トレーニングはひとりのほうが集中できますか?【髙田一也のマッスルラウンジ 第53回】木下まどかさん④

大好評「マッスルラウンジ」。今回はコーナー初の女性ゲストとして、東京大学大学院助教の木下まどかさんが登場。格闘技のバイオメカニクスの研究に従事する傍ら、テコンドー選手として活躍した経験を活かし、パラテコンドー委員会の委員も務める木下さん。対談のラストは、髙田さんから木下さんへ筋トレを続けていく上でのさまざまなアドバイスが送られました。

「目標がないとなかなか難しいんですよね」(木下)
「すごい体をつくって、後でそれを目標にするとか」(髙田)

木下:筋トレってやっぱり継続することが大切ですよね。

髙田:そうですね。でも、今はいろいろなトレーニング法が確立されているので、昔よりは短時間で筋肉をつけることができると思います。となると、なかなか得られなかった時代とは違って、ある程度効果を感じたところから維持するような続け方ですよね。続けていくという意味が、昔とは変わってきているのかなと思います。

木下:やっぱり習慣にしないとダメですよね。

髙田:ウクレレを習慣にできているから大丈夫ですよ(笑)。

木下:一番好きな筋肉の部位はどこですか。

髙田:好きというか、得意なのは三頭筋です。なぜか三頭筋が発達しやすいんですよ。トレーニングに関してはどの部位も毎回落ち込むというか、反省することも多いです。逆にうまくいった時は、すごい満足感があったりもします。やめてしまったらそういうこともなくなってしまうでしょうし、健康に対する自信もなくなるでしょうし。

木下:やめられないですよね。筋トレをして体が変わると、もとに戻ることに罪悪感を感じてやらなきゃと思いますよね。

髙田:焦りますからね。本当はトレーニングを長く続けていたら、1週間くらい休んでも平気なんですよ。でも、1日飛ばしただけで体が元に戻ってしまったんじゃないかとか、考えがちですよね。栄養に関しても、一度やり出すと何時間おきにちゃんと飲んだかなとか、自然と生活のリズムができたりします。それは仕事にもいい効果が出ると思うんですよね。自分で自分を管理することは現代社会においてすごく大切なことだと思っていて、そういう意味でもウエイトはもっと広がってもいいかなと思います。

木下:それこそ1時間でも必死にやれば、全然それでいいじゃないですか。

髙田:そうなんですよ。僕が教えているクライアントさんですごい体の方がいるんですけど、もともとは細かったんです。その方は40歳を過ぎてからトレーニングを始めて、週3回で合計3時間のトレーニングのうち足のトレーニングに費やす時間は15分程度なのですが、なのに今はスクワットも160kgでできますからね。ウエイトの経験がない普通の方だったんですが、そこから7年続いています。女子でも腹筋がすごい方がいますよ。

木下:授業以外もがんばろうかな……。

髙田:すごく向いているんじゃないですかね。頭が良くてウクレレもできて体もすごいって(笑)。そうすれば、生徒さんにも自然とトレーニングの良さが伝わるんじゃないですか。先生のようになりたいとか、先生がこれだけの成果を上げているなら自分もやりたいなとか。

木下:これが3ヵ月前の写真、これが2ヵ月前の写真、授業を受けたらこれくらいになりますからって。トレーニングは好きでけっこうやっていたんですけど、オリンピックに出るんだとか、目標がないとなかなか難しいんですよね。逆に目標があるとめちゃくちゃがんばれるんですよ。

髙田:みんなそこなんですよね。たとえば今すごい体をつくってしまって、それを後で見てこれ以上落とせないなとか、そういった目標でもいいかもしれません。自分も一番良かったと思っている時期があって、そこに近づきたいと思っている部分もあるので。

木下:もうちょっと真剣に取り組みます。

髙田:がんばってください。木下先生はすごく強い方という印象で、スポーツに対する気持ちとか生徒さんと向き合う気持ちとか、男目線でモノを話せるようなところがありますよね。筋肉とか目標とか、今は少し気持ちが定まらない部分もあるのかなと思ったんですけど、もし定まったらさらにパワーを発揮されると思います。筋肉をつけることに関しても、すごい方になりそうですし。もちろん今でも十分にすごい方ですけど、プラスアルファそこに今回の対談の意味というか、テーマになっているウエイトトレーニングとか自己管理をさらに極めて、もっと世に広めてほしいなと思います。そういう影響力のある方だと思いますので。

木下:ウエイトトレーニングって体が変わるとすごく楽しいと思うんですけど、どうしてもしんどいとかつまらないという気持ちが先行してしまう部分もありました。最初にトレーニングをする時に、一緒にやる仲間とか先生がいい人だと楽しくて続けられるのかなと思います。ひとりでやると挫折してしまうことも多いと思うので。

髙田:慣れてきたら、意外とひとりでやるほうが集中できたりしますよ。

木下:最後の1回を上げられない時に補助が欲しいなとか、なりませんか?

髙田:でも、潰れても恥ずかしくないんですよ。まわりに人がいなかったら。

木下:あぁ、たしかに。

髙田:まわりの目を気にしなくていいんですよ。どこかが痛かったら軽くすることもできますし。その環境ごとの良さを見出してしまえばいいんじゃないですかね。ジムだったらまわりの目を意識して重いのをやって強そうな感じを示すのもいいですし、全然気にしないでフォームを極めるのもいいと思いますし。ひとりであれば、ひとりで追求する良さもあったりして。おもしろさは環境以外からも見出すことができると思うんですよね。

木下:考えたこともなかったです。たしかに、言われてみればそうですね。学生の前だと張り切って重いのばかり挙げます。

髙田:自分もクライアントさんがいるジムだと、ちょっと重いのをやっておかなきゃなと思った時期もありました。逆に突き抜けてしまうと、あの先生があの重さでやっているんだったらあの重さでいいんじゃないと思ってもらえたりもしますし。自分も経験があるんですけど、すごいなと思っている人が軽いので丁寧にやっていたりするのを見て、重いのでやっていた自分は何なんだろうと思ったことがあります。そのくらい自分に芯があれば、トレーニングだけではなく他のことも環境に影響されずにできるのかなと思うんですよ。

木下:そうですね。私もがんばります。

取材・構成・撮影/編集部

髙田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP
木下まどか(きのした・まどか)
佐賀県出身。筑波大学大学院博士後期課程修了。博士(学術)。2017 年より東京大学大学院総合文化研究科助教に着任。全日本テコンドー協会ではパラテコンドー委員会の委員として、主にパラテコンドーの普及、組織運営に従事。研究の専門は格闘技のバイオメカニクス。現在は、大学教員としてパラテコンドーの研究を進める傍ら、パラテコンドーの東京パラリンピック開催に向けた渉外活動に励んでいる。