【鉄人アスリート】永田裕志②




プロレスラー永田裕志は、IWGPヘビー級王座10度防衛、G1クライマックス優勝、チャンピオン・カーニバル優勝など、輝かしい実績を残してきた。今年4月に50歳になったが、そのバイタリティーはまったく衰えることがない。常にグッドコンディションをキープする秘訣に迫るインタビューの2回目です。

レスリングやキックボクシング、サーキットなどで普段から息を上げている

――若手時代は決められたメニューをやることが義務だったと思いますが、どのくらいの時期からご自身でメニューを組むようになったのですか?

永田:キャリアを積んでからですよね。30歳を過ぎると、もちろん若手と同じメニューもできますけど、回復面ではきつくなってきます。あとは試合を重ねていけばケガもあって、できなくなるメニューもあります。自分の場合もヒザが曲がりづらくなってきた頃から、フルスクワットをハーフにして、スクワット自体をやめてランニングにしてというように変わっていきました。

――トレーニングをやりすぎても良くないので見極めも大事ですね。

永田:無理が利くのは20代から30代前半ぐらいまでですね。

――20代から30代にかけてかなりハードな練習をこなしてきたことで、積み重ねによる肉体的な貯金を感じる部分はありますか?

永田:それはあります。若いときにある程度体を作りきってしまえば、一時的にやらなくなっても再生、戻すことはできると思います。筋肉を大きくするのは大変ですけど、一度大きくしてしまえば、萎んだとしてもまた戻すことはできますから。だからこそケガもなくて回復力もある若いときに徹底的に鍛えるのは大事なことだと思います。

――永田選手は1997年には海外遠征も経験されています。アメリカのトレーニングは当時からかなり発展していたのでしょうか?

永田:ジムは日本とは桁違いだし、プロテインなんかも当時からいいものがありましたよね。サプリメントも充実していました。海外遠征中は体を大きくしたいという気持ちもあったので、あの頃がサプリメントやプロテインを一番飲んでいた時期ですね。

――現在は練習面や栄養面などでどのようなことに気をつけていますか?

永田:若いときはほぼ毎日練習でフルに追い込んでいました。でも年齢が上がってからは、追い込む日は1週間に1回か2回。ほかの日は筋肉をリラックスさせるようにしています。あとは毎日汗をかくようにしています。自分が酒飲みなこともありますけど、年配になってくると体が崩れるんですよ。お腹もでやすくなってきますし。だからランニングなどの有酸素運動をして汗をかくようにしています。他にはレスリングではよく取り入れている息上げですね。ジャンプ、もも上げ、バービーと繰り返すサーキットを数年前から取り入れています。

――自身の体調を見極めながらそうしたトレーニングを取り入れているのですね。

永田:若いときは試合でヘロヘロになることはないんです。20代、30代の頃は、試合でバテることが衰えていることみたいに思えて、そうはなりたくないなとずっと思っていました。それから年齢が上がってきて、シリーズの開幕戦でいきなりハードな攻防をすると、内臓が口から飛び出るんじゃないかというくらい息が上がったことがあります。そういうのが自分では許せないんです。だからそうならないように、普段の練習から息上げをやるようにと考えるようになりました。

――息上げはサーキット以外にはどんなことをやっているのでしょうか?

永田:たとえばキックボクシングやレスリングですね。キックボクシングでミットを蹴れば息が上がりますし、レスリングのスパーリングをやったり、グレコローマンの差し合いをやったりして、実戦で調子を整えていく感じです。

――常に永田選手がグッドコンディションで試合をできているのは、そうした息上げの効果もあるのですね。

永田:あると思いますね。デビューして26年になりますけど、毎試合ベストの状態で試合に臨みたかったんです。やっぱり試合で気分が悪くなったりするのは嫌なんですよ。ダメージを受けるのは仕方ないですけど、息が上がって気持ち悪くなるというのは嫌なんです。26年間試合に出続けて、極力ベストの状態を作っていくということを1試合、1試合繰り返した結果が、今につながっていると思います。

永田裕志(ながた・ゆうじ)
新日本プロレス所属。1968年4月24日、千葉県出身。アマチュア時代はグレコローマンレスリングの選手として活躍し、92年に全日本選手権で優勝。その後、新日本プロレスに入門し、92年9月14日、山本広吉戦でデビュー。01年に武藤敬司を破ってG1クライマックス初優勝。02年に安田忠夫からIWGPヘビー級王座を奪取すると、当時の最多防衛記録となる10連続防衛に成功した。現在は全日本プロレスの秋山準とともにアジアタッグ王者に君臨する。