垣原賢人インタビュー カッキーライドへの道(後編)




どうして藤原組長を対戦相手に選んだのか

復帰戦への意気込みを語る垣原賢人

「多くの方がぼくのことを支援してくださいました。その恩返しを、なんとしてでもやりかたかったんです」

2015年3月、病に侵された垣原を応援すべく金原弘光、高山善廣らプロレス界の仲間たちが募金活動を開始。その運動はプロレスファンを通じて全国へと広がり、やがては同年8月のチャリティー興行「カッキーエイド」開催へとつながった。

「応援してくださった方、一人一人に直接お礼を伝えることは現実的には困難です。では、どうするか。リングの上で元気な姿を見せることが一番の恩返しじゃないかと。元気な姿を見ていただくためには、リングで闘うべきだと考えたんです」

2006年に現役を退いているので「元」という字が付いてしまうものの、プロレスラーが自己を表現するための唯一の手段、それはリングに上がって相手と闘うこと。より多くの人たちに感謝の気持ちを伝えるために、垣原はリング復帰という道を選択した。

「練習は筋トレを週2回、スパーリングを週2回というペースで行っています。長時間の練習になると集中力が落ちて免疫力も下がるので、スパーリングも30分以内におさめるようにしています。少しずつ、感覚は戻ってきました。ただ、たまにムチャな練習をすると、そのあと2、3日は調子を崩してしまいます。練習と平行して、治療は今も続けています」

舞台は8月14日、後楽園ホールで開催される大会「カッキーライド」。相手はUWF時代の大先輩、藤原喜明。UWFの練習生にとって、“関節技の鬼”藤原とのスパーリングは強くなるため、デビューするための通過儀礼だった。しかし、同団体に入門した垣原は、藤原とのスパーリングを一度も経験したことがないという。

「そのことが心残りだったんです。以前から、一度でいいからスパーリングで藤原さんの胸を借りたいと思っていました」

藤原は2007年に胃ガンが見つかるも、それを克服してリングに復活。垣原にとっては、ガンと闘い、ガンに打ち勝った先輩でもある。

「いま、ぼくの体重は70kgほどしかありません。自分よりも30kg以上も重たい、また技術的にも達人の域にある藤原さんと対戦するのは怖いです。でもガムシャラに、必死になってその怖い敵に向かっていく姿を見てほしい。会場にきてくださった方々に何かを伝えられればと思っています」

あえて第1試合でリングに立つ垣原

「カッキーライド」の主役は垣原賢人ではあるのだけれど、この一戦はメインイベントではなく、第1試合で行われる。そこには、こんな想いが隠されていた。

「第1試合に出るということは、ここからメインイベントを目指していかなければいけない。ぼくの復帰は、これで終わりではないんです。これからも、元気な姿を見せ続けていく。そうじゃないと、同じ病を抱える人たちの希望の光になれません。来年も、再来年も元気な姿を見せ続けられるように闘っていきたい。病気には負けていられないです」

垣原のなかでは「生きる」と「闘う」は同意義になっているのかもしれない。8月14日、勝つために、そして感謝の気持ちを伝えるために、垣原はリングに向かう。

「藤原さんには技術では対抗できませんが、ぼくには死の淵をさまよって、そこからみなさんの応援を力に変えながら這い上がってきたという経験がある。そんなぼくの生き様を見ていただきたい。試合を見ていただいて、『私もがんばろう』と思ってもらえればうれしいです」

(この項終わり)

取材・文/藤本かずまさ

垣原賢人復帰戦
カッキーライド
第1試合UWF道場スパーリングマッチ
垣原賢人VS藤原喜明
8月14日(月)
場所:後楽園ホール
開場:17時30分
開始:18時30分

◆席種
 特設リングサイド:7000円
 リングサイド:6000円
 指定席A:5000円
 指定席B:4000円
 立見席:2500円