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一緒に飲んだらいけない薬ってあるの? 【ドクター長谷のカンタン薬学 第12回】




風邪をひく、頭痛、筋肉痛、二日酔い……日常生活では何かと薬のお世話になる機会も多いもの。薬はドラッグストアやコンビニでも簡単に手に入る時代。だからこそ、使い方を間違えると大変! この連載では大手製薬会社で様々な医薬品開発、育薬などに従事してきた薬学博士の長谷昌知さんにわかりやすく、素朴な疑問を解決してもらいます。

Q.風邪をひいたとき、病院に行くと「他に飲んでいる薬はありますか?」と聞かれます。風邪薬と一緒に飲んだらいけない薬があるのでしょうか?

(C)studiolaut – stock.adobe.com

 

病院(薬局)で服用している薬を聞くというのは、患者さんの体質のことを気にしているからです。「どういう薬を飲んでいますか?」という質問は、「どういう病気がありますか?」という言葉の裏返し。アレルギーの有無や、体質を確認することで副作用を避けることが目的です。

風邪の症状といえば、咳やくしゃみ、鼻水、のどの痛みや発熱などがあります。熱を下げ、のどや関節の痛みを改善する解熱鎮痛剤、鼻水やくしゃみの症状をやわらげる抗ヒスタミン薬、咳を鎮め、痰を出しやすくする鎮咳薬など、症状に合わせた薬がありますが(いろいろな症状に効くように何種類もの薬が混ざったものを総合感冒薬と言います)、一口に解熱鎮痛剤と言っても、その中にも非ステロイド系消炎鎮痛剤(アスピリン、イブプロフェンなど)、ピリン系(アンチピリン、イソプロピルアンチピリンなど)、非ピリン系(アセトアミノフェンなど)といくつかの種類があるので、患者さんの体質やアレルギーの有無を知った上で処方する必要があるのです。

たとえば炎症をやわらげる薬の場合、卵アレルギーのある人には、塩化リゾチームを含んだ薬を処方しないようにします。菌の皮を溶かす酵素である塩化リゾチームは、卵白由来成分であり、卵アレルギーの人が服用した場合、アレルギー反応を起こす危険があります。卵アレルギーは重篤な症状が出現することもあるため、そうしたことがないように処方前に体質を確認するのです。

アンチピリンなどのピリン系は、過去に副作用を起こした経験がある人には、絶対に処方してはいけません。発疹などのアレルギーの恐れがある人には、非ピリン系の薬を処方するようにします。このように風邪薬と何かを一緒に飲むといけないというよりは、他の疾患との関連、相互作用に気をつけなければいけないということです。

また、風邪薬の場合はアルコール摂取にも注意が必要です。「体調が悪いから薬を飲んでからお酒を飲んですぐに寝よう」などと考えるのは、とても危険です。抗ヒスタミン成分が入った薬を飲んでいるときにアルコールを摂取すると、相加的に中性神経の抑制が起こるため、眠気・精神運動機能低下などの副作用が強く現れる可能性があります。作業能力や判断力が低下する可能性もあり、大きな事故を招く危険性もあるので注意してください。

春はお花見や歓迎会などお酒を飲む機会も多いかもしれませんが、風邪をひいて薬を飲んでいるときは、アルコールは控えるようにしましょう。

 

 

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長谷昌知(はせ・まさかず)
1970年8月13日、山口県出身。九州大学にて薬剤師免許を取得し、大腸菌を題材とした分子生物学的研究により博士号を取得。現在まで6社の国内外のバイオベンチャーや大手製薬企業にて種々の疾患に対する医薬品開発・育薬などに従事。2018年3月よりGセラノティックス社の代表取締役社長として新たな抗がん剤の開発に注力している。
Gセラノスティックス株式会社