よいパフォーマンスを引き出すために【スペシャリストに訊く・宮澤資長④】

スポーツ選手の不調は構造機能の異常がほとんど

Q.不調や痛みを抱えたスポーツ選手を診るとしたら?

スポーツ選手やアスリートの不調や痛みの原因には主に3つあります。それは「単純なケガ」「病気」そして「構造や機能の異常」です。

単純なケガとは1回の外力で起こる「骨折・捻挫・脱臼・打撲・挫傷」といったケガで原因がハッキリしたものです。これに対してはRICE(※)が基本ですよね。そして病気が原因なものは、ときに薬や手術が必要ですが、じつはアスリートでいえばケガもわずかですし、病気が原因なのはさらに少ないんです。じつはスポーツ選手やアスリートの不調は構造機能の異常がほとんどなんです。特に3カ月以上続く痛みなどは、まず構造や機能の異常です。わかりやすくいえば、普通、擦り傷だって3カ月以上続くものはないですよね。単純なケガの一種である捻挫もそうじゃないですか。

ではなぜ3カ月以上不調や痛みを抱えているか、また年に何回も同じようなケガを繰り返すかといったら、構造や機能に問題があるということなんです。根本的には構造である姿勢に問題があったり、身体バランスの異常であったり、関節や筋肉がうまく機能していないことが原因。原理原則からすれば最初に構造を治す。そしたら機能が回復する。それが健康に繋がるわけです。そして健康になれば自分自身が痛みを解決してくれます。すなわち自然治癒力です。

しかし自然治癒力を引き出すとは言っても、もちろん自然治癒力だけに任せることはしません。痛みや症状を無視しているわけではなく、いつから、そしてどんな痛みがあったかなど、状態を把握して施術に繋げるわけです。肘であっても、膝であっても、やはり骨格や身体バランスからアプローチし、それからピンポイントに移っていくのが基本です。

※RICE…日本語でいう休養・冷却・圧迫・挙上の英頭文字を繋げた略語で、新鮮外傷の応急措置法としてもっとも基本となるもの
　

Q.施術においてのポイントは?

たとえば筋肉の緊張で痛みが発生していた場合、昔は、その緊張をほぐすことばかりをしていました。しかしそれだと根本が解決していないので、結局はイタチごっこなんですね。しかし、なぜ筋肉が緊張しているのか。根本を探ると、やはりここでも構造と機能が問題となっているんです。

たとえば姿勢が悪いとそれだけで筋肉の70％を使ってしまうこともあるんです。これはカイロプラクティックのエビデンスなんですが、姿勢が悪くなり1インチ、つまり2.5㎝くらい重心が後ろにずれただけでそうなるんです。だとすれば、残りの30％しかパフォーマンスには使えなくなる。逆に重心バランスが正しければ30％の筋肉で立つことができ、残り70％をパフォーマンスに使えることになります。

ただ走るだけでも姿勢が悪いと余計な重りを持っているのと同じで、その競技のために使用できるパフォーマンスが落ちてしまうんです。そんな状態で運動を続ければ、やればやるほど筋肉は緊張し血行が悪くなる。血行が悪くなれば痛みが出てきて、そこをカバーするためにまた違う筋肉が緊張する…。結果、アッチコッチに痛みが発生することになるんです。

そして痛みの発生した筋肉は緊張を続けているわけですが、ではその一生懸命緊張していた筋肉を揉んだらどうなりますか?　結局はその場だけで良くなっても、根本原因が解決していないのでいつまでも治らないんですよ。ただ、交通事故など他の原因もあるので姿勢や重心だけの問題ではない場合もありますので一概にはいえないですが、大切なのはその人にとっての原因を見つけてあげて、適切な施術を行うこと。それが一番のポイントなんです。

取材・文／立華徳之真

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