正しく走れるのは「自転車に乗れるようになった」ような感じ
私は自分がマラソンランナーだったこともあり、現役を退いた後も主にトップアスリートのコーチをしてきました。今のように市民ランナーのコーチをするようになったのは2002年からのことです。道行く市民ランナーを見ていると、正しいフォームで走れている人があまりにも少なく、「これはツラいだろうな」と思ったのがきっかけです。
それまでは、アスリートを指導していたので、正しいフォームで走れていることは当たり前で、“正しい走り方”はみんな知っているものだと思っていました。しかし、自分で思っていた以上に多くの人が正しい走り方を知らないということに気付いた。トップアスリートを指導することも大切ですが、より多くの人にちゃんとした走り方を教えることが必要なのではないかと考え、市民ランナー向けのセミナーを開いたり、本を出したりするようになりました。
これまでに多くのランナーをコーチしてきましたが、正しい走り方ができるようになると「自転車に乗れるようになったみたい」と言う人もいました。走るという運動は誰でもできるものですが、きちんとした効率のいい走り方ができるようになると、それまでの自己流の走り方とは自転車に乗れるようになる前と後のような違いがあると感じるようです。
私はこれまでに50冊近い本を出してきました。その中でも『金哲彦のランニング・メソッド』という本は20万部以上売れました。それだけ“走り方”を知りたいと思っている人が多いということなのでしょう。自分では「走れている」と思っていても、実は正しく走れていない人も多いのです。
私の言う“正しい走り方”とは、簡単に言えば「体幹で走る」ということです。詳しくは追々解説しますが、それができるようになるとケガをしにくくなりますし、楽に長距離を走れるようになります。もちろん、タイムの伸びも違いますので走ることがより楽しくなってくる。この連載では、そうした走り方をお伝えしたいと思います。
金哲彦(きん・てつひこ)
プロランニングコーチ、駅伝・マラソン、陸上競技解説者、ランナー。福岡県北九州市門司区出身。早稲田大学教育学部卒業。在学中競走部に属し、中村清監督の下、箱根駅伝で活躍。卒業後はリクルートに入社し、陸上競技部を創設。1987年には別府大分毎日マラソンで3位に入る。1995年より同部監督に就任。同部の消滅後は、陸上のクラブチーム・ニッポンランナーズを創設する。現在は、テレビのマラソン・駅伝中継の解説も務める。
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