体を上手に使って運動会で一等賞に【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第62回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? ゴールデンウイークも明日まで。皆さん、明日はゆっくり休んで仕事に備えてください。

さて、ゴールデンウイークが終わると運動会シーズンです。毎年、子どもたちの運動会(体育祭)を見ていると、かけっこの速い子は自然と体をうまく扱っていることがわかります。逆に運動が苦手という子は、体の使い方がうまくない。言い方をかえると、先生が体の使い方をうまく教えられないとも言えます。私はこれまでに複数の陸上に関する技術書を制作し、その中で体の使い方、走り方のポイントを学んできました。今回のコラムでは、運動会シーズンに向けて、かけっこが速くなるポイントを紹介しましょう。

まずはスタート法から。小学生に一番多い悪い例は、いわゆる“運動会スタート”です。手をグーにして力いっぱい高く構えるこのスタート法は、みんなが幼稚園で教わるもの。「位置について」で真っすぐ立ち、「よーい」で足を後ろに引いて拳を構える。そして「ドン」でスタート。これは幼稚園児がスタートのタイミングをそろえるためにマニュアル化されたもので、速く走るためのスタート法ではありません。小学校の低学年だと、これが体に染みついていて、スタートが遅い子がたくさんいます。スタートのポイントは上半身には力を入れず、前傾しながら自然に足を前に出すことです。地面を蹴るのは前足になるので(後ろ足で蹴ったら一歩遅れます)、利き足を前にして構えましょう。

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足の速さはピッチ(足の回転)とストライド(歩幅)で決まります。足を速く動かせばピッチは速くなりますが、ストライドは狭くなります。逆にストライドを出そうとすると、ピッチが落ちます。この正反対の動作をうまく合わせて自分に合ったピッチとストライドを見つけることが大事です。ちなみに日本人はピッチ型が多く、日本人初の9秒台ランナー・桐生祥秀選手はピッチ型。一方、世界記録保持者のウサイン・ボルト選手はストライド型です。

ピッチとストライドにも関係する腕の振り方も大事です。ムダに力が入ると動きが硬くなってしまうので、手をグーにして強く握るのはNG。腕は大きく振ったほうが大きな一歩が出ますが、あまり大きく振りすぎるとピッチが上がらず、かえって遅くなってしまいます。腕を振るときのポイントは、手をパーにすること。そして手のひらが後ろを向き、小指が上になるように振りましょう。このように腕を振ると肩が前に出てくるので、前への推進力が高まります。逆に拳を握ってヒジを後ろに引くようにして腕を振ると、肩が後ろに引っ張られるため、前への推進力は上がりません。

続いてはカーブの走り方です。体が膨らんでカーブは苦手という子も多いと思います。体が外に膨らまないようにすることは大事ですが、極端に体を傾けるのもよくありません。体は自然に曲がるので、直線を走るような感じで走ったほうがいいでしょう。ただし、カーブでも足の向きは必ず真っすぐになるように意識しましょう。つま先が外を向くとブレーキがかかってスピードが落ちてしまいます。

最後のポイントは目線です。子どもにありがちなのが横のお友達を意識すること。周りを見るのではなく、目線は進む方向です。頭がぶれると当然スピードは落ちます。前を見てゴールを駆け抜けましょう。

以上、簡単ではありますが、かけっこのポイントでした。私は陸上競技の経験もなく、かけっこも速いわけではありません。ただ、これらの情報は一緒に書籍を制作させてもらったオリンピック銀メダリストで100メートル元日本記録保持者の朝原宣治さんや、女子七種競技日本記録保持者の中田由紀さんから学んだ知識なので、ぜひ運動会で生かしてもらえればと思います。

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。