「それは『体の動かし方』を学ぶエクササイズ」【ピラティスの基本を知る<前編>】

「ピラティス」。その言葉は耳にしたことがあっても、どのようなエクササイズなのか、把握できていない人も多いのではなかろうか。ヨガとは何は違うのか、どんな効果があるか。ピラティスの基本をFTP Basic マットピラティスマスタートレーナーの柳本真珠子さんに伺った。


――「ピラティス」は、どのような経緯で誕生したのでしょうか。その歴史的な背景を教えていただけますか。

「ピラティスとは、ジョセフ・ヒューバタス・ピラティスさんというドイツ人が考案したものです。第一次世界大戦中、ピラティスさんは負傷した兵士達を再び戦場に戻せるようにリハビリテーションを行いました。そのオリジナルエクササイズ法がピラティスの始まりです」

――日本のフィットネス業界で聞かれるようになったのは十数年前からですが、長い歴史があるのですね。

「はい、そうですね」

――ピラティスは「コアトレ」ですか?

「はい、ピラティスはインナーマッスルと言われる体の奥にある筋肉をコントロールして使うエクササイズです。要となっているのは、骨盤、ナチュラルなS字カーブを描いた脊柱です。その骨盤・脊柱を本来の正しいポジションにセットし、自分自身が一番機能的に動ける方法を学びます。体には『安定させたい部位』と『動かしたい部位』があるのですが、それぞれ、安定させたいところは動かさないように安定筋群を起動させ、動かしたい部分は内側から意識的に効率よく筋肉を使います」

――よく混同されるヨガとは、まったく異なるものなのですか。

「はい、異なります。ピラティスは『ポーズ』ではなく、そこに到達するまでの『体の動かし方』を学ぶエクササイズです。『インナーマッスルの筋トレ』とも言えるかもしれません。体幹部分を一つの箱に例えるなら、上面が『横隔膜』、側面は『腹横筋』(腹部の一番奥の筋肉)、底面は『骨盤底筋群』、箱がつぶれないようにするための補強材は背骨周りにある『多裂筋』というイメージです。すべてが協力しあって一つの箱を強く安定させるのです。体にも同じことが言えます。まずは『コアの筋群』と言われるそれらの筋肉のスイッチを入れる練習です」

――スイッチを入れる?

「はい、スイッチを入れるためにはまず、骨盤、脊柱を正しい位置にセットします。ピラティスの深い呼吸法で『横隔膜』『骨盤底筋群』がしっかり動き始めます。お腹をへこませると『腹横筋』、背骨を上に引き上げると『多裂筋』のスイッチが入ります。体の中心部分が発電所のように温かく感じるでしょう。その次の段階では、肩関節・股関節の小さな動きから練習していきます。体の中心部をしっかりと安定させることで体全体がチームとなって楽に動かせるようになります」


――ピラティスは体を動かしやすい状態に整えていくものと考えてよいのですか?

「はい、その通りです。骨盤、脊柱の正しい位置を覚え、そしてコアのスイッチを入れて、体を動かす練習をします。そうすることで、軸をしっかり安定させた状態での体の動かし方を習得できるのです。
人は、生活習慣による癖、または疲労・メンタルなどの影響で姿勢バランスを崩しやすい生き物です。修正しようとしても、ご自分ではその方法がわからない方がほとんどだと思います。崩れた姿勢のままでバランスをとろうとすれば別の部位にも負担がかかってしまいます。姿勢を整えリセットすることを学び繰り返すことで、日常的にその正しい姿勢を保とうとする筋肉が働くようになりです。それは、その人にとってはこれまで意識して使ったことがなかった筋肉かもしれません。ピラティスレッスンでは、このようにご自身の体の使い方を再教育していきます」

――ピラティスで体は変わりますか?

「はい、変わります。全身の関節には、それぞれに適切なポジションというものがあるのですが、例えばトラブルを起こしやすい部位の一つに肩関節があります。
肩凝りの人、猫背、頭が前に出ている人、肩甲骨が動かない人など、色々な生徒さんがいらっしゃいますが、みなさん体が変わり楽になるのを実感されています。故障がなくなるだけでなく、デコルテラインや後姿は美しく、動かしやすい体へと変わられます。
肩関節は構造上疲れやすい部分ですので姿勢も崩れやすいです。適切な骨の位置にセットするために、エクササイズの前にその周辺の部位をほぐす筋膜のリリースのようなことから始めることもあります。そして、ローテーターカフと呼ばれる肩のインナーマッスルを使うエクササイズも行います。負荷の小さな、誰にでもできるエクササイズです。安定させることと柔軟に動かすことのバランスを学びます。プッシュアップのような大きな動きはその後です。
このように肩関節だけでなく、すべての部位において内側からの意識とコントロールを練習し新習慣をつくっていきます。自然とトラブルが減っていきますよ」

――ただ、「筋トレ」というと、ムキムキになるようなイメージがあります。

「ボディビルのように大きな筋肉を育てたい方は、内側の筋肉だけでなく外側の筋肉に特化したトレーニングをされていらっしゃいます。ピラティスでは、インナーマッスルといわれるこれまでお話しさせていただいた内側の部分を意識して鍛えます。その部分は体積が大きくはならないため、ムキムキにはなりません」

聞き手/藤本かずまさ

柳本真珠子
FTP Basic マットピラティスマスタートレーナー。
4歳から18歳まで小林紀子バレエアカデミーで学び、結婚後ウォーキング講師である母の影響を受けウォーキングマナー資格取得。
3人の子ども達の育児中ピラティスに出逢い資格を取得。
以来、ウォーキング、ピラティス、バーワークスの指導、人材育成にあたる。
FTPJAPAN公式HP http://www.ftpjapan.net/