沈みゆく南太平洋の楽園、ツバルのスポーツ事情 その1

ツバルという国の名は聞いたことがある人は多いと思う。南太平洋のど真ん中にあるいくつかの環礁(サークル状のサンゴ礁)からなる島国で、地球温暖化による海水面上昇により地球上から消えてしまうのではないかと心配されている総人口1万人弱の小さな国だ。首都とされるフナフチ島は面積わずか2.4㎢の環礁で、その幅は狭いところではたった20メートルしかない。ここに国の人口の半分ほどの5000人弱が住んでおり、400mと一番幅の広いところにこの国唯一の飛行場がある。ここから週2便のフィジーへのフライトが外界との唯一といっていい窓口となっている。今回は、地球上に残された数少ない楽園であるこの国のスポーツ事情をお伝えしたい。

「巨人の国」の深刻な悩み、メタボ

太平洋最後の楽園、ツバル

広大な太平洋文化圏にあって、ツバルは、トンガやサモア、ハワイ、そしてフライトのあるフィジーと同じポリネシア文化圏に属する。トンガと言えばラグビーの強豪として、ハワイはかつての相撲取りの出身地として、そしてサモアは、野球のオールドファンにはかつて日本ハムファイターズでホームランを打ちまくった“サモアの怪人”ソレイタ(ただし彼は独立国の方ではなく、アメリカ領サモアの出身だが)として、スポーツファンにはなじみがあるだろう。我々が抱くポリネシア人のイメージは恰幅のいい大男のそれだ。実際、ツバルでも痩せた人は少数派で、多くの人は、おおらかな気風の下、よく笑いそしてよく食べ、のんびりとした生活を送っている。

しかし、肥満が万病の敵であることは万国共通である。見上げればヤシの実やパンノキがあり、目の前には海の幸、そして祝い事の度に遠い先祖が持ち込んでくれた豚を締めて丸焼きにし、あとはのんびり日々を送るというライフスタイルを送るこの地の人々はもともとポッチャリ体型をしていたのだが、文明の波が押し寄せるにつれ、さらなる「富栄養化」が進んでいる。

シーフード中心の生活は、オーストラリアから持ち込まれる大量の肉類によってすっかり変わってしまった。酒と言えば、ヤシのジュースを発酵させたヤシ酒だったのが、今ではビールの缶が島のあちこちに転がっている。スーパーに行けば、冷凍された肉類と箱詰めのビールとともに、大量のアイスクリームを目にすることができる。そして、彼らが乾いたのどをいやすのは、大量の砂糖を使用した粉末から作るジュースだ。

スーパーには高カロリーの輸入品が並んでいる

おまけに島民の足はバイクが中心。狭い島で、今では数十メートル先に行くにもバイクを使う。環礁の端から端までジョギングでも行ける距離だが、それをする人を見かけることはない。ツバルに限ったことではないが、現在、太平洋諸国では生活習慣病が深刻な問題になっている。

国民の運動場、フナフチ飛行

そんな現状を知ってか知らずか、ツバルでは、若者を中心にスポーツはけっこう盛んだ。とはいえ、狭い国土。屋外スポーツ施設を作るスペースは限られている。フナフチ島は正確に言うと、サークル上にならんだ小島の集まりである。30数個のその島々のほとんどは無人島で、人口のあらかたは一番大きなフォンガファレという島に住んでいるのだが、この島の幅の広いところはほとんど滑走路になっている。週2回しか使うことのないこの滑走路、夜になると、屋内では暑苦しくて眠れないという人々が枕片手に横になりに来るというのだが、毎日夕方になると、スポーツを楽しむ若者でにぎわう。人々は、日が傾くことになると、潮風の流れる滑走路に集まり、どこから持ってきたのか、コンクリートやタイヤの重りのついたバレーボールネットやサッカーボール、ラグビーボールを手に好みのスポーツを楽しんでいる。今後、このようなスポーツが、この国の国民の健康を保つのに重要度を増すのは言うまでもない。(つづく)

夕暮れ時には広大な運動場となる空港の滑走路

取材&文&撮影・阿佐智