、まだ燃える」という言葉は、どこから来たものなのでしょうか?

大野:これはアメフトの映画のワンシーンに出てくる台詞なんです。どんなにときでも燃えていたいというのはカッコイイなと思いました。

――現在の大野選手はまさに座右の銘を体現しているように思えます。来年のワールドカップにも期待がかかりますが、最後にこれから目指すところを教えてください。

大野:選手として少しでも長くトップのレベルで続けていきたいと思っています。日本のラグビーはこれから自国開催のワールドカップがあって、さらに進んでいくのを中にいて感じていたい。そのためにはラグビーが少しでも盛り上がっていけるように、その手助けをしていきたいと思います。

取材/佐久間一彦 撮影/中田有香

大野均(おおの・ひとし)
1978年5月6日、福島県出身。東芝ブレイブルーパス所属。清陵情報高校時代は野球部。日大工学部進学後にラグビーを始める。2001年に東芝ブレイブルーパス入り。07年フランス、11年ニュージーランド、15年イングランドと3度ワールドカップに出場を果たした。代表キャップ98は歴代1位。ポジションはロック。192㎝、105㎏。