マルチミネラルとの併用で効果的に
一昔前、1日のうち1食をプロテインに置き換えるダイエットが話題になったことがありました。タンパク質だけを摂っても、当然ながら人間に必要な栄養をすべてまかなうことはできませんが、市販のプロテインにはタンパク質以外の栄養素も含まれているのが普通です。それでどのくらいの栄養を摂ることができるのか、調べてみました。
まず、1食に必要な栄養とは、どのようなものでしょうか? 厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取栄養基準」の最新版(2105年版)で調べてみました。
この資料は1日に必要なエネルギー量(成人男性で2300~3150kcal、成人女性で1650~2700kcal)を基準に、タンパク質・脂質・炭水化物という三大栄養素の摂取基準を定めています。脂質は摂取カロリーの20~30%、炭水化物は50~65%が目標量とされています。ただ、プロテインを食事に置き換えようと考える人は、おそらくダイエットをしようとしていると考えられるので、摂取カロリーや脂質・炭水化物は抑えたいはず。そういう意味で、三大栄養素のうちのタンパク質以外の2つは考慮しないことにします。
ちなみに、タンパク質の1日の摂取目標量は男性・女性とともに50~65gなので、1食分は約20gとして計算します。
三大栄養素以外ではビタミンとミネラルの摂取基準が定められています。その中でも「必要量」が規定されているものと「目安量」と記されているものがあるので、「必要量」とされているものを1食に必要な栄養として考え、1食に必要な量(1日の必要量を3等分)を計算してみました。
・ビタミンA 約200μg
・ビタミンB1 約4mg
・ビタミンB2 約4.5mg
・ビタミンB6 約4mg
・ビタミンB12 約0.7μg
・ビタミンC 約30mg
・ナイアシン 約4.3mg
・葉酸 約70μg
そのほかにもビタミンDやビタミンE、ビタミンKなども摂取の目安量は規定されていますが、これは残りの2回の食事で摂ることにします。
続いてミネラル。こちらも「必要量」として定められているものに絞って1食に必要な量を計算しました。
・カルシウム 約200mg
・マグネシウム 約100mg
・鉄分 約2.0mg
・亜鉛 約2.8mg
・銅 約0.25mg
・ヨウ素 約30μg
・セレン 約7μg
・モリブデン 約7μg
次にプロテインですが、「五大栄養素が配合された食事代替プロテイン」という謳い文句の「パーフェクト・スムージー・プロテイン」(販売元=ボディフィット)という商品があります。その栄養素を確認してみましょう。
メーカー側が推奨しているのは1食分として約80g(付属スプーンで5杯)を摂取するというもの。その量でのカロリーは300.8kcalでタンパク質の摂取量は38.2gということですから、タンパク質の量としては十分ですね。ちなみに脂質は2.9g、炭水化物は30.5g含まれています。
それ以外の栄養素を下記にまとめてみました。
ビタミンA 770.00μg
ビタミンB1 1.20mg
ビタミンB2 1.40mg
ビタミンB6 1.30mg
ビタミンB12 2.40μg
ビタミンC 100.00mg
ナイアシン 13.00mg
葉酸 240.00μg
ビタミンD 5.50μg
ビタミンE 6.30mg
【ミネラル】
カルシウム 195.00mg
マグネシウム 38.50mg
鉄 0.90mg
亜鉛 1.10mg
銅 0.13㎎
【その他】
食塩相当量 0.6g
カリウム 336.01mg
パントテン酸 4.80mg
パラチノース(R) 17.2g
HMBCa 1,500mg
イヌリン 1,000mg
MCT 1,000mg
DHA+EPA 100mg
ダイジェザイム(R) 50mg
ラクリス(R)菌 50mg
さすがに含有されるビタミンの種類は豊富ですが、前述の1食の必要量と比較すると、ビタミンB1、B2、B6の量が足りないようです。ビタミンB群のサプリメントは種類も豊富ですから、そういったものを合わせて摂るのが良さそうです。
ミネラルも多くの種類が含まれています。ただ、カルシウムについては必要量にかなり近い数値ですが、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅は必要量に達していません。これらのミネラルを個別のサプリメントで補うのはなかなか難しいので、マルチミネラル的なものを合わせて摂るのが良さそうです。
「食事代替プロテイン」を謳っている商品でも1食で必要な栄養素を全て摂るのはなかなか難しいようですね。もちろん、サプリメントや残り2回の食事でこれらの栄養素を補うことは可能ですが、健康を考えるとあまりお勧めできる方法ではありません。
サプリメントや栄養の専門家が「サプリメントはあくまでも補助として考えるべきで、基本的な栄養は食事で摂取するべき」と言うことの意味が理解できた気がします。プロテインで1食を補うのは、食事を摂る時間がない時などに限定したほうが良さそうです。
ただ、食事でもこれら全ての栄養素をきちんと摂ろうとすると、かなりバランスを考慮してメニューを考える必要があります。「バランスの良い食事が大切」「できるだけ多くの種類の食品を摂るのが良い」と言われるのは、そういう理由からでしょう。
食事で十分な栄養を摂れていないと感じる場合は、豊富な種類がリリースされているプロテインやサプリメントを有効活用するといいですね。
文/増谷茂樹