ストレッチしたほうがいい箇所と呼吸法ってあるんですか?




誰もがおそらくやったことであるであろう、ストレッチ。体を伸ばすこと……と、みんな理解はしているだろうが、実はもっと奥が深いもの。この連載企画では、そんなストレッチのエキスパートである長畑芳仁先生に、ストレッチの奥深さを話してもらう。今回は、ストレッチしたほうがいい箇所と呼吸法について。

A.股関節、肩甲骨、胸郭、肩を自然な呼吸で行えばOKです。

ストレッチで特によくほぐしたほうがいい個所は、股関節と肩甲骨周り、胸郭、肩周りです。肩甲骨が動いても胸郭が動かなければ、上体の動きは制限されます。また骨盤の動きと体幹は連動しています。本来の可動域を発揮して、体をスムーズに動かすためには股関節の動き、肩甲骨の動きと胸郭の動き、肩の可動性はとても重要です。

呼吸に関しては、昔からよく「息を止めてはいけない」と言われますが、それは「息を止めるほどがんばって伸ばすな」ということだと思います。基本的には、ストレッチは自然な呼吸で行ってかまいません。そこにルールを設けなくてもいいでしょう。

ただ、ストレッチの種類によっては、うまく呼吸を活用しながらよりパーツを伸ばしていくこともあります。静的ストレッチでゆっくりと伸ばしたいときは、吐く呼吸に合わせて伸ばしていったほうがいいでしょう。また、吐く呼吸は副交感神経を刺激するので、よりリラックスモードに入ることができます。

しかし、ジム通いを日課にしている人のなかには、忙しくてトレーニング時間がなかなか取れず、どうしてもストレッチを省きがちになってしまう方もいるかと思います。トレーニングを削ってまで、ストレッチに時間を割く必要はありません。時間がないのなら、自宅に帰って、入浴後に行えばいいのです。

多くのスポーツの現場でも、練習後すぐにストレッチができるような環境がないのが実情です。練習後は、ストレッチよりも栄養成分のタイミングのほうが重要です。「そのタイミングでストレッチをやらなきゃ」と考えるから、難しくなるのです。

1日のどこかのタイミングで体をリセットできればいいのです。その日ジムでストレッチができなかったのなら、自宅でお風呂に入ったあとか、もしくは翌日のトレーニング前とか。時間に制約があるのなら、トレーニング前に5分、入浴後に10分から15分。難しく考えず、「体の歯磨き」だと思って行なってください。

※本記事は、2017年に公開した記事を再構成したものとなります

撮影/長谷川拓司

長畑芳仁(ながはた・よしひと)
1960年、大阪府出身。 特定非営利活動法人日本ストレッチング協会理事長。日本体育協会認定アスレティックトレーナー。 帝京大学講師。早稲田大学教育学部卒業、順天堂大学大学院体力学専攻修了。 2001年「すとれっち塾戸田公園店」開設。専門分野はアスレティックトレーニング、スポーツ科学、アスレティックリハビリテーション。リコーラグビー部など、多数の社会人・大学チームのストレングスコーチ、および日本代表ボートチームのフィジカルサポートなどを務める。「ストレッチまるわかり大事典」(ベースボール・マガジン社)「アクティブBODYストレッチ」(日東書院)など著書多数。
日本ストレッチング協会HP