意外とやらない首のトレーニング【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第52回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? 暖かい日が増えるとともに春の訪れを感じられるようになってきましたね。

さて、3月は卒業、4月は入学。今年は息子と娘がそれぞれ卒業・入学を控えているため、春はスーツを着る機会が多くなります。学生時代、スーツがマストではない仕事に就きたいと思っていました。理由は多々ありますが、そのうちの一つが“首太すぎ問題”。レスリングは首の強さが不可欠な競技であり、前後ブリッジ、首押し、首倒立などで毎日鍛えていたため、首が強化されてだいぶ太くなっていました。体のサイズに合わせてシャツを買うと、首のボタンを閉めることができなかったのです。無理やり閉めると“一人チョークスリーパー”状態で失神します。そんなこともあって、スーツを拒絶する体質になりました。

スーツが嫌だと言ってもある程度の年齢や立場になれば、避けられなくなります。そんななか、最近はスーツを着ても首の苦しさを感じることがなくなりました。考えてみれば筋トレはしているものの、学生時代のような首のトレーニングをすることがないので、すっかり首の太さが普通になってしまったのです。

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私に限らず、首のトレーニングはおろそかになりがちなのではないでしょうか?  その原因はいろいろ考えられます。レスリングや柔道、ラグビーなどのコンタクトスポーツは首の強さは不可欠ですが、テニスやバレーボール、卓球やバドミントンといったコンタクトのないスポーツは、首に特化したトレーニングをあまり必要としていません。首のトレーニングメニューをそもそも経験していない人も多いと思います。

また、首はコンパウンド種目では鍛えにくい箇所でもあります。たとえばベンチプレスで大胸筋を鍛えると、上腕三頭筋や三角筋も副次的に鍛えることができます。デッドリフトなら大殿筋やハムストリングスを主として、副次的に広背筋や僧帽筋などを鍛えることができます。首の場合は副次的に鍛えるのが難しいのです。それならピンポイントで鍛えようと思っても、首押しにはパートナーが必要であり、ヘッドハーネス(ヘッドストラップ)を使うにしても、ジムに備わっていない場合が多い。プレートを使ったネックエクステンションは、人に見られるとなんか恥ずかしい。さまざまな理由から、首のトレーニングを敬遠しがちになってしまいます。

首は脊髄を通って脳につながる大事な神経が多く存在する、体のなかでも極めて重要なパーツです。首の筋肉が疲弊すると、神経に負担がかかり頭痛を起こすことがあるとも聞きます。鍛えておいたほうがいい箇所なのはわかっているのですが……。

スーツを着てシャツを着て、ネクタイを締めるたびに細くなった首が気になるようになりました。気づいてしまった以上、放置し続けるわけにもいきません。ジムに人があまりいない時間を見計らって、ストレッチマットでブリッジをしたり、ベンチ台を使ってネックエクステンションをしたりして、久しぶりに首を鍛えようかなと思っております。今年の春は、借金はしていないけど首が回らなくなりそうです。

 

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。