運動会屋がプロデュースする運動会の規模はさまざまだ。東京ドームに2万人を集めて行なった運動会が過去最大規模。その一方で会議室を借りて、30人程度の参加者で研修として行なった運動会もある。会場が会議室でも運動会らしさを出すために万国旗を飾った。今年4月には、女子プロレス6団体とフリー選手を合わせて総勢52名が参加した、女子プロレス大運動会もプロデュースした。
地域や学校関係からの依頼もあるが、やはり一番多いのは企業からの依頼。社会人になるとどうしても運動不足になりがち。そのため、「運動会」という言葉に難色を示す人もいるようだが、米司さんは運動会をただのスポーツではなく、「お祭りみたいな超楽しいイベント」として考えている。
「会社の人も運動会をやるというと、だいたい最初は嫌がります。普段体を動かしているわけではないし、周りに恥ずかしいところを見られたくないから参加したくないという人もいます。運動会が苦手だなっていう人には、そうじゃないんだよということに気づいてほしいんです。運動会は体育の祭典ではなくて、参加したらメチャクチャ楽しいイベントというものにならないかなと思っています」
運動会の王道競技といえば徒競走や玉入れ、綱引き、障害物競争、リレーなどがある。苦手意識がある人は、こうした定番の種目に対するトラウマがあるのかもしれない。そこで、既存の種目だけでなく、みんなで考えて新種目を開発できないかと考えるようになった。
「運動会といえば、通常は中身が最初から決められていて、与えられるものに参加するじゃないですか。これを、みんなで考えて作っていこうという新たな試みとして“未来の運動会”というプロジェクトをスタートしました。今あるスポーツに苦手意識があるのだとしたら、新しいスポーツを作ってしまおうということです。みんなで集まってハイテクデバイスとかスマホとかいろいろなものを持って開発すると、ニューゲームができるわけですよ。そうすると運動能力だけがすべてではなくて、小さな子供からおじいちゃん、おばあちゃんでも、車椅子の人だって一緒にできる種目が誕生するんです」
一つひとつの運動会は全部オリジナルだから、同じものは一つもない。プロデュースしてきた運動会はどれも大切なものだが、中でも強く印象に残っているものがある。
「運動会が終わった後のアンケートで、会社を辞める予定だった人が、『会社を辞めるのを止めました』というのがあったんです。運動会をやったことで、チームのメンバーや会社のことが好きになったので、会社を辞めるのを止めましたと。運動会にはそれだけの力があるということですし、これはすごく嬉しかったですね」
運動会屋の活動は日本全国だけではなく、世界中に広がっている。これまでに、タイ、ラオス、インド、アフリカ、南米、さらにはアメリカにも運動会を紹介している。
「インドではこれまでに6度、運動会をやっています。インドは宗教や言語もたくさんあって、国民同士が会話をできなかったり、いまだにカースト制度のなごりがあって労働環境が厳しかったりします。インドの文化に運動会というものを紹介することによって、子供たちが人と協力することを覚えたり、身分を超えた交流が生まれたり、働く人のマナーアップにもつながったりします」
運動会は日本式の文化であり、異国で理解してもらうのは難しい部分もあるが、得られる効果は非常に大きいようだ。
「僕らが運動会を紹介すれば、誰かの役に立つかもしれない。世界が良くなるのかもしれない。そう信じて、これからも挑戦していきます」
運動会は素晴らしいもの。だからこそ、より多くの人にそれを知ってほしいし、より多くの人に参加してほしい。米司さんはこれからも運動会で人々に元気を与えていく。
(次回は実際に運動会運営の様子を密着取材)
取材&撮影・佐久間一彦
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