純文学を上梓したボディビルダー【マッチョ編集長のマッチョコラム第27回】




相川浩一という人物をご存知だろうか。日本のみならずアジア大会や世界大会でも活躍した日本のトップボディビルダーの一人で、2002年の日本クラス別選手権85㎏級では小沼敏雄に勝利。日本選手権で13連覇を成し遂げた男に勝ち、ボディビル界に新時代の幕開けをもたらした選手だ。

その相川が本を出版したという。トレーニングに関する書籍かと思いきや、意外にも純文学。小説「なついろ」を上梓し、作家デビューを果たしたのだ。

去る2017年11月12日には東京都内で出版記念パーティーを開催。トレーニングパートナーの新日本プロレス・高橋裕二郎や日本のトップボディビルダーが壇上に上がり、パーティーに華を添えた。

中央が相川。向かって左が新日本プロレス・高橋裕二郎
左より佐藤貴規、金子芳宏、髙梨圭祐、大澤直子

また、上映されたメッセージVTRにはハンドボールの宮崎大輔、相川の故郷である千葉県船橋市の松戸徹市長、筋肉芸人のなかやまきんに君らが出演。その交友関係の広さが伺えた。

ボディビルは世間ではなかなか理解されづらい競技。そのため、ボディビルダーはおたがいに分かり合えるボディビルダー同士のみでのコミュニティを形成しがち。しかし、相川は消防士、歯科技工士としてのキャリアを持ち、またトレーナーとしても高校野球、ラグビー、柔道など幅広く指導。“ボディビル”の外の世界とも積極的に交流している。そして、さらには小説をも執筆。新たな一面を世に向けて発信した。

「タフでなければ生きられない、優しくなければ生きていく資格がない」

そんな立派な大人になる少し前の人々の肖像を通じ、ありふれた人間模様にもう一度、信頼の価値と人と人との距離感を問う作品。

「なついろ」は、ボディビルダーが書いた繊細な青春小説。その印税の一部は、一般社団法人日本筋ジストロフィー協会に研究費用として寄附される。