スポーツ吹矢協会設立の経緯
――スポーツ吹矢協会の設立の経緯を教えてください。
「創立者で前理事長の青柳清(あおやぎ・きよし)は、幼いころ体調が悪く、虚弱体質でした。これが、スポーツ吹矢が生まれた大きなきっかけです。『健康には腹式呼吸がいい』と知り、中国に気功を学びにいったのですが、ただ呼吸をするだけではつまらないし続かない。帰国しても続けられる方法がないかと探していました。
そこで見つけたのが、矢と筒です。『腹式呼吸』と『的当て』を組み合わせられないかと考え、『スポーツ吹矢』が生まれました。健康を目的としたスポーツでもありますが、『これだったら長く続けられるのでは』という、前理事長の思いも込められています」
—スポーツであると同時に、健康法としての側面もあるのですね。
「基本動作と同時に、腹式呼吸をベースとしたスポーツ吹矢式呼吸法でおこないます。5本1ラウンドで点数を競います。また、級や段といった階級技術認定制度も設けていますので、競い合うスポーツでありながら、(目標を持ちながら)楽しみつつ健康法を続けられるスポーツだと思います」
――スポーツ吹矢はどのようにして広まったのでしょうか?
「徐々に口コミで広まっていきました。協会が設立されてから来年で20周年になります。テレビや雑誌に取り上げられていったのも、少しずつ広まっていった要因の1つであると考えています。初めのころは『スポーツ吹矢って何? 危ないんじゃないの?』と、お問い合わせをいただいたこともありました。
ですが、スポーツ吹矢の『矢』はとても軽く、先が尖っていません。矢の大きさ長さは20cmくらいで、筒は120cmほどです。ただ、安全とはいえ、腹式呼吸で吹くと時速100kmくらいのスピードが出るので、的に向かって以外は吹いてはいけないルールを設けています」
子どもの教育に利点も
――新しい競技とはいえ、野球や陸上などとは違い競争は激しくないように思います。「楽しむ」ことに重点を置いたスポーツという解釈でよいのでしょうか?
「はい、そうですね。健康法でもあり、楽しめるスポーツと考えていただいてよいと思います。走ったり、激しい動きがあったりするスポーツではないので、『誰でも』できるのが最大の特徴です。呼吸さえしていれば年齢を問わずできるスポーツですね。会員の方は、下は4歳の小さなお子さんから上は97歳の方までいらっしゃいます。親子三世代まで同じルールで楽しめることを目標に、活動しています」
――「礼に始まり礼で終わる」作法だからこそ、子どもの教育にも良い影響を与えるのではないでしょうか?
「はい、もちろんです。普段落ち着きがないお子さんでも、的の前に立っているときはすごく真剣に集中しています。『いつもはジッと座っていられないのに、スポーツ吹矢をやる時だけは集中している』と、よくお母様たちがおっしゃっています。お子様の教育にはもちろんですが、集中力を養うこともできますね。運動が苦手な子も喜んでやります」
老若男女問わず誰にでもできる 吹矢は人を選ばないスポーツである
――スポーツは人を選ぶ部分があると思いますが、スポーツ吹矢は「人を選ばないスポーツ」という印象が強いですね。
「大会ではとくに『人を選ばないスポーツ』の面が垣間見えます。小さなお子さんが出場している横に、ご年配の方が出場していることもあります。年齢問わずできるのがスポーツ吹矢の特徴ですね。小さなお子さんはもちろん、2017年9月に障害者大会も行いました」
――ちなみに、チャンピオンと呼ばれる存在の方はいらっしゃるのでしょうか?
「スポーツ吹矢は、全日本選手権大会や青柳杯など、さまざま大会があります。そこで強い方はいらっしゃいますね。普通の大会ではつまらないということで、ゲーム感覚でできる催し物も開いています。そこでは動く的や回る的があるので、楽しんでできますよ。
また、国体(国民体育大会)では、2021年までデモンストレーション競技として出ることが決まっています。国体(正式種目)自体に出ることは大変なことですが、スポーツ吹矢はデモンストレーション競技なので開催県誰でもできますし、大会に出場することもできます。中には『この歳になって大会に出るなんて』と言っている、おじいちゃん・おばあちゃんもいらっしゃいますね」
――お年を召した方が大会に出られるチャンスは、少ないですよね。
「みなさん口を揃えておっしゃるのが、『この歳になって緊張するなんてなかなかない』ということです。
現役を退いた70歳80歳の方が、日常生活の中で緊張することは少ないと思います。そのような方が大会や試験に出ることで、普段感じたことのない緊張感が持てるので、『いい刺激になる』と喜んでいただいています」
取材/藤本かずまさ
構成/高橋静奈