Wings for Life World Run-世界最大の鬼ごっこマラソン

追いつかれたら、そこがゴールのマラソン大会!?

(Suguru Saito/ Red Bull Content Pool)
滋賀県高島市で過去2回(2015、2016)開催された

マラソンや100m走など、徒競走とは、長距離と短距離とを問わず、一定の距離を走り、そのタイムを競う種目のことである。ところが、明確なゴールのない長距離走のイベントが存在する。2014年に第1回大会が開催された、“Wings for Life World Run”が、それである。

このイベントは、他には例を見ない、極めて独創的なルールに特色付けられている。とりわけ、下記3つのルールが、その独自性を際立たせている。

1.明確なゴールの不在
Wings for Life World Runの場合、明確なゴール地点が存在しない。優勝決定の瞬間、テープが切られることも、当然ない。「ある瞬間」が訪れるまで、延々と走り続けるのが、このレースである。

2.キャッチャーカー
その「ある瞬間」とは、「キャッチャーカー」と呼ばれる車に捕まることである。キャッチャーカーとは、ランナー達のスタートに遅れること30分後、時速15kmで走り始める車のことである。その後、キャッチャーカーは、一定時間の経過とともにスピードを上げる。ランナー達のスタートから1時間後に7.5km地点、1時間半後に15km、3時間9分30秒後には、フルマラソンのゴールとなる42.195km地点に到達する。更にスピードを上げるキャッチャーカーは、スタートから5時間後には、時速35kmのスピードに達する。
このイベントのゴールは、キャッチャーカーに追い越された地点となる。つまり、Wings for Life World Runとは、世界規模の長距離鬼ごっこなのである。誰が最後までキャッチャーカーに捕まえられずに走り続けるのかを競うのがこのレースであり、どれだけ長い距離を走ったかが記録となる。

(Yusuke Kashiwazaki/ Red Bull Content Pool)
多くの人が楽しみながら参加

3.世界同時スタート
大会の開催が年1回、それも、世界同時スタートという方式であることも、このレースの特色の1つである。ランナーは、世界の30を超える都市の中から、自分で参加会場を選ぶことができる。時差があるため、昼間のレースとなる会場もあれば、夜道を走ることになる会場もある。

過去2回、滋賀県高島市の今津総合運動公園をスタート地点とする日本会場が設置され2015年に渡邊裕子が、2016年に吉田香織が、それぞれマラソン選手としての実力を示し、女子世界1の座を勝ち取っている。なお、男子の世界記録は2017年大会でスウェーデンのAron Andersonが、ドバイ会場で打ち立てた92.14kmである。

このイベントは、レッドブル創設者のディートリヒ・マテシッツが設立した脊髄研究の国際非営利団体、“Wings for Life” によって運営されている。「走れない人たちのために走る」というコンセプトがあり、大会参加費の全額が同団体に寄付される。車椅子での大会参加も可能であり、これもこのイベントの特色となっている。

2017年大会は、5月7日にスタートし、既に終了。2018年大会の際、日本会場が選ばれるかどうかは未定である。だが、日本開催の復活がなくとも、世界各国の30を超える会場から好きな場所を選び、このイベントを楽しむのも良いだろう。

(Yusuke Kashiwazaki/ Red Bull Content Pool)
2016年度の日本大会で優勝した吉田香織

文/木村卓二