栄養ドリンクは健康にいいの?【ドクター長谷のカンタン薬学 第3回】

風邪をひく、頭痛、筋肉痛、二日酔い……日常生活では何かと薬のお世話になる機会も多いもの。薬はドラッグストアやコンビニでも簡単に手に入る時代。だからこそ、飲み方を間違えると大変! この連載では大手製薬会社で様々な医薬品開発、育薬などに従事してきた薬学博士の長谷昌知さんにわかりやすく、素朴な疑問を解決してもらいます。

Q.栄養ドリンクは健康にいいの?

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年末が近づいてきて、読者の皆さんも多忙な日々を過ごしていることかと思います。ちょっと疲れているときは、栄養ドリンクを飲んで元気になろうと考える人もいるのではないでしょうか?

コンビニやドラッグストアでは、100円前後で買える栄養ドリンクが数多く販売されています。前回のコラムで薬品の分類を少し紹介しましたが、健康ドリンクは第3類医薬品に分類されるものや、指定医薬部外品のものが多数を占めます(清涼飲料水もあります)。分類からもわかる通り、基本的には消費者にとって副作用のリスクは大きくないものがほとんどです。ただし、なんでも使用方法を間違うと危険を伴うので、しっかりとした知識はもっておきたいところです。

栄養ドリンクにはカフェインや糖、ビタミン、アルコールなどが入っていて、代謝を上げたり、中枢神経を興奮させたりする効果があります。それを飲むことで、言ってみれば「戦闘モード」のような状態になります。そのため、見かけ上はエネルギーが満ち溢れているような感じになりますが、あくまでも一時的に元気になるだけです。疲れているときに栄養ドリンクを飲んで一時的に元気な状態にして無理をする。これを繰り返していると、疲労の負債がドンドン貯まっていってしまいます。

スポーツなどで選手が興奮状態になることを「アドレナリンが出る」と言いますが、栄養ドリンクはそういう状態を人工的につくっているとも言えます。「疲れているから疲労回復のために毎日飲む」という考え方は、あまりオススメできません。毎日摂り続けているとカフェイン中毒になったり、激しい動悸が起こったり、良くないことが起こる危険性も否定できないからです。

しかし、あれだけたくさんの栄養ドリンクが販売されているということは、それだけ多くの需要があるという証拠です。疲れているときに飲むと元気になると実感している人が多いとしたら、栄養ドリンクにはプラシーボ効果もあるのだと思います。プラシーボ効果とは、薬としての効果を持たない物質によって得られる効果のことです。

たとえば車酔いをする子どもに「酔い止めだからこれを飲めば大丈夫」と言ってラムネを渡します。子どもがラムネを酔い止めだと思って飲むと本当に車酔いをしない。実際の効果はどうであれ、「これはいい」と思い込んで食べたり飲んだりすると、心理的な影響によって良い効果が出る場合もあるのです。それがプラシーボ効果です。栄養ドリンクによって元気になったと思って頑張れるのであれば、徹夜で朝までに終わらせなければいけない仕事があるときなどには、効果的かもしれません。

年末に向かって忙しくなり、疲れもたまりやすくなる時期です。栄養ドリンクでエネルギーを得るものいいですが、基本的に疲れたときは、無理やり働くよりも休息をとったほうが作業の効率は上がります。

栄養ドリンクは健康になる薬ではないので、飲み続けていれば元気になるなんていうことはありません。風邪や腹痛を治す薬はあっても、健康のための特効薬はないと考えたほうがいいと思います。バランスのいい食事をしてしっかり休息をとって、適度な運動をする。栄養ドリンクや健康食品に頼るのではなく、忙しいときほど生活習慣を正すことが大事でしょう。

 

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長谷昌知(はせ・まさかず)
1970年8月13日、山口県出身。九州大学にて薬剤師免許を取得し、大腸菌を題材とした分子生物学的研究により博士号を取得。現在まで6社の国内外のバイオベンチャーや大手製薬企業にて種々の疾患に対する医薬品開発・育薬などに従事。2018年3月よりGセラノティックス社の代表取締役社長として新たな抗がん剤の開発に注力している。
Gセラノスティックス株式会社