【My Training Life】 Vol.05 南雲美希(外資系金融機関勤務)

アスリートから一般のトレーニーまで、それぞれのトレーニングとの向き合い方を紹介する連載「My Training Life」。今回は登場して頂くのは、以前本サイトで「キャリアウーマンのスパルタンレース体験記」でご登場頂いたキャリアウーマンの南雲美希さん。信じがたいほど活動的な南雲さんのトレーニングライフに迫る。

南雲美希さんはエネルギーに満ち溢れた人だ。ウエイトトレーニング、フルマラソン、ボクシング、水泳などのスポーツはもちろん、剣道、居合道、日本舞踊などの伝統芸能も嗜み、さらにはスキューバダイビング、クルーザー、飛行機、大型バイクのライセンスももつ南雲さんの精力的な活動領域は、数えだせばきりがないほど多岐にわたる。

普段は外資系保険会社の営業所長として毎年社内表彰を受けるほどの成績を上げ、世界を飛び回っている。仕事をバリバリやるだけでなく、飛行機のライセンスを取るためにアメリカやフィリピンのスクールに通ったり、スキューバダイビングのプロライセンスを取得するためフィリピンに長期滞在したりすることもある。趣味と仕事を両立させるためには、ものすごいバイタリティが必要だ。

「いろいろなことに時間を費やしていても、仕事はしっかりやる。それを会社にも示さないといけないので、普通の営業マンが365日かけて達成することを自分は半分以下の150日で達成しようと工夫して取り組んでいます。会社の人たちもそこは認めてくれていると思います。結局自分の人生に妥協したくないんです」

自分の人生だから自分に納得できる生き方をしたい。世の中には不可能なんてない。南雲さんはチャレンジすることで、身をもってそれを実感できるような人生を過ごしてきた。

彼女のスポーツ歴は小学生時代が陸上競技のハードルで、中学生時代は剣道。どちらも瞬発力と短時間の集中力が大事な競技であり、運動には瞬発力さえあればいいと考えていた。そんな考え方に劇的変化が訪れたのはわずか5年前のこと。友人に誘われるがままに「冗談」で参加した皇居ランで、思わぬ挫折感を味わった。

「皇居は一周5kmですが、初めて走った時は2km地点で限界になってしまって、一周どころか半分も走り切ることができませんでした。そのとき、スポーツは瞬発力だけではできないこともあると初めて気づいたんです」

皇居ランはわずか半周でリタイヤ。できないことをできないままに終わらせないのが南雲さんの真骨頂だ。5km走ることができなかったのにもかかわらず、フルマラソンを目標に掲げ、一気に走り始めた。周囲から「絶対無理」「やめておいた方がいい」とネガティブな言葉をかけられても、自分に妥協しないのが彼女の生き方。目標達成に向けて努力する日々が続いた。

「もともと長距離は苦手だったんですけど、フルマラソンに参加すると決めてエントリーしました。とにかく持久力を鍛えるために、ボクシング・ジムでスパーリングをしたり、体のバランスを整えるために体幹を鍛えました。あとはジムで70㎏くらいの負荷を掛けてレッグプレスをしたりしました」

 

エントリーしたのが2015年6月で、本番が10月。4か月で心も体もできる限り最大限に仕上げて本番へ。途中で何度か立ち止まってしまうこともあったが、なんとか完走。不可能なんてないことを、身をもって味わうと、その後もフルマラソンを次々と完走。ついには国内を飛び出してホノルルマラソンにも挑戦した。チャレンジ精神旺盛な南雲さんは、しだいにマラソンだけでは満足できないようになり、「もっと極限状態まで自分を追い込みたい」という欲求が芽生え始めた。そして参加したのが『万里の長城マラソン』だった。

『万里の長城マラソン』は、その名の通り、中国にある万里の長城に設置されたコースを走るマラソン大会。5km、10km、ハーフマラソン、フルマラソンと4種目が設置されていて、南雲さんが選んだ種目は一番厳しいフルマラソンだった。

「最大傾斜が約60度ある階段や坂道が42.195kmひたすら続くんです。なので走ることはほとんどできませんし、石の階段を、両手を使って登らないと進めないんです」

箱根駅伝の5区山登りよりも過酷なコースを42.195km。自分に妥協することなく、10時間40分かけて完走した。朝7時30分にスタートしたレースだが、ゴールしたのは夕方の18時過ぎ。辺りはすでに暗くなり始めていた。

「間違いなく人生で一番きつい経験でした。コースにはいくつか関所が用意されているんですが、最後の関所を通ってしまったので、ゴールする以外の選択肢がなくなってしまい、必死に目指しました。完走したことで、多分これから先、どれほど辛いレースがあっても乗り越えられるという自信がつきました。トレーニングもそうですが、仕事でもくじけそうな時は、『万里の長城マラソン』を思い出して、『あれだけきつかったんだから何でも耐えられる』と言いながら、モチベーションにしています」

仕事でフル回転しつつ、これだけ過酷なレースにもチャレンジする。他にも三代目花柳寿楽師のもとで日本舞踊の稽古に励み、中学から始めた剣道の延長で神影流宗家より居合道も嗜む。自分でも「何をしているのか時々分からなくなる」と冗談交じりに言うほど、他分野にわたって精力的な活動をしている。そのエネルギーの源が、前述した「自分の人生に妥協したくない」ということだ。

「自分の人生に妥協をしたくないから、そのためには仕事にレースにトレーニング、それ以外の活動も全部真剣にやって自分を追い込みたいんです。極限状態まで自分を追い込むのが好きなんです。だからボクササイズではなくボクシング、普通のマラソンよりももっと過酷なレースが好きなんです」

南雲さんのこれからの目標は一般人女性でも、一人で過酷なレースに参加して完走できることを証明することだ。

「女性だから厳しいとか、一般人だから無理だとか、そういうことがないんだということを証明したいです。トレーニングはあくまでそのための手段。目的は世界のレースに出走、完走して、他では味わうことのできない達成感を味わうことです。あと美しいボディラインを手に入れることも(笑)。なんでもできると思っています。不可能なことなんてないです!」

南雲さんは自信に満ちた目でそう言い切った。これからも自分の限界、不可能の壁と格闘し続ける。キラキラした笑顔で目標を達成し、不可能なんてないことを証明し続けるだろう。

取材・文・撮影/須崎竜太