東大がスポーツに本気になった! 独自マシンが並ぶ 「QOMジム」オープン




東京大学! 日本でもっとも賢い人たちが集まる場所、それが東京大学! めちゃくちゃ勉強して、ちゃんと入試に合格しないと足を踏み入れことができないその場所に、なんとトレーニングジムがオープンしたという。脳トレではない。スポーツとかフィットネスとか、そっちのほうのジムである。

こんなところにジムが?

2016年5月、東京大学は「スポーツ先端科学研究拠点」なるものを設置。これは東大全学から15もの研究科や研究所が参加して、スポーツ・健康科学の研究成果を学生の教育や社会に還元することを目的としている組織。平たくいえば、東大が本気なってスポーツについて研究して、その結果を世間のみんなで活用していきましょうという機関だ。

中央が「筋肉博士」石井直方教授

そして、スポーツ先端科学研究拠点の拠点長を務めるのが、我らが「筋肉博士」石井直方教授。この春、当機関の社会還元シリーズ第一弾として、駒場キャンパスにQOMジムがオープン。東大が開発したオリジナルマシンを利用できるスポーツ施設が開設された。

QOMとは“Quality of Motion”の略。なんだか言葉の響きからして難しい感じがするが、かんたんにいえば「スポーツや日常生活における身のこなしや動作の質」という意味。「立ち上がる」「歩く」「姿勢を維持する」「置く」「引く」など、日常的な動作のなかにも 「質」というものがある。たとえば、ジム通いを日課にした高齢者が、以前よりもスムーズに歩けるようになった。これは「歩く」という動作の質が向上したと考えていいだろう。

また、スポーツ動作の大要素は「筋力&パワー」「筋持久力」「動作の質」。動作の質を上げることはスポーツのパフォーマンス能力アップにも直結する。つまりQOMジムは、「高齢者向け」「アスリート向け」などと対象者を区別しない、高齢者の健康づくりにも、同時に高い目的を持つトップアスリートの能力向上にも貢献できる、ありそうでなかったジムなのだ。

東京大学名誉教授・小林寛道先生は、1991年に時のトップスプリンター、カール・ルイスの動作を解析。その走り方を再現するために開発されたマシンが、QOMジムマシンの初号機だという。実際に小林先生は東大陸上部の練習にそのマシンを導入。選手たちのスプリント能力は飛躍的に向上し、100mを10秒台で走る選手が4人も誕生したという。

マシン開発者の東京大学名誉教授・小林寛道先生

施設内には、初号機よりアップデートを繰り返し、バージョンアップしたマシンが約20台。石井教授いわく、その特徴は「なかなか動かせない」ことにあるという。たとえば、これ。

一見すると普通のトレーニングマシンのように見えるが…

一見、フィットネスクラブによく置かれているランニングマシンに似ているが、実際に乗ってみると……。

なんとも野性的な動き!

なんじゃ、この動きは! 骨盤と肩甲骨を柔らかく動かして、さらには膝と腰を高く上げて、大きく腰を回して膝を下ろす。この動物的な動作ができないと、マシンは動かせない。逆に言えば、マシンを操れるようになる、イコール動物的なしなやかな動きができるようになったということ。ランニングの着地などに使うインナーマッスルが鍛えられ、“動作の質”が向上するというわけだ。

さらにはこれ!

車軸移動式のパワーバイク

ペダルの回転が楕円軌道を描くパワーバイク。「片足立ち姿勢」の基礎バランスが養え、漕ぐ動作を行うことで左右の移動能力が高められる。慣れないうちはバイクにまたがって立つ姿勢を維持するのも難しいとか。

このバイクにまたがって立つ姿勢は、声楽の発声の姿勢そのものでもある。今回モデルをつとめた東京大学大学院総合文化研究科長・小川桂一郎教授は、このマシンでのトレーニングを始めたところ、日常生活の姿勢や歩き方が変わるだけではなく、声の出し方もよくなったという。

ほかにも、肩や背中の筋肉をゆっくりとストレッチできる船漕ぎのような動作のマシン……。

船漕ぎのような動作のマシン

寝たままの状態でお尻、太ももの裏の筋肉を鍛えるマシンなどなど、

寝たまま脚などを鍛えられる

ここでしか見ることができない珍しいマシンが並ぶQOMジム。東大生、東大職員だけでなく一般の方も利用可能! 東大が本気になって開発したマシンを体験してみよう。

取材・文/藤本かずまさ

【関連リンク】
東京大学駒場キャンパスQOMジム公式ホームページ

QOMジムの利用方法
1.利用資格
利用資格は、次のように分類されています。①一般学外利用者(主として成人・高齢者 90歳代の人も可能)
②東京大学教職員(非常勤教職員、臨時職員を含む)
③東京大学学生(大学、大学院生、研究生を含む)
④学外学生(大学、大学院生等)2.利用料金(QOMジムは、チケット制ですべての利用者が有料です)
入場時に、チケット販売機でチケットを購入していただきます。(金額は税込み)。①一般学外利用者券:1回券2700円、4回券10,000円
②一般割引利用券: 1回券2,200円、4回券8,000円(東大駒場友の会会員割引)
(学外者も登録によって東大駒場友の会の会員になることができます)
③東京大学教職員券:1回券1,300円、4回券5,000円
④東京大学学生:1回券300円、11回券3,000円
⑤学外学生:1回券500円、11回券5,000円3.利用時間帯月~金 9:00~14:00, 16:00~21:00
土・日 9:00~13:00, 14:00~18:00

一般の優先利用時間帯は、9:00~12:00、および19:00~21:00
学生の優先利用時間帯は、16:00~19:00
教職員の優先利用時間帯は、12:00~14:00
(混雑時には、優先時間帯の利用者を優先します。なお、お車の利用はご遠慮ください)

4.利用の手続き

予約申し込み
(ネットで予約することができます。予約なしでも利用できますが、混雑する場合には、予約者を優先いたします)

電話での予約先 03-5465- 7281
メールでの申し込み QOMkomaba@grupo.jp
Webからの申し込み https://qomkomaba.grupo.jp