アクションは俳優の言葉
――現在のトレーニング内容は?
今はジムに行ってのトレーニングがメインです。しかしジムでトレーニングをした筋肉をそのままにしておくと、動けなくなってしまうというか体が重くなり過ぎてしまうので、かなり注意をしています。
内容としてはウォーミングアップ後に高重量からスタートし、重量を減らしていって回数をやるというトレーニングです。体を大きくするには皆さん、高重量でトレーニングをして、どんどんタンパク質を摂ってというイメージだと思うんですが、僕の場合はベンチプレスでMAXが120kgだとしたら、120kgのあとは110、100、90、80、60と重量を落として60kgが20から30回できるくらいに追い込むという感じでやってます。このときに重量は下げていきますが、最後60kgに下げたときに、20回以上できるというのが、自分の中での基準になってます。
これには理由があって、アクションではベースとなる腕力があって、さらに瞬発力が必要だからです。宙返りやバク転、また殴られたときに一気に体を捻るなど、アクションをするには一瞬で体を締めることが必要なんです。しかしここで大切なのが、ケガもなく安全に仕事をしていくということです。ケガをすれば仕事ができなくなるので、ケガをするようではダメなんです。だから見せる筋肉と実用的な筋肉をバランスよくつくるということを普段から心掛けています。
1回のトレーニングでは部位別というか、今日はプッシュ系のみとか、次の日はプル系のみとか、また上半身のみとか、その時々に応じて行っています。しかし下半身だけはウエイトトレーニングであまり追い込みません。というのも、やはり太腿の筋肉が一番大きな筋肉なので、あまり大きくし過ぎると体が重くなってしまい、逆立ちなんかだとかなり影響が出てきてしまうんです。脚が重くなれば重心が上になりバランスをとるのが難しくなる。また腕にも負担が掛かります。なので下半身はバイクトレーニングや低重量で回数を多くというメニューでやっています。
だけど今は週に1、2回だけなので、あまりシッカリとしたトレーニングはできていないんですが(汗)。
――食事や栄養などは?
普段は、普通の食事の中から必要な分だけのタンパク質が摂れるように心掛けています。例えばトレーニングを少し追い込んで、筋肉を痛めつけたと思った日には納豆や豆腐などタンパク質多めとなるような食事となるように。そしてなるべくナチュラルフードで摂るようにしています。
ただし、これも必要に応じて変わります。少し前の舞台では体をつくっておく必要がある役を演じたので、プロテインやクレアチンを摂って少し体を大きくしました。普段ではそこまでは徹底していませんがプロとしての自覚を持って、その時その時に合わせて最善となるようにしています。そして実際に動けるのはもちろんですが、体を見られたときにも「トレーニングしてますね」と思われる体が理想です。
体重は最高で73kgくらいになって、ベンチプレスも150kgが1発で上がるまでトレーニングをしたときもありますが、そのときは体が重すぎて、逆立ちやバク転を1回するのもシンドイのでやめました。例えば20~30代でムキムキのパワー系の人でも宙返りをする人はいますが、そういう人たちも年齢を重ねていけば多分できなくなります。パワーで押していけるのは若いうちだけですから、今の僕にあった筋肉量で、必要なアクションをするためにはどうするのがよいか。それを考えてトレーニングを調整しながらやっています。
――石田さんにとってトレーニングとは?
僕にとってのトレーニングは、人間として、やっぱり男性が一番男性らしくなるために最低限必要なことのように感じています。トレーニングは普通に走ったりとか、ウォーキングでもよいんです。登山なんかを含めどんなスポーツだってよい。あえてジムに通ってトレーニングする必要まではなくても、やっぱり男として生まれてきたからには自分の体をちゃんと顧みるというか、そういう時間は必要だと思うし、不摂生してお腹がボヨンと出て「もうどうでもよいんだよ」というのは、僕はよくないと思うんです。もちろん健康にだってよくないはずです。
せっかく親から頂いた体。自分流につくり上げることが大事。そして削ぐ事も重要だと思うんで、少し太っちゃった人は少し節制して。そういう感覚が残るのがトレーニングの基本だと思うんです。だから僕はトレーニングというのは、男たるもの一生を掛けてやっていくべきことだと思っています。
――最後に一言お願いします。
千葉真一さんがジャパンアクションクラブ(JAC)を作ったときの言葉があるんです。というのも日本でアクションというと殴ったり蹴ったりをイメージされると思うんですが、本来、アクションという言葉は「芝居する」という意味なんです。撮影のときに「レディ~、アクション!」というのは「用意、スタート!」と同じ。スタートというのは「ここからお芝居を始めて!」という意味なんで、アクションはイコールお芝居をすることそのものであるんです。だから体を使ってすべてのお芝居が作れる集団を作りたいというのが千葉さんの意向だったわけです。
まさに肉体をつくっておくことが、俳優の表現には必要なんです。立ち振る舞いのすべてが言葉と同じ価値を持っている。体をつくっていることで、それが表現できることになる。だから海外の役者さんはすべて体をつくってますよね。日本だけですよ、ガリガリ役者ばかりなのは。ま、最近は変わってきましたが、色々なお芝居をするためには体ができてないと表現することはできないわけです。
だから千葉真一さんの言葉をお借りします。
「肉体は俳優の言葉」
これに尽きると思います。
取材・文/立華徳之真
俳優、アクション指導者、劇団EASTONES座長。幼少よりアクションスターに憧れ、学生時代に、その高い身体能力からジャパンアクションクラブに入団。数々のテレビや映画に出演。特に特撮ドラマや時代劇、日光江戸村などでの華麗なパフォーマンスから人気と実力を合わせ持つ俳優として活躍。現在は、お笑い時代劇ユニット「カンカラ」の活動と並行し、映画「ドラえもん」の脚本家である清水東氏と創設した『劇団EASTONES』の座長として、演出・殺陣指導にも力を発揮している。只今、秋の次回作公演に向けて鋭意準備中。
劇団EASTONESのHP
インタビュアー
立華徳之真(たちばな・のりのしん)
パフォーマー兼パフォーマー専門の美容家・治療家・スポーツ指導者。陸上競技・体操・バスケットボール・フィットネス・トレーニング・ジュニアスポーツ・体育施設運営管理・サプリメント・スポーツボランティアなどの専門資格を所持。また柔道整復師・美容師・登録販売者・診療情報管理士として美容・健康・医学領域および出版・映像・イベント・教育・ITなどの実務をこなす。ほか殺陣やアクション、神経系コーディネーションや能力開発などの分野で活動しているハイブリッド。
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