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和やかなるチャンピオン【マッチョ編集長のマッチョコラム 第4回】

日本選手権という国内のナンバーワンを決するステージで、7連覇を達成している男がいる。ボディビル界の絶対王者、鈴木雅選手だ。「7連覇」という記録は現在進行形のものであり、本人が自身の進路に対してなんらかの決断を下さない限り、今後もその数字は更新され続けていくだろう。

昨年はアーノルド・シュワルツェネッガーが主催する大会「アーノルドクラシック」アマチュア選手権、国際ボディビル・フィットネス連盟主催の世界選手権と、二つの世界大会で優勝。過去の日本人ボディビルダーが誰も成してない快挙を達成した。

出場した階級は、西洋人と比較すると決して骨格が大きいとはいえない日本人にとってはかなり重たいクラスである80kg級。日本人選手がこの階級を制したのは、もちろんこれが初めて。他の競技にたとえると、日本人ボクサーが外国人ボクサーをKOしてライトヘビー級のチャンピオンになったようなものだ。次々と金字塔を打ち建て続けている鈴木選手は、日本のボディビル界において、頭三つほど抜きん出た存在となっている。

JOCに加盟はしているのだけれど、「ボディビル」は野球やサッカー、柔道、剣道などとは違い、学校教育の外側の世界で育まれてきた特殊な競技。体育の授業でボディビルはおろか、ウエイトトレーニングを教わることなんて、まずない。ボディビルは街のジムのなかで進化・発展してきたスポーツだ。

だからというわけではないのだろうが、他競技と比べると、先輩・後輩という概念が希薄。さらには個人競技であるため、必死になって取り組めば取り組むほど「一人の世界」に陥りやすい。それは当然、協調性を欠く、という結果を招くことになる。コンテストが近くなると、「話しかけるなオーラ」をまき散らしながらジム内を闊歩する人も少なくはない。

しかし、そういった世界の頂点に立つ鈴木選手は、つねににこやか。世界大会を目前に控えた時期も、「話しかけるなオーラ」を一切発することがない。

王者がオラオラしていたら、周囲の人たちから「ボディビルは、そんなスポーツ」というレッテルを貼られてしまう。勝ち続けていけば、それに伴って背負うべき義務や責任も増えていく。偏見を抱かれがちな競技であるからこそ、チャンピオンが果たすべき役割は大きい。トレーニング理論、トレーニング方法だけでなく、ボディビルを志す者にとって、すべてにおいての模範となる存在がここにある。鈴木選手の人懐っこい笑顔は、王者としての責任感のあらわれかもしれない。