鉄人アスリートに学ぶ。人生に引退はない。【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第29回】

VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか?

本日9月16日、“平成の歌姫”安室奈美恵さんが引退します。熱狂的ファンというわけではありませんが、印象に残る数々のヒット曲を飛ばしてきた彼女の引退は、一つの時代が終わるようで寂しさを感じます。

引退とはその地位や役職から身を引くことを意味しています。プロのアーティストやスポーツ選手にとって、トップのパフォーマンスを維持できなくなった時が、そのタイミングとも言われます。秋になりプロ野球界でも、“松坂世代”の中心人物として一時代を築いた杉内俊哉選手や村田修一選手、2016年にリーグMVPの活躍で広島東洋カープを25年ぶりの優勝に導いた新井貴浩選手らが、今シーズン限りでの引退を表明。今後はさらにそうしたニュースが増えていくことでしょう。

引退する選手がいる一方で、ベテランと呼ばれる年齢になっても、自分を高める努力を続けているアスリートも数多く存在します。現在、VITUP!では「鉄人アスリート」のコーナーで、スポーツ界の様々な鉄人を紹介しています。鉄人たちの話を聞いていると、長くトップでプレーしていくためには、いかにモチベーションの維持が大事かということがわかります。

水泳の原英晃選手は「好きなことをやめる必要はない」と言い、今もなお新しいトレーニングを積極的に取り入れるなど、自分を高める努力を怠りません。レースでいいタイムが出なかったら「悔しい」と闘志を燃やしながらトレーニングに励んでいます。

ラグビーの大野均選手は、日本代表として3度のワールドカップを経験しているにもかかわらず、「自分はうまい選手ではない」と謙虚であり、「少しでもラグビーがうまくなりたい」とどん欲な姿勢を持ち続けています。「灰になってもまだ燃える」という座右の銘を体現するかのように、40歳を過ぎた今も燃え続けています。

原英晃選手(左)と大野均選手

明日から登場する新たな鉄人アスリート・武田大作選手は、5大会連続でオリンピックに出場している、ボート界を代表するレジェンドです。彼もまた「もっとうまくなりたい」というモチベーションを持ち続けている選手。「今日と同じ自分とは会いたくない」と、日々、変化、進化し続けることをモットーとしています。

ケガや年齢的な衰えから、「これ以上はうまくならない」、「もう強くなれない」、「今より速くなれない」……と限界を悟ったとき、モチベーションは低下するのだと思います。そんななか、鉄人たちに共通しているのは、「もっと成長したい」という高いモチベーションです。スポーツ界の鉄人たちは、年齢や環境を言い訳にすることなく、もっと自分を高めていけると思い続け、そのためのトレーニングを続けています。ジャンルのトップに立ちながらも現状維持をよしとしていないのです。

現状維持をよしとしない。

これは何をやるにしても大事なことかもしれません。トレーニングも同じことをやっているだけでは変化は生まれません。1回でも多くやる、1㎏でも重いものに挑戦する、あるいは新しいメニューを取り入れるといった変化が大切です。それは仕事でも同じでしょう。毎日ルーティンのように同じことをしているだけでは、スキルアップは望めません。今日より明日、明日より明後日と、変化することを求めていかなければ、1年後も5年後も10年後も、進歩がないまま年を重ねていくことになってしまうでしょう。

「TRY ME」

安室奈美恵さんのヒット曲の一つです。直訳すると「私を試して」となり、「オレに任せろ!」的な意味合いもあります。スポーツでも、トレーニングでも、仕事でも、「TRY ME」の気持ちで、「オレに任せろ!」と、どんどん挑戦していくことがモチベーションとなり、成長につながるのだと思います。

私は現在43歳。スポーツ選手ならば引退の時期を過ぎていますが、人生の現役生活に引退はありません。だとしたら成長し続けられる自分でいたいので、今日より明日の自分が好きになれるように日々を過ごしていきたいです。

最後になりますが、安室奈美恵さん、25年間本当にお疲れ様でした。

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。