耳の日コラム~“餃子耳”の秘密。【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第53回】

VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? 3月3日はひな祭り。同時に耳の日でもあります。「3」が耳の形に似ていることと、「み(3)み(3)」の語呂合わせから、耳の日と定められたそうです。というわけで、今回は耳の話を書いていきましょう。

レスリングや柔道、ラグビーや相撲の経験者は耳がつぶれて餃子のような形をしていることがあります。皆さんも“餃子耳”(カリフラワーイヤーとも呼ばれます)を一度くらいは見たことがあるのではないでしょうか。耳がつぶれることを業界用語では「耳がわく」と言います。耳がつぶれている人と会ったら「耳わいてますね」と言ってみてください。「コイツわかってるな」というポジティブな反応をしてくれると思います。

耳がわいています

では、なぜ耳がつぶれるのか? 競技によって多少の違いはあるかもしれませんが、レスリングの場合は、タックルを繰り返すことによって耳に衝撃が加わり、腫れて血が溜まることが原因です。“餃子耳”の正しい名称は「耳介血種」と言います。耳介とは耳の外に飛び出している部分のことで、軟骨で形成されています。ここに強い衝撃(タックルで相手にぶつかる)が加わると、出血して皮膚と耳介軟骨の間に血が溜まり、それが血種となるのです。

耳は本来柔らかい部位ですが、“餃子耳”になるとカッチカチに硬くなります。カッチカチになる前段階、耳に血が溜まっているときはブヨブヨの状態で、少しの衝撃でも激痛が走ります。寝返りをうって痛いほうの耳が下になった瞬間に、痛みで飛び起きることもあるくらいです。

基本的にこの血種が自然に吸収されることはなく、耳が腫れると病院に行って血を抜いてもらいます。血を抜いてしぼんだ状態になっても、練習をすると再び耳が腫れて血が溜まるのでまた血を抜きに行きます。これを繰り返していると、だんだんと固まって“餃子耳”が完成するのです。

私はこのセオリーには倣わず、耳に血が溜まっても一度も抜きには行きませんでした。理由は単純で、病院に行くのが面倒臭かったからです。とにかく早く固めてしまいたかったので、風呂上りには冷凍庫に直接耳を押し当てたり(電気代がかかります)、アイスノンで耳を前後から挟み込んだりして、瞬間冷却を試みておりました。このやり方がいいと言うつもりはありませんが、頻繁に病院で血を抜いていた同級生よりも固まるのが早く、ダメージも少なかったような気がします。

“餃子耳”は固まってしまえば痛くないし、耳が聞こえづらいということもありません。私の場合、中側は無傷なのでイヤホンも普通に入ります(中までつぶれている人は入りません)。唯一困るのはヘッドホンです。現在、プロレス中継の解説でヘッドホンをつけることがあります。耳がわいていることによって、ヘッドホンがしっかりハマらず斜めになってしまい、喋っているうちにズレてきてしまうのです。また、ハマっていないため長時間着用していると耳が痛くなるのも難点です。日常で感じるデメリットはこれくらいです。

ヘッドホンは苦手です

逆にメリットがあるかといえば、日常生活で耳がわいていていいことはとくにありません。強いていえば耳がわいている者同士の親近感がわくことぐらいでしょうか。プロレスや格闘技の取材をしていると、これが意外と大きなメリットになることもあります。耳がわいている者には耳がわいている者にしかわからない、「あの痛みを経験してきたんだな」という仲間意識があるのです。

以上、耳の日コラムでした。それではまた来週。

 

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。