個人競技だけどチームワークを大事にしている
――阿部さんは選手として修斗やシュートボクシングなどで活躍してきましたが、ベースとなっている格闘技はレスリングですよね。阿部 そうです。高校、大学とレスリングをやっていました。
――高校からのスタートとなると、今の子供たちと比べると遅いスタートです。
阿部 僕らが子供の頃は全然ちびっ子レスリングをできる場所がなかったですからね。ちびっ子レスリングがあるところと言ったら、千葉とか群馬とか茨城とか関東ですよね。地元の愛知県にはまったくなったので、だいたい僕らの年代の人は高校から始めている人が多いです。
――やはり競技を始めるなら早いほうがいいものでしょうか?
阿部 今はちびっ子から始めた選手たちがオリンピックに行っていますし、メダルも取っていますし、そういう流れにはなっていますね。
――AACCでは下は3歳から習うことができるんですか?
阿部 そうです。3歳から小学校に行くまでがキンダークラス、そのあとが小学生のキッズクラス、中学生も一緒にやっているジュニアクラスとなっています。高校でもレスリングを続ける場合は、部活でやる形になりますね。
――3歳から始める子と小学生になってから始める子で、上達の違いはありますか?
阿部 多少はあると思いますけど、最初はまず楽しく体を動かすことを大事にしています。昔と違って今はなかなか夜遅くなるまでボール遊びをするとか外を走り回るとか、そういうことができないじゃないですか。でもここにくれば広いので走り回れるし、いろいろな運動もできる。小さいうちは遊びの延長としてやっている感じです。小学校に入る前はレスリングをしっかり教えているというわけではないので、小学生から始める子とそこまで大きな差があるわけではないと思います。ただ、早くから集団行動に触れることによってより協調性が生まれますし、その中でリーダーシップが生まれてくる子もいます。
――基本は楽しくやっている感じですか?
阿部 いえ、楽しむことは大事ですけど、基本は厳しくやっています。厳しくやっているというのはチームワークを大事にするという部分。チームとしてしっかりやるところはやるということは徹底しています。練習時間は1時間~1時間半くらいなので、その中ではしっかり声を出して盛り上げるとか、チームの一員としてやることができていなかったら注意します。個人競技なので個人として強くなければいけないですけど、みんなで強くなるということを目指してやっています。
――教育的に考えても協調性は大事ですね。では最初に入ってきた子にはどういうことから教えるのですか?
阿部 レスリングはマット運動が多いので、前転後転から始まり、基本は走って汗をかかせること。転がったり立ったりパッパッと動ける身のこなしですね。小さいうちにそういうことをやっておくと運動神経も良くなるので、ここに来ている子たちは体育の授業では見本として呼ばれるとか、リレーの選手になるとか、そういう子も多いです。
――レスリングは全身運動なので運動能力が高くなるんですね。
阿部 はい、なります。側転、バック転も自然に覚えるようになるというか、一人がやり始めるとみんながチャレンジしていくんですよね。そうやって子供はみんなできるようになっていきます。
――この大森の他にも何カ所でちびっ子レスリングを習えるジムがありますよね?
阿部 大森以外でキッズをやっているのは行徳と東中野と中野で、それぞれ週に1~2回です。大森の場合は月曜から土曜まで毎日やっていて、好きな時に来ていいよっていう感じになっていて、他のところから参加することもできます。週に1~2回は体操の先生が来て、マット運動や跳び箱、トランポリンをやる体操教室の時間も設けているので、体操教室だけに参加する子もいます。たまたまウチはレスリングで活躍する子が多いんですけど、そこまで結果を求めることはしていないんです。みんなが元気にレスリングを通して、競技のことだけでなく、いろいろなことを学んでいける場にしていきたいと思ってやっています。
1970年2月9日、愛知県出身。高校、大学ではレスリング選手として活躍し、その後は総合格闘家として、修斗、K-1、シュートボクシング、PRIDEなど様々なリングで闘った。指導者としての定評も高い。現在はAACCを主宰し、後進の指導に勤しんでいる。
AACC→www.aacc-sports.jp
取材&撮影/佐久間一彦