バイタル・ブックレビュー #2『はじめてのサウナ』




カラダに響く、名著や新刊を紹介するバイタル・ブックレビュー。文字の力をエネルギーに変換して新たな刺激をチャージしよう!

『はじめてのサウナ』(リトル・モア)
タナカカツキ(文)ほりゆりこ(絵)

フィットネスジムにはサウナが備えられていることが多い。

ジムの月会費のモトをとろうと、サウナを利用していたら、すっかりはまってしまった人が意外に多いと聞く。中にはサウナだけを使っている人もいるが、ぜひしっかりとエクササイズをしてほしい。(笑)

漫画家、アーティストなどの活動に加えて、カプセルトイ「コップのフチ子」の企画・原案を手掛けるなど多彩な才能で知られるタナカカツキ。彼もまたジムのサウナで魅力に開眼した一人だ。

サウナが好きすぎて、日本サウナ・スパ協会の公式大使に任命されてしまった。これは過去に、長嶋茂雄が任命されているだけらしい。年間300日も通い、サウナの施設で仕事をすることもあるという。

芸能人がサウナ好きを公言したり、専門誌が発行されたりと、近年プチブームになっている。また企業にはたくさんの「サウナ部」が生まれている。

ただし、まだまだ抵抗のある人も多い。

「まだサウナによる本当の心地よさを体験したことがない人のきっかけになる本」にしたいという思いが著者にはあり、主に女性をターゲットとしてこの本が書かれた。まるで絵本のような女性向けサウナ指南書だ。

すでに『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~』(講談社)『サ道 心と体が「ととのう」サウナの心得 』(講談社+α文庫)が出版されているが、そちらも併せて読むとよりサウナの魅力が伝わってくる。

タナカは、<サウナ→水風呂→休憩>のループを3回繰り返した後に、「ととのう」という瞬間が訪れ、それがやみつきになるという。いわば「サウナトランス」状態である。

リラックスしながらも血は駆け巡っているので、脳内に大量の酸素が運ばれて頭はスッキリとする。覚醒しながらも気持ちは落ちついている状態が、いわゆる「ととのっている」のだという。

他ではなかなか得られない感覚、それがサウナの最大の魅力だ、とする。 一般的な健康効果や美容効果も見逃せない。疲労回復、冷えの改善、全身美容、自律神経の調節……。

ととのう、まではすぐに感じられなくても、もちろんリラックス効果は高い。それを高める手段としても、最近ポピュラーになっているのか「ロウリュ」。

『ゆっくりと降り注ぐ熱気』のことで、サウナ王国フィンランドが発祥だ。その熱気は、熱したサウナストーン(香花石)に水をかけることで発生・上昇した蒸気がゆっくりと下降してきたもの。アロマ水をかけて香りを楽しむこともできる。

これまで高温で低湿なドライサウナが主流だったが、肌がピリピリする、息苦しいなどで女性には敬遠されがちだった。「ロウリュサウナ」は中温で高湿なために体への負担は少なくなる。 中年以降の男性向けと思われてきたサウナだが、オシャレな女性向けの施設も増えた。

ちなみにのぼせ防止のためにかぶるサウナ用の帽子「サウナハット」の作り方も、本書に載っている。

バリエーションは様々でも、タナカを始め、“サウナー”(サウナのヘビーユーザー)が口を揃えて言うのは「水風呂」がサウナの最大の魅力で、むしろ、「水風呂に入るために、サウナに入る」のだとか。サウナーは水温の温度差にこだわる。キンキンするような水風呂がどんどん気持ち良くなっていくのだという。

本書によれば、一番の効果は「思考が前向きになる」ことらしい。筆者の知人に、「交感神経と副交感神経のバランスがとれるようになり、温度差や湿度が与えるストレスに耐性ができてくると、気持ちが鍛えられるのではないか」との説を唱えるサウナーがいる。

自分のカラダにあえてストレスをかけて、その後ぼーっとする。それは贅沢な時間で、気持ちの切り替えにはもってこいだろうなと想像できる。

まずはフィットネスクラブで汗をかき、その後で普段より“ていねいに”サウナを楽しんでみることから始めるのがいいだろう。
サウナーワールドの住人になれるかどうか、この本を参考に試してほしい。

文/押切伸一