【鉄人アスリート】ボート・武田大作④

スポーツ界の鉄人を紹介していくこのコーナー。ボート界の鉄人・武田大作選手インタビューもいよいよ最終回。今回は東京2020オリンピックへの思いと、自身の競技者としてのゴールについての考えが語られる。

ゴールは今もまだ見えていない
早く競技者としてのゴールに会いたい

――2020年には東京オリンピックが開催されます。もしも出場となれば6度目のオリンピックになります。この大会への思いを聞かせてください。

武田:今の僕もそうなんですけど、これはいろいろな競技の選手も同じ思いだと思います。地元でビッグイベントがあるわけですから、何とかして出場したいという気持ちです。これは絶対に楽しいですから。

――リオデジャネイロオリンピックは出場を見送りましたが、東京大会に向けてはモチベーションが大きそうですね。

武田:やっぱりそれは大きいですね。だからリオのときは(出場を見送った背景に)「世界で勝てるだろうか?」と考えたときに、半分疲れていたというのもあったんです。そこからモチベーションを高めていくという意味でも、東京開催だからこそ「もう1回」という思いが出てきますよね。日本開催の大会で何とか良いパフォーマンスができないかという考えです。

――残り2年を切りましたが、オリンピックに照準を絞っているのですね。

武田:そうです。いつも頭の中で「あと何日」というのは計算しています。(取材日の時点で)あと670日ちょっとだと思うので、練習は1日2回としてあと1300回くらい。ラスト20~30日は調整になりますけど、1000ちょっとは頑張らないといけない。目標を決めて、自分をそこに向けて高めていくだけですから。実はフィジカル面のピークは39歳のとき、ロンドンオリンピックのときだったんです。

――筋量やVO2maxのピークですか?

武田:そうです。ずっと測ってきたそういった数値のピークはロンドンオリンピックのときでした。そのロンドンが終わって、ここからさらに大幅に数値が上がるという自信がなかったりして、代表チームから離れることにしました。それからは自分で満足するため、もっとうまくなるためにやろうと切り替えました。逆にいえば、そこからのほうが自分のためだけにしっかりやっているかもしれない。

――ナショナルチームとしての活動がなくなり、自分だけのスケジュールで動けるようになったわけですね。

武田:そうしてやっているぶん、自分で集中して自分のやりたいことをやっている。楽しくやるというのも大事ですし、もう年齢は関係ないですよ。

――年齢は関係ないですか。

武田:ボーダーレスだと思います。ただ、年齢とともにモチベーションは下がってくる選手が多い。だから40歳を過ぎたりすると、競技を辞めていくんです。肉体的にはまだできたとしても、モチベーションが続かないというのが大きいと思います。故障が増えてきたりして、もうこれ以上伸びないと思うと、モチベーションが下がるんだと思います。でも僕はそうではなくて、いくつになっても新しい発見はあると思っています。もちろん、今から世界チャンピオンになりますと言っても無謀かもしれない。だけど、もっと上にいきたいし、もっとうまくなりたい、その結果、世界チャンピオンになる、というのはありかなというふうに思っています。

――すごく素敵な考え方だと思います。武田選手のなかで競技者としてのゴールというのは見えているのですか?

武田:そこですよね。ゴールが今もまだ見えないので、競技者のゴール、早くゴールに会いたいなと思っています。

――まだ見ぬゴールに向かって競技を続けていく。

武田:はい。逆に言えばオリンピックに出ていた頃は、オリンピックという一つのゴールが見えていたということはありました。オリンピックのゴール=リザルトが出るので、一つの結果はそこで出ます。だけど今はオリンピックもゴールではなく、その先に自分はどこまで高められて納得するのだろうか?という、ゴールがわからないのが怖いですね。夢としては、「オレはボートをすべて把握したからこれで満足だ」というふうになりたいとは思います。

――そのために答え探しを今もしていると。

武田:日々答えを探しているということですね。だから終わりはないのかもしれない。終わり=死ぬときなのかな。それはライフワークになると思うのですが、競技者である以上、勝負ということは忘れずにいたい。勝負するのって楽しいんです。歳をとったから、ベテランだから緊張しないみたいな話も聞くことがありますけど、それは違うと思います。勝負ですからベテランでも緊張します。だから面白いし、それを辞めたくないんです。

――緊張感を味わえるというのは、勝負の世界に生きている証拠ですからね。

武田:競技者としてはそれが一番。緊張はやっぱり楽しいんです。

――武田選手のお話を聞いていると、「楽しい」という言葉がよく出てきますね。

武田:毎回思うのはやっぱりボートに乗るときに何が良かったかっていうと楽しかったんです。長いことボートに乗っていますけど、楽しいんですよ。楽しいからやっているというのが一番大きいかもしれない。僕は人生は楽しまないといけないと思っているんです。そのための一つの手段としてボートがあって、スポーツがある。まず自分が楽しまないと、人に「人生を楽しみましょう」なんて言えないですからね。それと同時に自分がこうして競技に取り組める環境を作ってくれた人たちに感謝をしないといけないですよね。家族にはすごく感謝しているし、会社の人たちにも感謝しています。

――楽しんでいるからこそ、練習にも一生懸命になれるのですね。

武田:でも練習は嫌いなんですけどね(笑)。究極の目標は練習しないで勝つこと。それができたら最高なんですけど、それはあり得ないですから。だから勝つため、速くなるために今日も練習をする。そうして自分が納得できるときがきたら、それが本当の意味でゴールになるのだと思うし、それを楽しみに日々、頑張っていくだけですね。

取材/佐久間一彦 撮影/須﨑竜太

武田大作(たけだ・だいさく)
1973年12月5日、愛媛県出身。DCMダイキ所属。1997年全日本選手権での男子シングルスカル優勝以後、同種目では2009年まで7年連続優勝を含む14回優勝の史上最多優勝記録を持つ(2004年及び2005年は海外遠征のため欠場)。96年アトランタ、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、12年ロンドンと5大会連続で五輪出場。2020年東京大会で6度目の五輪出場を目指す。